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 シティガードには怖いヒトばかりいるのだろうかと、目の間のお姉さんをジッと見てしまった。

 腰から下は物々しい装備しているが、上はシャツ一枚とラフな格好で、生傷や筋肉が良く見える、そのまま見上げれば、短めの黒髪に凛々しい顔つき、そして眼帯である。

 ……、眼でも抉られたのだろうか?


「えっと、これか?」

「そうだ」


 眼帯のお姉さんから教えてもらったものは定食と呼ばれるものらしく、色々含まれているので悩んでいるならコレにしておけば良い、という事みたいだ。

 なるほど考えられていると、ちょっと納得していた。


「ありがとう……、アルシア、これにする」

「は~い、私は何にしようかな~…………、何時から居ました、局長?」

「ついさっき帰ってきた、この少年は……お前の隠し子か?」

「そうだったら嬉しいんですけど違いますよ~」


 この人が局長らしい、つまりはピアーズやアルシアよりも上の立場のヒトという事らしい。


「はじめまして、エクスだ」

「しっかりしてるな、特務局長のシャロンという、よろしくな」

「よろしく、シャロン」


 シャロンは隣に腰かけると、俺が睨めっこしていた端末から注文し始めていた、この端末を操作しておけば、その内定食とやらも届くようだ。


「…………、あ」


 ヘトヘトになっていたアルシアが変な声を上げた途端、冷や汗のようなモノが滴っていた。

 ピアーズも使っていた、電話のようなモノを取り出し何かを確認しているようだが、顔色はドンドン悪くなっていく。


「アルシア、体調でも悪いのか?」

「い、いえ! エクス君は気にしなくていいんですよ」

「だが、顔色が良くない、ご飯を食べれば治るか?」

「そ、そーですねー、なにたべよーかなーあははー」

「私がここに居ると、何か不都合でもあるのか、アルシア特務官?」

「…………え~っと」

「実はな、ピアーズ特務官から連絡が入っててな、特務案件があるかもしれないから釣りなんかしてないで早く来てくれ、とな」

「なんといいますか、報告抜けがあったといいますか」


 シャロンは良い笑顔のまま、テーブル越しにも関わらず詰め寄っていた、頭をガッシリと握られてアルシアはなんだか痛そうである。


「シャロン、アルシアが痛そうにしている」

「いいんだよ少年、コイツのミスだ」

「そうなのか」


 シャロンはアルシアの端末を受け取ると、少し驚きながらも画面を眺めていた。


「何が見えるんだ、それ」

「エクス、お前の事情聴取の内容や検査結果の報告だ」

「ああ、あれの……、なんだ、俺は候補生とやらには、実はなれないとか?」

「……、そういう話になっていたか、後で報告書をちゃんと寄越せ、それから経過報告を怠るなよアルシア」

「局長が釣りに行かなきゃいいだけでは……」

「あん?」

「なんでもないです……」

「シャロン、それで俺はどうなるんだ?」

「ああ悪い、安心しろ、ここから捨てたりはしない」

「良かった」


 乱暴に撫でながら、シャロンは答えてくれた。


「ところで、お前の出身、不明らしいが?」

「俺自身、先生ところに行く前は第二に居たんだが、それ以前の記憶がない……、知り合いは第五って言ってたんだが、ホントかどうか確かめた訳でもない」

「その辺も含めて自分探しか……、まぁいい、今後どうなるかはひとまず置いといて今は飯を食え、そしてゆっくり休むといい」

「そうさせてもらう、ありがとう」


 話し終わったタイミングで、食事が運ばれてきた。

 食事中に色々喋ると先生に良く怒られたので黙っていただくことにした。

 食べている物がなんなのかわからないが、味は悪くない。


「ところで少年、その本の先生とやらの名前はわからないのか?」


 シャロンの返事には首を横に振る事で答えた。

 食べている最中に話しかけないでほしいと、本の角の痛みを思い出す。


「……? どうした?」

「もしかして、エクス君の口に合いませんでしたか?」


 だから、話しかけないでほしい。

 伝わっていないようなので、食事の手を止めるしかなかった。


「アルシア、食事中に話しかけるな、怒られる」

「えっ?」

「先生に殴られると、痛い」

「あ、そういう事でしたか」


 二人はお構いなしに食べながら話をしていた、もしかして、俺が変なのだろうか?

