14.学校七不思議-1

「さて、皆でいっせいにインタビューに押しかけても相手に圧力を与えてしまうだけだから個人で回りましょう」


 部長らしく朱里先輩はそれぞれの担当する場所を割り当てる。一人で行くのは少し心細いのだが・・・幸い僕にはセナがついている。


 まずは近くの料理研究部へ足を運ぶ。部室の前からはとても美味しそうな香りが漂っている。

 なんだかお腹が空いてきそうなので手短に済ませるべく覚悟を決めてノックをする。

 中からはガタイのいいTHE料理人のような人が出てきて一瞬言葉が飛んでしまったが、勇敢に立ち向かいここ最近の心霊現象について聞く。


「そういえば、話は変わるがさっき第二新聞部以外にも同じことを聞かれたな。心霊現象についてはなにもわからないが。助けになれなくて悪いな」

「いえいえ、ありがとうございます。それはなんていう部活ですか?」

「ああ、オカルト同好会だ」


 お礼を言って退室する。やはり、そう簡単には心霊現象にあう人はいないか。それよりもあまり有名ではないのにオカルト同好会も同様のことを調べている事が気になる。いや、そもそもオカルト同好会からするとこちらの方が異様だろうな。えっと、次は・・・あ!心霊現象を起こしているのがセナだとすれば当人に聞いたほうが早いかもしれない。


「セナは普段どこへ行くの?」

「そうですね、音楽室で暇な時はピアノを弾いてますね」

「またベタな・・・」


 分かった。音楽室へ行こう。向かいながらセナに打ち合わせをする。

 先ほどと同じ要領で合唱部の部員に話を聞く。


「そういえば最近この部室は呪われているようなんです」

「というと?」

「ええ、最近誰も居ないのにピアノがなっていたりとか、とにかく音がするんです」


 セナの方を見る。やらかしたという表情をしている。僕はセナに合図をする。


「もしよろしければ僕がそれを解決しましょう」

「あなた新聞部でしょ?先週オカルト同好会の方がお祓いをしたのに変わらなったのよ?」

「実は僕、お祓いができるんです。よろしければ今しますよ?」

「本当にできるの?まあやって御覧なさい」


 彼女は訝しげに僕を見るがこっちは原因が分かっているのだ。ゆえに解決できないはずがない。


「今からここに幽霊がいるか調べます。もし幽霊が存在していればこのピアノが鳴り出します」


 そう言って音楽室に飾ってあった適当な護符をピアノの上に置く。次の瞬間ピアノが鳴りだし、周囲の人が一瞬で静かになる。

 ちなみにセナはと言うとピアノを引きながら軽快なリズムで歌っている。歌詞はなんだか不穏だが・・・・・・

 一応僕が浄霊っぽい言葉をかけ、セナは「やられましたー」とかふざけながらピアノを弾くのをピタリと止める。

 すると周りから拍手が起こる。なんだか騙しているみたいで申し訳ないが浄霊ショーを終え彼女たちには「もう大丈夫です」と安心させて帰る。

 一方セナは「ピアノはいい暇つぶしだったんですよ?」などと文句を言っているが浄霊された振りをした以上もうあそこでは弾けないだろう。


「さて、次はと」

「え、まだ行くんですか?」

「もちろん」


 次に来たのは機械同好会。ドアをノックすると中からメガネをかけたいかにもな感じの男子が出て来た。「あ!あのクソ眼鏡」とセナが何かを知っているようだがとりあえず無視する。

 彼に先程同様聞いてみる。


「最近出前がよく届くんだ。オカルト同好会に相談したら幽霊のせいだと言うので浄霊してもらったのだがちっとも効果がない。しかも最近なんて怖い数学の先生の授業中に俺宛てで届いたんだ。そのせいで公開処刑さ」


 とても彼が可哀想だった。もしうちのアホ幽霊のせいならせめて償いをしなければ・・・

 そのアホを見てみると「悪い者には仕打ちを」といいながら大爆笑していた。僕は思わず頭を抱えてしまう。またもや犯人を特定してしまった・・・


「それは申し訳ないです」


 とりあえず謝っておく。

 このままセナに言い聞かせれば授業中の迷惑な出前はなくなるだろうが、それだとあのメガネが納得しないだろう・・・・・・浄霊ショーをせざるをえないな。


「なんでお前が謝るんだ?」

「いえ、早く浄霊に来ていればという自責の念で・・・」

「お前浄霊出来るのか?茶化しならいらんぞ」

「いえ、出来ます」


 そうしてまた適当に浄霊ショーを行った。今回は実感できるものではないが、セナにもよく言い聞かせたしこれでもう彼に出前は来なくなるだろう。

 そうだ。セナが迷惑をかけていたお詫びに彼にお寿司でも届けてあげよう。僕は近くの寿司屋に電話を入れる。支払いは寿司屋に会ったらでいいだろう。どうせ学校に来るのだ。一番高い物を頼んだ。


 部室への帰り道セナにどうしていたずらに出前を注文するのか聞いてみた。


「だってあのクソメガネ私に向かって塩をまいたんですよ?私を消そうとしたんです。だから仕返しです」

「あのなあ・・・相手にはセナが見えていないんだぞ」

「それは分かっているのですが・・・」


 出前を注文していた理由はどうでもいい理由だった。これはセナの不注意だ。本当に申し訳ない。


 その後第二新聞部の部室に直行しダベった後そのまま帰った。いいことをした後は気分がいい。何か忘れている気がするがきっと気のせいだろう。

 翌日、メガネの彼は第二新聞部の部室に怒った様子でやってきた。

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