第63話恋に落ちるセンチメンタル



「……いきなりですわね」


 驚きで声が震えてしまわないよう、アリシアはやや間を置いてからゆっくりと言葉を返した。


 とはいえ、今ので動揺していることくらい、スベエルクにはとっくに看破されているだろう。


 しかし、アリシアは可能な限り冷静な表情を作って答えた。

 ちょっとした意地である。

 たとえ見透かされているのだとしても、こんな風に突然驚かされるのはアリシアの好みではないからだ。


 そもそも、オーフェリアや自分の従者であるアベルがいない場所でこのような申し出をしてくるとなれば、相手の打算的な感情も疑わねばならなくなる。

 いくら遊牧民アンゴールという異なる文化を持つ相手とはいえ、王子たるスベエルクが適当に結婚相手を選べるような立場であるとは思えない。

 その上で言ってきているのだとしたら、その真意がわかるまでアリシアは何も言うことはできなくなる。


「礼を失した行動だというのは、私も重々承知している」


 アリシアの警戒を解こうとするようにスベエルクは小さく手を掲げる。


「だが、我々の侵攻を退けた“あの力”。それに私との一騎打ちで見せた剣の技量。そして、交渉の場で発揮した分析力と臆せぬ胆力。加えてその可憐なばかりの美しさ。それらすべてを目の当たりにして、私――――いや、俺はあなたが欲しくなった」


 ……んー、いくらなんでも褒め過ぎじゃないかしら?


 初めて出会ってからそれほど時間も経っていない相手からのベタ褒めに、アリシアはなんともいえない困惑――――居心地の悪さのようなものを覚えてしまう。


 しかし、そのおかげで幾分か冷静さを取り戻すことができた。


「いささか褒め過ぎではありませんか?」


 少しだけ眉を寄せるアリシア。

 こう見えて、アリシアは他人から社交辞令抜きに褒められることには慣れていない。


 ブートキャンプを終えて学園に復帰した時には、その変貌ぶりに周囲から良い意味でかなり騒がれていたのだが、実はあの時期のアリシアにそんな余裕はなく、残念ながら本人はその評判を耳にしてはいなかった。


 一方、あまりにもストレートな物言い――――というよりも、求婚プロポーズを間近で聞かされ、さすがのエイドリアンとレジーナも先ほどまでの勢いを失って驚きに目を大きく見開いていた。

 まぁ、どちらかというと「おいおい、コイツ正気か?」みたいな気配が多分に含まれていたのだが、さすがのふたりもそのあたりは絶妙に空気を読んで背景に溶け込む作業に徹していた。


「そのようなことはない。今までにあのような形で我らに勝つ者などいなかった」


「いえ、アレは――――」


 反射的に「自分のモノではなく、アベルたち“チーム”の力なんですけど……」と言いかけてアリシアは言葉を止めた。


 アンゴールとはまだ同盟的なものを考えているとの打診があるだけで、正式に何かを結んだわけではない。

 そんな曖昧な状況下で、手持ちの札――――あの能力がどんなものであるか――――をスベエルク相手に喋るのはあまりにも迂闊な行動だ。


 どうにかして適当に言葉を濁そうとアリシアが思案していると、スベエルクはその反応を自分の求婚に対する困惑だと判断したらしく、さらなる言葉を並べようと口を開く。


 いったい、なにが元々饒舌ではなさそうな彼にここまでのことをさせるのか。

 その理由がアリシアの脳裏をよぎったが、そんなことはないだろうと即座に否定する。


「たしかに、俺自身が“ファーン”を継げるかは確実なものではない。知ってはいるだろうが、アンゴールは世襲制ではないゆえに」


 本人の言う通り、スベエルクは王子という肩書こそ持ってはいるが、それは他国の王族と比べればその重みはまるで違ってくる。

 もしアリシアがアンゴールに嫁入りをしたとしても、スベエルクの父親である当代“ファーン”がその地位を退くようなことになれば王子の嫁という扱いを受けることはできなくなるだろう。


 そんなリスクのあるところに、クラウスもオーフェリアもアリシアを嫁に出すわけがない。

 たしかにアンゴールとの同盟が上手くいけば、第二王子派に対して切れる札は増えるかもしれないが、そのために自分の手持ちの中でも鬼札ジョーカーとなるアリシアを切ることはないだろう。


