7.おまえは誰?
僕は朱里先輩に声をかける。
「ここに来るまでの記憶がはっきりとしないのですが、なにがあったんですか?」
「チーちゃんを追いかけて古い神社のようなところまで来たところは覚えてるかしら?」
「はい。やっぱりですか・・・」
「その後あなたは雑木林に向かって走っていたのだけれど私達、見失っちゃって・・・。それから、しばらく探していたらいつの間にか神社の本殿の中にチーと一緒にあなたがいたの」
つまり、僕は廃屋に行っていないということか? いや、だとしたら雑木林に走っていったというのは? もしかして、僕の記憶は間違っていないとか。
そう仮定して考えると、昔見た、B級ホラー映画を思い出す。枷ではなかったが、主人公がロープを切り助けると、自由になったゾンビが活動を始めるというものだ。最後は・・・。こんなところで思い出したくない。
しばらく考え込んでいると朱里先輩が不思議そうにこちらを覗き込んでくる。
「なにか腑に落ちないことでもあった?」
僕は少し考えてから、さっきの出来事を朱里先輩に話すことにした。
それを聞いた彼女は、顎に手を当てて少し考える。
「確認だけど、あなたが覚えているのは得体の知れない骨の拘束をといたところまでということよね?」
さすがの朱里先輩でも動じているのか、せわしなく、周囲をキョロキョロと見ている。きっと怖いのだろう。
「はい。気を失っていたので後のことはわかりません」
「じゃあ、チーが本殿で発狂していたときも気を失ったままで知らなかったってことね」
急に朱里先輩に抱き寄せられる。驚いたが、彼女の体は震えていた。
「朱里先輩もなにか奇妙な体験をしたんですか?」
「ええ。まあ。いろいろと。現在進行形でもあるかしら・・・ね。」
「ええ、もしかして、朱里先輩はチー先輩が何かに取り憑かれていると考えていますか?」
「・・・もちろんよ。あれを通常だと思う方が無理なことよ」
そういって、朱里先輩が、より一層僕を強く抱きしめる。こんな時になんだが、板。しかし、彼女が怖がっているからこそ僕が冷静に考えられるのかもしれない。
「ですよね。なら、チー先輩に憑りついている幽霊から無念を聞き出してみませんか?」
「いやよ、ムリよ。誰がやるのよ! 」
「僕がやります」
「ダメッ!危ないわ」
「優香先輩はいいのにですか?」
「優香は別よ。あの子全く幽霊に動じないもの。その点楓くん。あなたは震えているわ」
え? 震えてなんか・・・。足の先から手の先まで震えていた。
「これは、興奮で震えてるだけです」
「それでもダメッ!」
「じゃあ、どうするんです?」
さすがに言い方がキツかったのかもしれない。そして、僕の体にかかる力は徐々に抜けていき、やがて朱里先輩は僕の体を開放した。
「いきましょう」
僕は朱里先輩に言った。すると、強くコクンとうなずいた。
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