13.活動記録

「遅ーい。何してたの?」


 部室のドアを開けると優香先輩が突進してくる。一応謝っておく


「遅れてすみません」

「この会話前もどこかでしたわよね」

「チーも覚えてるー」


 朱里先輩とチー先輩はおそらく土曜日の探索の日のことを言っているのだろう。朱里先輩が続ける。


「さて、楓くんもきたところで今日の議題は・・・」

「なぜ人は遅刻をするのか」


 と、朱里先輩が言いかけたところで優香先輩が乱入してくる。遅刻して本当にすみませんね。


「ちっがーう!!」


「じゃあ怖い話」


 チー先輩も乱入する。


「あー、それもいいわね」


 納得する朱里先輩。って、僕ら体験しましたよね!?それよりも新聞記事の内容を改めて決めたかったんじゃないの!?


「あ、そうだ。テレビ電話の実験をしてなかったわね」


 ここまでで幽霊のセナはカメラに写ることは分かっている。次はリアルタイムで見えない人とも会話ができるようにテレビ電話で写してみようという試みだ。

 とりあえずやってみる。僕がセナを携帯で写しテーブルに置いた別の携帯電話で見るのだ。

 結果は都合よく成功。こんなならそこらじゅうでほいほい幽霊が写りそうなものだが・・・まあ、セナを知ったあとで全てが解決するだろう。


「案外早く終わったね。次は何をする?」

「テスト勉強をしましょう」

「朱里にしてはまともな意見ね」

「賛成な人?」

『はい!』


 全会一致でテスト勉強をすることになった。


 ー それから2週間後テストがあった。 ー


「テストの結果はどうだった?」

「あたしはいつも通り」

「チーは少し自信ないかも」


 先輩方は口々にテストの結果を嘆きあう。


「それよりも先月は新聞を発行できていないわ」


 朱里先輩が深刻そうに言う。


「第一の方はプロテイン特集をしてたよね」


 優香先輩は心底呆れぎみで言う。


「チーはあの新聞を見て言葉が抜けてるところがあったから追加してきてあげた」


 例え正しくなおしても他人が、しかもライバル視されているところの新聞を加筆するのはやばいよ・・・などと一応常識のある先輩はチー先輩に注意をしている。


「あ、でも私もやったことありますよ」


 存在感がしばらくなかったセナがいきなり話に入ってくる。


「え、まさかセナも加筆しちゃったの?」

「昔ね。贅沢は敵だっていうポスターに素って字を入れてみたりしたことがあります」

「それは・・・足らぬ足らぬ工夫が足らぬの工を塗りつぶすのと同じ系統のやつだよね・・・」

「はい!私達の時代そういうのが横行してたんです」


 なんか微妙に違くて全員が反応に困る。

 あれ?ここで違和感に気がつく。なんでセナの昔の記憶があるんだ?


「セナちゃん記憶戻ったの?」


 同じく違和感に気がついた優香先輩は聞く。


「どうでもいいことはたくさん覚えているのですが核心にせまることはなにも・・・」

「自分の辛い記憶は自我を守るために隠す行動を心理学で防衛機制と呼ばれているのよね」


 朱里先輩が言うように本当に防衛機制がセナに働いているのだとしたらトラウマを少しでもなくさなければならないだろう。それに自分が分からないということはよっぽどその傷は深いのだろう。一種の記憶喪失のような気もするが・・・

 それよりもなんでそんなことを知っているのだろう?なんだかこの先輩恐ろしい・・・


「あ、この知識は倫理の授業よ」


 前言撤回なにも恐ろしいことなどなかった。


「朱里、楓くん。議題に移ってもいい?」

「あ、はい」


 いつの間にか重要な事は部長の朱里先輩ではなく優香先輩が仕切っていた。


「最近、校内で不可思議な現象が多数目撃されているの」

「それをインタビューしましょう」


 なんだか落ちは予想がつくのだが一応聞き込みへ向かう。

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