第5話 十七年目の真実
「勘違い?」
木村さんは「うん」と軽く返すと、話を続けた。
「あれはね、美羽を助けたくてやったんじゃないんだ。実は私、あの頃比嘉君のこと好きだったんだよ」
「え……」
予想だにしないことを言われ、俺の胸は激しく波打った。
「だけど、比嘉君が楽しそうにしてる所にはいつも私は入れなくて、かわりに美羽とか、他の子たちがいて。要は妬いてたんだよ。元々、美羽に。で、あの場面を見かけて……ドラマみたいじゃん。クラスのアイドルの女の子を助ける、強くてカッコイイ男子。二人は結ばれ、めでたしめでたし、みたいな。私はどうやったってそんな素敵な世界には入れない。脇役にすらなれない。それがどうしようもなく頭に来て、そんなドラマにさせてたまるか! って、美羽たちの方に突っ込んだ。それで、そもそもその場を作り出した宏を思いっきり殴った。美羽を助けるなんて、これっぽっちも思ってなかったよ。そんな汚い感情で殴ったから、先生にどんなに怒られても何も言えなくて。だから、比嘉君は別に、何も悪くない。悪いのは私」
「そうだったんだ。……でも、俺は自分が見たことを話せなかったことは間違いないし……。先生も勘違いしたまま、君を怒ってたんだろ? だから、やっぱり俺が……」
「もうそんな話はやめよう。ほんの子どもの時の事だよ。とにかく私は、比嘉君が悪いとは思ってないよ。悪いのは私だけ」
そう木村さんは俺の話を止めた。
「ねえ比嘉君、今日の同窓会、どうだった?」
「あー……まあ、楽しくはなかったな。美羽は昔と変わらず可愛い人気者で、健二は超デキる男に変身してたけど、俺は小学生の頃とは比べ物にならない程、パッとしない男になったし。あいつらが俺を低く見てることも、それとなく伝わってきて」
木村さんは体から空気を抜くように笑った。
「確かに、そういう雰囲気は私に対しても感じた。だから面白くなかったな」
「まあ、あいつらは住んでる世界が違うもんな、俺達とは。木村さんも……」
「いっしょにしないでよ」
木村さんはキッパリそう言って、俺を見つめた。
「私の住んでる世界は、君の住んでる世界とは違うよ」
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