 そして、それ――――少なくとも自分の立場の不安定さをスベエルクが理解していないとも思えない。


「だが、機会がないわけではない」


 スベエルクの言葉には、不安の気配など微塵も存在していなかった。


「今回の件でおそらくイェスゲイの部族は解体されるはずだ。そこで新たに俺が東部へと副族長として派遣されるよう中央に働きかける。そして、次期“ファーン”となるための推薦を受け、ゆくゆくは私がファーンとなる。アリシア殿、あなたにはその時俺の傍らにいて欲しいのだ」


 スベエルクの真っ直ぐな視線がアリシアを見据える。

 秀麗な容貌の中にありながら、双眸にはまる黒の瞳には狼の気配を宿していた。


 アリシアは静かに瞑目する。


「自らが王になり、わたくしをそのきさきとしてみせる……。なるほど、殿方から受ける求婚の言葉としては我が身に余る――――それこそ、わたくしのような者に対して勿体ないばかりのお言葉をかけていただいたと思いますわ」


 スベエルクがけっして冗談や酔狂で言っているのではないと理解した上で、アリシアは静かに自身の言葉を紡いでいく。


「では――――」


 色好い返事が得られると思ったのか、わずかに身を乗り出すスベエルク。


「ですが、そのお申し出を受けるわけにはまいりません」


 空気が凍る――――まではいかないが、馬車の中の温度が幾分か低下したのが誰の目にも明らかだった。


 空気と同化しようと頑張っていたレジーナとエイドリアンも、アリシアの容赦ない返答を見て「うわぁ、即答で断るのかよ……」といったすさまじく気まずいものを目撃してしまったような表情を浮かべている。


「……それは、なぜか聞かせてもらってもよろしいだろうか」


 おそらく予想だにしない言葉だったのだろう。

 スベエルクは明らかに動揺しており、声色が若干ぎこちないものへと変わっていた。

 彼としては、できることならば声を大にして問いを口にしたかったに違いない。


 しかし、王子という立場と彼の矜持がそれを許さなかった。


「殿下の御心は身に余る光栄でございます。ですが、わたくしは自分自身の力で新たな運命を切り拓いていきたいのです。ただただ誰かから与えられるような人生では退かないません」


 小さく笑いながらアリシアが語った言葉は、貴人と話すべき手順を踏んでこそいたもののかぎりなく本心からに近いものであった。


「退屈、と申されるか」


 アリシアの語る言葉がいまいち理解できない――――そんな感情がスベエルクの表情に浮かび上がる。

 未経験のことに感情の制御が完璧に行われていないのか、その瞳にはわずかにだが興奮の色があった。


「ええ、あくまでわたくしの主観にすぎませんが……」


 アリシアは慎重に言葉を連ねていく。


「わたくしの存在をとまでおっしゃっていただけたことは大変嬉しく思います。ですが、それととでは意味合いは大きく異なってまいります」


 穏やかな表情でアリシアの口から放たれたそれは、間接的には聞こえるものの明確な断りの言葉となっていた。


 いくら正式な――――いや、非公式にもほぼ国交がないとはいえ、このような発言をするには相当の勇気が必要だ。


「そして、わたくしは“共に歩んでいける人”を選びたいのです、殿下」


 しかし、アリシアは自身の想いを曲げることができなかった。


 スベエルクから求婚の話を切り出されてからずっと、彼女の脳裏には目の前の人物ではなく冬の湖を思わせるコバルトブルーの瞳を持つ人間の顏が浮かんでいる。

 ほんのすぐ近くにいるというのに、彼が自分のすぐそばにいないだけで不安な気持ちが湧き上ってくるのだ。

 「会いたい」というたった四文字ひとこと。それを実際に口へと出すことができればどれだけ楽だろうか。


「……なるほど。すでに意中の人間がいるということか」


 発言の意図を窺うように、スベエルクはしばらくの間アリシアに向けて視線を送っていたが、やがてゆっくりと大きく息を吐き出すと、一呼吸おいてから言葉を口にした。

 もしかするとアリシアの表情から気がついたのかもしれない。


 いずれにせよ、彼はたとえ表面上だけであっても、アリシアの言葉を冷静に受け入れることができた。

 それは男としての意地もあったが、それ以上に彼自身が生まれ持った素質もあったのだろう。


「……いや、すまないアリシア殿。貴族令嬢の発言とは思えなかったのもあって、少しばかり困惑してしまった。こう言っては悪いが、王国の女性貴族は早々に収まるところに収まろうとするものだとばかり思っていたからな」


