12.黄昏時の記録-2

「セナ!」


 呼びかけると彼女は憂いを帯びた目でこちらにそっと振り向く。


「楓ですか。私の事が怖いのでしょう?」

「そんなことはないよ。信用できるのは今日会った相沢よりも助けてくれたセナだって気づいた」

「嘘です。そんな慰めはいりません」


 セナは一度拒まれたことがショックだったのかもう僕を受け入れてくれようとしてくれない。これではまるでセナに僕にとり憑いてくださいとお願いしているようだなと思う。


「セナと過ごした数日は本当に楽しかったそれは嘘じゃない」

「なら、もっと近づいてください」


 僕はセナのもとに近づく。怖さとは違う何か別の胸が高まるようなドキドキを感じる。


「私といつも通り関われますか?」


 そう真剣な眼差しで問いかけてくる。


「もちろん」

「私のことは好きですか?」

「もちろん。嫌いならわざわざ追いかけてきたりはしないよ」

「セナは僕のこと好き?」


 自分で質問をした質問でこの気持はなんなのかを自覚する。僕はきっとこの幽霊に・・・そうだ。だからきっとこんな簡単に信用できちゃうんだ。そういえばさっきセナも同じようなことを言っていたような。


「もちろんです」

「それは恋愛対象として?」

「はい。さっきも言ったじゃないですか。楓を好きなったって」

「なら・・・・・・」

「ダメです」


 彼女はとても幸せそうな顔をしていたのだが、これから言おうとしたことを僕が言うまえに遮られてしまった。


「どうして?」

「幽霊と人間だからです。楓は正常な恋愛をするべきです」

「そんなのは関係ないよ」

「いいえ、関係あります。好きな人の幸せを願わない人がどこにいましょう?」

「なら・・・・・・」


 セナはこっちをまっすぐ見つめ首を横に振る。気まずかったのでなにか別の話題を探す。


「セナ、そろそろ部活に行かない?」

「そうですね。そうしましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る