第2話 魔術式の種類

 そもそも、術式が具現するにあたって、その効力がどうであれ、ほとんど予備動作がなく、魔力の漏洩における魔力波動シグナルを事前に察知できなければ、戦闘において致命的になる。

 しかし、魔術式には、目で見える形として具現する場合も存在する。


 まず一つ目が、魔術構成そのものを陣として具現する、術陣である。


 戦闘という項目において、術陣を作ることで予備動作を表明することは、デメリットになりやすい。あくまでも魔術の研究として、陣として描くことでその効果をわかりやすく、全体図を把握しやすいため、そうした利用が一般的だ。

 しかし、個人的な見解を言えば、私自身が術陣を前提としていることもあり、使い方次第という側面も存在しているのを、軽く触れておこう。

 まず、術陣そのものに規定されたものがなく、扱う者によって形を変えるため、それが一体どのような術式なのかを一見で理解することは、まず、不可能である。加えて、術者の錬度次第で術陣そのものを単純化することも可能であることから、一般的な魔術構成よりもコンパクトな展開が可能であり、逆に言えば複数展開も可能となる。これは、術式の同時使用なども可能とする。

 また、これも錬度次第ではあるが、一ヶ所だけ変更をすることで、術式全体の効果を別のものに変えることも、メリットの一つだろう。

 円形を主体とする術陣のため、321枚の術陣を組み合わせて作った限定的な術式、私の固有名称である〝コキュートスのはこ〟は、対象を中心にした円柱状に術陣が展開する。展開から実行まで一秒以下と定めているため、逃げることは難しいにせよ、いくつかの意図を複合させた術式などは、造りやすい。


 ――話が少し、逸れたようだ。


 二つ目が、術陣ではなく、式陣と呼ばれる――そう、儀式陣のことだ。


 これは術陣と同様に陣を扱うが、地面に直接描く場合が多い。そして単独で発動させることが珍しいものとされる――つまり、大規模な術式を扱う補助でもある。

 かつては攻城術式などにおいては、常套手段だった。式陣の用途は単純な〝増幅ブースト〟――だが、であればこそ効果は、絶大だ。

 一キロの範囲に五ヶ所の式陣を地面に描く。中央に一つ、外周に角形を描くよう四つ。中央にいる一人の魔術師が術式を制御し、四ヶ所に配備された複数の術者がそれを増幅する――それだけで、城一つを更地にするのだから、脅威だろう。

 ただし、準備に時間がかかり、妨害もされやすい。しかし魔術における研究に成果が左右されない部分は、大きなメリットだろう。


 そして一般的な術式を含め、大きく三つに分類される――が、ここに文字式ルーンと呼ばれる種類も存在することは、提示しておくが、内容に関してやや特殊であるため、これも後述させてもらう。


 ではここで、具現した術式そのものの分類も紹介しておこう。


 こちらは大きく、二つにわけられる。

 身体強化系、分析系など、現実世界に影響を及ぼさない術式を、内世界干渉系と呼ぶ。たとえば、千五百ヤード先にある標的を〝目視〟する術式の場合、視力を強化する場合がほとんどだ。しかし、これは現実に影響を与えず、本人が動くわけではない。

 ゆえに、自身の内部、内側の世界に干渉するわけだ。

 逆に、攻撃系術式の多くは、現実に影響を与えるため、外世界干渉系に該当する。


 大きな分類は、以上だ。

 魔術式、魔術陣、儀式陣。

 その効果によって、内世界干渉系と、外世界干渉系。


 ここまでは全て、文字通りのものだと考えれば、あれこれ意識せずとも良いものだ。

 少なくとも、今は。



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