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シティガードになる為に必要な技能と知識を得る為に存在する、統括区画内の訓練校。
街は非常に大きいし、敵は摩訶不思議、誰かが治安維持しなければこの街や第四世界は無秩序の世界になってしまう。
シティガードの育成はこの都の義務である、故に生半可な訓練では済まないらしい。
「まぁ、街にいるような危険ならそんなに脅威でもないんだがな」
「そうなのか?」
「町の外から来るのが不味いんだ」
街の外は危険が散歩しているなど言われているらしく、気軽に死ねるらしい。
屋敷の外が街の外ではなくて良かったなと、今更に考えてしまった。
「シャロンは何度か戦ったのか? 外の脅威と」
「ずっと戦っている、特務の義務だしな」
「凄いな」
訓練校は思ったよりも小さかった、基地や宿舎並みの大きさを考えていたが、それほどでもないらしい。
「さて、私の案内はここまでだ、後は訓練校の教官の指示に従え、いいな?」
「わかった、ありがとうシャロン」
シャロンと別れ、俺は中に入っていく。
教官とやらは何処にいるのだろうと、訓練校のゲートをくぐるとこちらに向かってくる物体が見えた。
姿は……、丸いモノとしか言えない。
ふわふわとこちらに飛んでくる姿は先生を思い出させた。
「カードの提示を」
「カード……、ああ、これか」
胸ポケットにしまっていた紙を取り出して見せる事に。
「確認完了、エクス候補生、こちらに」
「わかった」
ついて行きながら、訓練校の様子を見ているが、かなり静かだった。
物音も少なく、誰もいないのではないかと錯覚するほど音がしない。
「すまない、質問してもいいだろうか?」
「どうぞ」
「候補生というのは、今どれほどいるんだ?」
「3名」
「少ないな」
「在籍期間が短く、直ぐに正規のシティガードになる者が殆どです、貴方の様に1から学んでいる候補生という意味では3名です」
「その、1から学ばないシティガードというのはどんなヒト達なんだ?」
「既に何らかの組織に加入し、戦闘経験等を積んでいる者、異能との戦闘経験がある者、第一世界の機人、第二世界の魔導士など様々です」
「納得した、それで、今日俺は何をするんだ?」
「施設案内と適性検査です」
「まだ検査があるのか」
「昨日してもらったモノとは違います」
「そうか」
等と話している間に講義室に着いていた、今日のスケジュールやら訓練校についての説明を受けた後、施設案内に。
地下のトレーニング施設を紹介してもらったりと、様々な場所に案内された。
訓練校は地下に広がっており、休む場所や治療する場所、食事するところも含め全て地下にあった。
最後に案内されたのは、戦闘試験場と呼ばれる施設だった。
話をまとめると実戦形式で戦闘行う場所で、魔法等も使用できるらしい。
「では、適性検査を行います」
「ここでか」
「はい、それでは始めます」
いきなり始まった適性検査とやらは目の前の丸い案内役飛び上がり、試験場の入り口が閉まっていく。
辺りを見渡すが、他に変化はない。
何が始まるのか身構えていると、天井から人影が降ってきた。
その姿は外を守っていた機械獣を思い出させるようなヒトだった、これが第一世界の機人というやつなのかもしれない。
全身に生身と思える部分はない、機械が意志を持って目の前に現れたというべきだろう。
重量を感じる着地音、それに耐える身体は非常に頑丈そうだった。
もしアレが悪意を持っているならば、俺にもどうしようも出来ないだろう。
とりあえずと、検査内容は知らないので俺は機人の様子を見る事しか出来なかった。
「……動揺無し、やはり心臓は強いみたいですね」
「何のことかわからないが、適性検査とやらは何をするんだ?」
「私との戦闘です」
「そうか……、では、一つ言いたい事が」
「なんでしょう?」
「俺は戦い方というのがわからない、すまないが戦う事は出来ない」
「では貴方は、目の前にいる私という脅威に対し、何もしないと?」
「そうだ、何か出来る事があれば別だが、今の俺には何も出来ない」
「わかりました、では検査は終了します」
そう機人が言うと、封鎖された入り口は開き、案内役の丸いのも出てきた。
「自己紹介という感じになりますか、第一世界から派遣されたマキナです、正式名は長いので省きます」
「知っていると思うがエクスだ」
「はい、貴方を案内してこれも私の一部ですので把握はしております」
「もしや、教官というのはマキナの事なのか?」
「はい、私が教官です、今後よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
差し出された手と握手すると、とても冷たくて硬かった。
表情などは一切わからないのは、ちょっと怖い感じがする。
「何事にも動じない貴方を見ていると、何かしら戦闘経験があると予想していましたが……、本当に何もできないのですか?」
「ああ、今までやってきたのは勉強と家事だけだ」
「何故貴方は此処に、と問いただしたくなりますが話は聞いています、遭難した孤児のようなモノだと、その保護も我らシティガードの務めとはいえ、こうやって目の前に連れてこられるのは稀ですね」
「そうなのか?」
「候補生に志願する者は多くありません、特務からの推薦というのが気になります」
「身を守る術が欲しかったと伝えたら候補生はどうだと、候補生になれば最低限の衣食住は約束されるとも」
「なるほど、アルシアでしょうね、それを言ったのは」
「その通りだ」
「彼女は先ほど言った1からではない候補生だった者、第二世界から来た彼女は既に役割が決まっておりここでの本格的な訓練はしていません、故に厳しさを知りません」
「それでも、俺は教えて欲しい、一人になっても戦う術がないのは嫌だ」
「意志は尊重します、ようこそエクス候補生、貴方を歓迎しましょう」
試験場から出ると、マキナは他の候補生に会わせると言ってくれた。
そろそろ講義室に集まるのだというので、その際に俺を紹介してくれる事になった。
「緊張しますか?」
「いいや」
「皆にもその態度でよろしくお願いします」
「わかった」
講義室にマキナと入ると、候補生三人が最前列の机に座っていた。
何かに怯えるように、マキナの様子を伺っており、顔色は皆悪い。
「おはようございます皆さん、今日は新しく候補生になった者を紹介します」
「「……」」
皆、一言もしゃべらないしリアクションも無し、早く終われと願っているようにも見える。
「では、自己紹介を」
「わかった、俺はエクスという、此処には戦い、生き残る術を学びに来た、よろしく頼む」
三人の見る目は死んでいた、今にも「あ、そうですか」と返事が来るような錯覚を覚えてしまう。
「マキナ、どうして彼らは元気がないんだ?」
そうマキナに尋ねた途端、三人は一斉に反応を示した。
「なッ!?」
「呼び捨て!?」
「嘘でしょう!?」
表情が読めないマキナだが、何故か今は笑っているように見えた。
「三名の元気がないのは怠けている証拠でしょう、気にしなくて構いません」
「そうか」
「……さて、このエクス候補生は12歳と最年少です、皆さんと訓練内容は違いますので会うのはこの朝の時間だけでしょう、初の後輩なんですから先輩らしいところを見せてください、エクス候補生よりも怠けているところがあれば貴方達を更に鍛えねばなりませんし、頑張ってくださいね」
そう言われた三人の俺を見る目は、露骨に変わっていた。
俺自身も気を引き締めて頑張らなければならないなと、先生に怒られて時の事を思い出していた。
本の角は痛かった、マキナに叩かれたら、俺はもっと痛い目を見るだろう。
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