 スベエルクの言葉は「定住の者は安定を求めたがるものだ」という一種の先入観によるものであったが、それはあながち間違いではなかった。

 おそらく王国の貴族令嬢は、自分自身が“家の政治の道具”となって血を重ねていくものだと割り切っている。

 むしろ、その気がないと明言するアリシアが例外なのだ。


「そうでしょうね。ですが、王族から婚約破棄のひとつもされればそれなりに変わります。わたくしに上等をカマしてくれた人間への“お礼”も、未だできておりませんですしね」


 少しだけ、“いつかの出来事”を思い出したようになるアリシアの表情と口調。

 笑顔の中に点火された感情を垣間見たスベエルクは、知らずのうちに背筋が小さく震えた。


「……なるほど、獅子のような気性をお持ちのようだ。俺が事前に聞いていた人物像とは大きく違う。まぁ、あなたの母君であるオーフェリア殿を見たら納得もできたが」


 つい今しがた見せた自身の反応を隠すかのように身体全体を使って大仰に驚いてみせつつ、スベエルクは小さく笑う。


。それに、女という生き物は単純ではございません。日々変わり続けているのですよ」


 さすがに言いたいことを言い過ぎたかしら。


 アリシアは我に返ってそう思ったが、今更どうすることもできず開き直って笑顔と共にウインクを飛ばしてみる。

 完全に海兵隊の“悪い癖”が侵食しつつあった。


 スベエルクは見慣れないその動作ウインクを受けて一瞬きょとんとした表情になったが、すぐに自然に浮かび上がってきたと思われるにこやかな笑みへと変わった。


「いや――――ますます惚れた。俺の求婚を受けてもらえなかったことは正直残念ではあるが、そう簡単に諦めることはできそうにない。それに、あなたがどのような風をこの国――――いや、この世界に吹き込むのか、私自身、間近で見届けてみたくなった」