 食べ終わって水を一口飲んでから、二人に聞いてみる事にした。


「俺は、何かおかしかったのだろうか?」

「いや、気にする事でもない、すこし珍しがられる事もあるかもしれんが、おかしい事ではないぞ」

「そうか、よかった……、アルシアもこっちの事がわかるなら気付いてほしかった」

「ああ、あれな、疲れるから普段は使ってないんだ」

「そーなんですよー、もうあれ使うと眠くなってしまうんですよー」

「ちなみに伝えたかった事は何だ?」

「疲れているので休みたい、でも、連れまわされた」

「い、言ってくれればよかったのに!」

「知らない事しかなくて目が回っていた、でもこっちの事はわかるみたいなこと言ってたから……、だが、俺も何か言えばよかった、ごめんなさい」


 アルシアも疲れている、俺の事ばかり考えさせるのも変な話かもしれない。

 色々してくれたのだ、感謝すれど、こちらが文句を言うのはおかしい。


「何時か、恩は返せるようになるといいんだが……」

「いいんですよ気にしなくて! エクス君は、もっと頼ったり甘えたって不思議じゃないんです!」

「甘えるとは、どういった事なんだ?」

「いざ口にしようとすると説明しにくいですね……」

「難しく考える事はない、不思議思った事や疑問は聞け、何か辛いと思ったら頼ってみろ、そういう事でいいんだ」

「流石局長! 私もいいです――」

「駄目だ」

「はい、わかっていました、すいません」


 アルシアは、やっぱり駄目なヒトなのだろうか?

 シャロンに言われた事を少し考えてみたが、意味はわかるが俺が実際に頼りにいくかと考えた時、想像が出来なかった。

 きっと、その時でないとわからないのだろうと。


「とりあえず今日は休め、部屋は用意するし、何かあった時の連絡手段も教えておく、文字は読めるな?」

「大丈夫だ、ありがとう」


 全員の食事が終わった後に、部屋に案内された。

 アルシアは仕事があるらしく、ちょっと涙目で何処かに行ったが、部屋にはシャロンが案内してくれた。


「シャロンは、仕事とかいいのか?」

「仕事には休みというモノがある、私は今日休みでね、本来は何もしなくていい日なんだ」

「ごめんなさい、仕事させてしまったようだ」

「気にするな、こんなのはおせっかいというんだ」


 部屋に着いた後は、機械の使い方だったり、明日から着れる服だったりと、色々説明してもらった。

 自分のサイズに合う服があるのは、同年齢ぐらいの候補生も居るからだという。

 子供が此処に居ても不思議ではないらしい。


「最後はここだな、シャワー室」

「屋敷にはなかった、魔晶でお湯は作れたけど……」

「魔晶? ああ、第二の魔法器具か、使えればそれの方が便利だからな」

「機械の方がわかりやすい」

「そうか?」

「書いてあるから、それを押すだけでいいのは便利だと思う、魔晶は使い方が書かれていないから」

「確かにな」


 壁の機械にはお湯の熱さだったり、水の勢いが書かれているので凄く便利だ。

 着替えもあるのでお湯を浴びたらさっさと寝てしまおう。

 上着を脱いでいると、シャロンがずっとこちらを見ている事に気付いた。


「今お湯を浴びるのは駄目か?」

「……エクス、君はそのまま育ってくれるといいな」

「なんの話だ?」

「なんでもない、私も一緒に浴びようかな」

「狭いと思う」

「そうだな」


 そう言ってシャロンは出て行ってしまった、ちょっと残念そうだったのは何故だ。

 正直色々ありすぎたが、今日は何とか乗り切れた、明日も死ななければいいなと、ふと考えてしまう。


 とりあえずと、服を脱ぎ終え、お湯を浴び、タオルで身体を拭く。

 着替えは寝床に置きっぱなしなのでそのままシャワー室から出ると、まだシャロンが居た。


「居たんだ、まだ何かあったのか?」

「慣れない事ばかりだったろう? 一応心配してたんだ」

「そっか、でも今のところは死んでないし、大丈夫だと思う」


 シャロンは世話好きなのか、髪を乾かしてくれたりと色々してくれた。

 その間に第四世界の事を聞きながら、世間話をしていれば時刻は深夜に。


「流石に眠い、今日はもう寝ようと思う」

「では、また明日だな」

「ありがとうシャロン、おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 シャロンが部屋から出ていくのを確認して、俺は横になった。

 明日は何が起こるのか、楽しみである。

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