5.シガラミムラ ミステリー
チー先輩の荷物を辿り僕らは廃墟化している神社の前まで来た。しばらく走ると、視界が開け、神社のようなものが見える。今度は古い鳥居があり、その奥には本殿のような大きな建物。その本殿の扉が入ってくださいと言わんばかりに開いている。
ラノベの主人公からまるで、ホラー文庫系の主人公になったような気分だ。
・・・何か視線を感じる・・・それも本殿とは別のところから・・・。
その方向を恐る恐る見てみると、草木が生い茂る中、かろうじて建物が立っているのがわかる。
なぜか本殿ではなくその建物に行かなければならないような気がしてきた。
そして、僕は二人の先輩に提案する。
「先輩、あれを見てください。先にあそこを探しませんか?」
「え、どこ?」
「楓くん、何を言ってるの?」
先輩たちの場所からは、あの建物は草木で覆われているためか角度の関係で見えないのだろう。きっと近くに行けば分かるはずだ。
「ついてきてください」
そう言って僕はその建物に向かって走り出す。草木を分けてやっとその建物の入り口にたどり着いたのだが、その様相は不気味で入るのをためらいたくなる。しかし、ここに手がかりがあるような気がする。
よく見ると、本殿と同じく扉は開いていた。村人が出ていくときに開けたのか。それともチー先輩が開けたのか・・・。
周囲を確認し、警戒しつつ中に入る。中は真っ暗で周りが見えない。スマートフォンの画面をつけ、それを頼りに周囲を見回す。そこは長い廊下が続いており、微弱なスマートフォンの明かりではその先を見ることができない。僕は周囲に警戒しながらゆっくりと進む。歩くたびに僕一人の足音が建物の中に響き、床はギイギイと音を立てる。
・・・・・・僕一人???・・・・・・。
朱里先輩と優香先輩は? それにチー先輩を探しに来たはずなのに僕は何をしているんだ?
そのことに気が付いた僕は恐ろしくなり、慌てて引き返すが、次の瞬間床からメリメリと音がし、僕は奈落のそこに落ちていった。
「痛ててて・・・」
腰から落ちたためか、腰に鈍い痛みを感じる。
そうだ、ここは、どこだ? えっと、さっきの階が玄関だったから地下室だろうか?
幸い携帯は無事で、とりあえず周囲を適当に照らしてみる。僕は見えたものに絶句した。
「・・・・・・・・・」
そこには僕と同じくらいの年齢の女の子が錆びた鉄製の枷につながれ、座り込んでいる。少し動いたような気がする。生きている・・・のか?
彼女が「助けて」と口を動かしたような気がした。
すぐに彼女を助けてあげたいところだが、犯人が近くにいるかもしれない。僕が捕まってしまっては元も子もないので、もう一度周囲をスマートフォンで確認する。
幸いここには彼女と僕しかいないようなのだが、この部屋のいたるところにお札が貼られており光は先程の落ちて来た穴だけで、そのせいか余計に、不気味な雰囲気を醸し出している。
そんな場所に彼女が一人でいたことに心から同情しつつ、彼女に近づき枷を外そうと試みる。しかし、枷は錆びているものの頑丈なためか当然人間の力では外すことは出来なかった。もしかしたらここに第一新聞部の筋肉がいたら違ったのかもしれないな。脱出口もパッと見たところなかったし、彼女を助けられるのかも疑問だ。目の前が絶望の黒に染まりかけたとき、目の前の彼女が今にも消え入りそうな声で話す。
「あきらめないで。て・・・。みて・・・」
て?ああ、手か。彼女は何かを弱々しく握っている。これはなんだ? 鉄製の・・・。鍵じゃないか! 枷の鍵穴は腕と垂直の場所にあり、一人で外すことは難しかったのだろう。
しかし、受け取った鍵は彼女の手が枷でつながれていたせいで血液がめぐらなかったせいなのか冷たい。なぜか僕は冷たい鍵を触ったことで我に返り、今すぐこの場から逃げ出しくなってしまうが、今は彼女を助けなければいけないと自分を律する。
鍵穴に差し込み、手応えを感じ、少し強めの力でひねる。鍵は呆気なくガチャリと開き、彼女の腕を開放した。
「早くここから逃げましょう」
と、なんだか異様に冷たく骨っぽい彼女の手を取りながら、言ったところで、僕は人生で最もといっていいほどの恐怖を味わった。
僕が取ったと思っていた手は骨だたのだ。いや、正確には手の甲の骨・・・。
・・・・・・声をだすまもなく・・・・・・・・・僕の意識はそこで途絶えた・・・・・・・・。
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