18.学校の七不思議 - 3
まず、あたしは第二新聞部部室の向かいに見える校舎にある軽音部に行くことにした。
軽音楽部部室の前はドアが閉まっているにも関わらず耳がおかしくなってしまいそうな程のドラムの音とベースの音が鳴り響き、それらに埋もれてしまいそうになっているボーカルの声。まさに青春を謳歌している部活のようだ。
演奏が途切れた時を見計らい入室する。
「第二新聞部の笹平優香と言います。今、少し時間よろしいでしょうか?」
軽音楽部には気まずい事に私の知り合いは誰一人いない。なんでそんなところに来てしまったのかというと、噂を聞いたからだ。
中からいつの時代の不良なのか、金髪のモヒカンが出てくる。いや、ここまでくるとファッションか。いや、そもそもモヒカンってファッションだし・・・んんん・・・あたしは何を考えているんだろう・・・・・・
「もしかしてインタビューか!?」
第二新聞部という名前を出したからかモヒカンが喜々として食いついてくる。
「確かにインタビューですが・・・・・・」
「おーい!お前らこっち来い!新聞部のインタビューだぞ」
話を遮られ仲間(部員)を呼ぶモヒカン。絶対軽音部の記事を書いてもらえるって勘違いしているよねこれ・・・・・・なんとか誤解を解かなければ。
「今回のインタビューはですね・・・・・・」
「おう、なんだ?新バンドについてか?それとも部活動紹介か?」
またも軽音部が食いついてきて本題を切り出すことができない。この場合記事にならないインタビューをして本題をさりげなく聞き出すべきなのだろうか?いや、それは第二新聞部のプライドにかけて絶対にしてはいけない。・・・・・・私は逃げとして中立な考えを思いついた。ピンチのとき、人は不思議と頭が回るものだ。いや、この程度のことをピンチと言ったら怒られるのかもしれないけどね。
「明日の放課後、もしよろしければ第二新聞部で話を伺えないでしょうか?」
相手は『はっ?』って顔をしていたが、もしよろしければといったので強制はしていないし、軽音部についてのインタビューとも明言していない。我ながら上手い逃げ方だと思う。
あたしはそそくさと部室を退室し、写真部へ向かう。誤解されない聞き方を考えないと・・・・・・
「第二新聞部の笹平優香です。学校での怪奇現象について調べているのですが・・・・・・」
「新聞部か。良いところに来た!ちょうど困っていたところなんだよ」
前髪をサイドに触覚のように垂らしツインテールにしている写真部の部長(男)がゴツい声で飛び出て来る。わたしはさっと左に避け回避する。この人、喋らなければ美少女に見えるから声を聞いたときのギャップというかショックというか・・・まあ、そんなようなものが半端ない。どうしてこうもこの学校はキャラが濃いのかと嘆息していると、美少女(笑)が一枚の写真を取り出す。
「こいつだ。見てくれ。ここにはっきりと写っているがこいつが幽霊なんだ。あれは、ちょうど三週間前、コンテストに応募するための写真を撮影していたんだ」
と、写真の端を指差し、見せてくる。そこに写っているのは背は普通くらいでの生気を感じない程、白い肌の美少女だった。
・・・・・・セナちゃん・・・・・・しかも着替えてる!?・・・・・・
「そ、それって本当に幽霊なのかな?」
「おうよ。よく見てみてよ。この制服って第二の方だか別の新聞部が特集してた失われた過去の制服だろ?」
「確かに第二新聞部が特集したものと似ているかも・・・でもその新聞はなかったことにするお約束だよ」
「ああ、そっか。理事長剥がして回ってたもんな」
だからそれをこんな誰が聞いているか分からない所で平然と言ったらダメなんだよ・・・・・・あたしは慌てて「シーッ」と人差し指をピンと伸ばし言うが、この女装、多分分かってないのかもしれない。
「で、その写っているのが幽霊って根拠は制服だけなのかな?」
「写真を撮った前後にそこには人がいなかったんだ」
このままだとセナの存在が噂になってしまう。あたしが止めないと・・・
「だとしても、実害はないのでしょう?」
そう、あの優しいセナが生徒に危害を加えるとは思えない。実害さえなければあとは写真の回収をすれば忘れてくれるだろう。
しかし、深刻そう言葉を紡ぎ出すエセ美少女。
「それが・・・その写真を撮ってから出前が届くようになったんだ」
「・・・・・・」
いたずら大好きセナちゃんだもんね・・・・・・着替え中を撮られて乙女として恥しかったのかもしれない。出前はあたしの予想外だったよ・・・というか幽霊がどうやって出前を?それは後でセナちゃんに聞けば解決するかな。
「で、オカルト研究会には行かなかったのかな?」
「ああ、あんな恐ろしいところへは行ってないね」
「なら!あたしがその写真をオカルト研究会に持っていくよ。きっと、そうしたら出前もなくなるって!」
「いいのか?あんなところに行ってくれるのか?」
「ありがとう。助かる。じゃあ、よろしくな」
当然、あたしがあんなおそろしいオカルト研究会なんかに行くはずもなく、今からすることは写真を回収してセナちゃんを説得するだけだ。
と、やることが決まった事だし早速部室に戻ろうかな。
「優香!」
誰かに右肩を叩かれ振り向くが誰もいない。・・・女の声・肩を叩く・誰もいない・・・ここから導き出される答えは
「こんな幼稚な事をするのは日向でしょ?」
「な、絶世の美少女に対して幼稚とか言わべきではないわよ?」
頬を膨らませながらあざとく美少女を強調する。口調や上からな態度は朱里とにているんだけど、日向はとんでもないナルシストだ。確かに可愛いのだけど・・・ね・・・だからと言えるのかものすごく朱里と日向は仲が悪い。あたしは毒舌な朱里もナルシストな日向どちらも同じくらい好きなのだが・・・
「あたしは美少女に声をかけられるよりもあのイケメンの皇族に声をかけられたいかな」
「美少女を見捨てないで欲しいわ!でも分かった。生徒会からユウを呼んで来ましょうか?」
「いい、いい。日向は生徒会の仕事?」
「そうなのよ。校内で起きている不審な出来事の調査をしているの」
「あ、ああ。そ、そうなの。じゃあ日向頑張ってね」
その不審な出来事の調査には写真部のように第二新聞部が絡んでいる気がするが・・・黒幕は誰なのか知らない振りをしよう。
逃げるように部室の前に帰ってくるとちょうど朱里が第一新聞部にインタビューをしているところだった。参考がてら遠くから見ているといつの間にかインタビューが終わってしまったようなので、声をかけてみる。少し早いかもしれないが二人で部室に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます