19.第二新聞部の放課後記録
あの後、優香先輩の元に来た軽音部を始めとした部活と絡んだ事は言うまでもない。それと同時に、朱里先輩の機嫌が悪かったことも言うまでもない。
昨日は、僕の身の回り・・・、いや、学校で最近起きている不審な心霊現象についての会議をことごとく邪魔をされた、いや、これも語弊があるか。
昨日、会議中に自身らの掘った墓穴によって妨害された、僕たち第二新聞部は、報告もまともに終わっていないのに憔悴しきっていた。
そこで、優香先輩が、「自身のインタビューの結果を新聞記事にした後、各々の記事を掲載するのはどうかな?」と提案したことで昨日は無事解放された。
ここからが問題だ。なんて書けばいいんだ?
宅配をいたずらに注文する幽霊が僕の隣にいます。とでも書けばいいのか?
いや、そんなことを書いたら、入学早々頭のおかしな奴だというレッテルを貼らてしまう可能性がある。
試しに中央に僕と向かい合って座っている朱里先輩の書いている新聞をのぞいてみる。 『楓君、勝手に新聞を覗き見てはいけないわよ』
・・・。
これは、朱里先輩が書いた新聞の下書きだ。え・・・。先輩にはお見通しだったようだ。
そして、こちらを見てニヤリと不敵に笑う。・・・この状況で笑われると狂気を感じるのは僕だけだろうか?
ここは、諦めよう。次は右前の座っている優香先輩の記事を覗き見る。
『Kという一人の少年がいました・・・』ん?ここまで見るとかの大作家、夏目漱石先生の作品の登場人物のように見えるのだが、なにか雰囲気が違う気がする。先を目で追う。『K少年は、新聞部で筋肉の武者修行に励んでいました。あるとき、K少年は、筋肉質な先輩に声をかけられ、連れ込まれ・・・。』
もういい。読む気になれない。BLかよっ。この人は一体なんの取材をしてきたんだ。それよりKって・・・。Kが誰のことか気が付いた途端、僕は読むのをやめた。
次は右隣に座っているチー先輩。せめて、まともな記事を書いていて欲しいものだ。
『全校の皆さん。この新聞は、各々が大変自由に執筆しているものです。不適切な表現、性的な表現、暴力描写等の表現がある可能性がありますのでご了承ください』
えええええええええええええええ!?
なんかまともな事を書いてる。ここまできたら全員のボケを見てみたいと思ったのだが・・・。
あれれえ?おかしいぞ!僕気がついちゃった。なんでこの人、自分の記事を注意事項にしてるの?
まともな新聞を書ける奴はいないのか?
「すみません。先輩方、新聞書く気ありますか?」
思わず言ってしまった。それも、とても失礼な言い方。顔から血の気が引いていくのが自分でもわかる。
「私は家でやってきたわ」
「あたしも朱里と一緒で昨日中に家で終わらせたよ」
「チーは、休み時間に書いちゃった」
あれ? 書いてないの僕だけ? その上、新聞書く気ありますか? なんて聞いちゃったし。どうしよう・・・。
「私は楓の味方ですよ」
忘れた頃にセナが励ましてくれる。ごめん。存在忘れてた。
でも、その言葉に勇気づけられ、今度は顔に血が上っていくのが分かった。
「タコさんみたい!京○こ!」
そうだよ。顔真っ赤だよ。恥ずかしいので今、チー先輩が言った言葉はスルーする。
「え、書けてないのって僕だけですか!?」
「そうね。でも、心配しなくていいわ。初めてだものね。一緒に考えましょう」
僕の言葉にすぐさま朱里先輩は優しく返してくれる。
「楓くん、まずは発想力を鍛えることが必要よ」
「そういうものなんですか?」
「ええ、だからまずは将来の夢についての話をしましょう」
よくわからないが、朱里先輩が提案したこの話を本能がしてはいけないと警告している。
先輩は「も○きゅ、も○きゅ」とどこからか出した着ぐるみを着て、あざとくアピールしている。
・・・。デジャブ? なんだか、これと似たような状況を見たことが・・・。
僕は気がついた。これは、パロディにパロディを重ねたものだ。
「今は、生徒会の役員よりもゲーマー達の時代だと思います」
すかさず僕はツッコミを入れる。・・・が。
うわああああああ。このセリフもどこかで聞いたような・・・。
やってしまった。朱里先輩とボケてしまった。
と、今度はチー先輩がなにやら言い出す。
「ぴぴ○ぴ○ぴ○・・・」
「「「やめなさい!」」」
これにはチー先輩を除く先輩を始めとする僕までもがハモった。
そのセリフ、僕達の小説が終わるってことになりかねないからね!?
と、おっと。危うく撲殺されるところだった。
この部活、果たして大丈夫なのか?
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