6.いくつかの再会(4)

 カーテンを閉め切った薄暗い部屋は、酒の匂いが充満していた。

「なんで、わしがこんな……! くそっ!」

 スグラスは肘掛け椅子に沈み、酒を飲みながら悪態をついた。

 王都の郊外、シャルトムール公爵家の別邸。爵位を息子サクシマに譲って一年は領地に引っ込んでいたが、スグラスはしびれを切らして王都に出てきた。しかし、サクシマによってこの別邸に留め置かれていたのだ。

「父上」

 声を掛けられて顔を上げると、サクシマがいた。

「お前、サクシマ! 何をやっとった! わしをこんなところに押し込めよって! お前もドーアンの手先か?」

「まさか」

 薄く笑うと、サクシマはスグラスの腕を引く。

「父上、お迎えに上がりました」

「あんな辺境の領地になんぞ戻らんぞ! わしを誰だと思っておる!」

「ええ、もちろん。今から行くのは王城です」

「本当に王城か? そう言ってまた別の場所じゃないだろうな」

 スグラスは濁った視線をサクシマに向ける。王城に行くとでも言わなければ動こうとしないのを皆知っていて、以前も騙されて領地に追い返されそうになった。

「王城ですよ。父上、待ちに待ったそのときが来たのです」

「そ、そうか。ついにか! それなら行かねばならんな」

 スグラスは重い体で立ち上がる。一歩踏み出してふらつくと、すかさずサクシマが支えた。

 自分を見下ろす息子の冷ややかな視線に、スグラスは気付かなかった。

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