 にこやかに笑うスベエルクの言葉。

 どうもアリシアのことを諦めきれてはいないようだが、その真意のほどはわからない。


 それよりも他に、なんだか意味深な言葉が他に存在していたようにも思える。

 いったいどういう意味かアリシアが問おうとするのと同時に、馬車が停められた。


 どうやらいつの間にか目的地に着いていたらしい。


「――――あら、着いたようですわね」


 さすがに馬車が停まった状態でいつまでも会話を続けているものではない。

 アリシアは素早く目だけでエイドリアンとレジーナに指示を出して先に降りさせ、護衛として周辺を警戒させる。

 これはあくまでも形式的なものだ。


「殿下、どうぞ」


 それからスベエルクを促す。


 最後にアリシアが出ようとすると、スベエルクが恭しく手を取ってくれる。

 ……儀礼的なものだが、この反応を見るにまだ自分のことを諦めてはいないようだ。


「ありがとうございます」


 アリシアはあくまでも社交辞令的にそう言って済ませるが、それを受けるスベエルクはどこか嬉しげだった。

 途中で後ろの馬車から降りてきたオーフェリアとアベルの姿がアリシアの目に入った。

 あくまでもここからの主役ではないため、ふたりともこちら側の目立たない位置に留まる。


 そして、馬車から降りて正面を向くと屋敷を背景にしてクラウスが護衛の兵士を従えて立っていた。

 王都から急いで帰ってきたらしくわずかながら目元にクマが浮かんでいたが、表情は立場上疲れを見せることはできず、客人を歓迎するためのにこやかな表情を浮かべている。


「こういった場合、私から切り出すべきなのでしょうね。私はスベエルク・ウランフール。アルスメラルダ公爵閣下にお会いできて光栄に存じ上げます」


「こちらこそ。そして、お初に御目にかかります、スベエルク殿下。辺境の地ではありますが、ヴィクラント王国へようこそおいでくださいました」


 握手を交わすクラウスとスベエルク。

 それからふたりは正式に会談を行うべく屋敷へと入っていった。


 あとにはアリシアと愉快な仲間たちがとり残される。


「さて、旦那様が殿下と会談を行っている間はやることはないわね。わたしたちは少し休みましょうか」


 自分の屋敷だからだろうか。オーフェリアは盛大に伸びをした。

 その際の欠伸を隠そうともしないあたり、相当に疲れているのだろう。

 無理もない。戦いを終えてからずっと動きっぱなしだったのだ。ある意味では夫であるクラウスよりも肉体的な疲労は上かも知れない。


 言いたいことだけを言って屋敷へと向かっていくオーフェリア。

 その足がふと止まる。


「あの様子だと、会談は短くても八半日くらいかかるんじゃないからしら。ひと眠りするにはくらいかもしれないわね」


 おもむろに放たれたオーフェリアの言葉がなにかいいたげに聞こえたが、アリシアにはそれが意味するところはわからなかった。





 その答えを、アリシアは部屋の扉がノックされる音で知ることになる。







「アベル……?」


 アリシアがゆっくりとドアを開けると、そこにはアベルの姿があった。


「お疲れのところ、申し訳ありません」


「いいのよ。むしろみんなの方が疲れているでしょう」


 軽く頭を下げようとするアベルを、アリシアは手を掲げて制する。


「……入って」


 アリシアは小さく笑って、アベルを部屋に招き入れる。

 従者が主人の部屋に入ることはそう珍しいことではない。


 部屋の奥へと歩いて行くアリシアを見ながら、アベルは後ろ手に部屋の扉を静かに閉める。

 ほぼ同じタイミングでアリシアがくるりと回ってアベルの方へと振り返った。


「さっきね、アンゴールの王子様に求婚されたわ」


 静かに切り出したアリシア。

 元々、アベルには遅かれ早かれ伝えるつもりだったのだろう。


 一方のアベルは無言。

 オーフェリアから求婚の申し出について聞いていたこともあって、アベルが受けた衝撃は小さなものだった。

 だが、皆無ではない。疼痛とうつうのような感覚が胸に滲み出てくる。


「ひとり目はこの国の第二王子で、ふたり目は隣国の王子。ねぇ、アベル。わたしはどれだけ王子様にご縁があるのかしら?」


 冗談めかしながら、アリシアはさもおかしそうに笑う。

 だが、それを受けるアベルは笑うことができなかった。


「申し出を……お受けになられたのですか……?」


 アベルは自分の中に渦巻く感情を押し殺して問いかけた。


「……いいえ、断ったわよ」


 アリシアの言葉に、アベルの胸中に安堵の感情が波となって広がっていく。


「「次のファーンになるから、その時に自分の横にいて欲しい」っていう口説き文句だったけど、なんというか……別にわたしじゃなくても良さそうだったから」


 アリシアはどこか困ったような表情を浮かべ、それから小さく肩を竦めた。


「即座に断るなんて無礼にもほどがあるわよね。自分でも貴族失格だと思うわ」


 本人が苦笑しながら言うように、貴族として家を存続あるいはより繁栄させるための伴侶パートナーを選ぶなら、アリシアの異性に対する評価の仕方は及第点にも及んではいない。


「でもね――――」


 そこでアリシアは真顔になる。


「わたしは、と歩いていきたい。婚約破棄なんて不名誉ナンバー・テンを喰らっている以上、それこそがわたしに残された意地よ」


 アリシアは不敵に笑ってみせた。

 それこそが自分の誇りであると訴えかけるかのように言い切り、その場でくるりと回り背中を向ける。

 その行動の意味をアベルは考えた末に、ふたたび覚悟を決めて口を開く。


「アリシア様」


「なにかしら?」


 言葉を投げかけられたアリシアは静かに振り向く。


、私はアリシア様について行くと言いましたが、それについてはこの場で撤回をさせていただきたい」


 アベルの言葉を受けたアリシアの瞳に不理解の色が混じり、それは次第に不安の色へと変わっていく。

 なぜこのタイミングで? 視線はそう問いかけるものであった。


 しかし、アベルは続ける。


はただあなたの後をついて行くだけで終わるつもりはありません。従者という枠を越えて、俺はあなたと共に在りたい――――いや、


 アリシアは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐにその意味を理解し、両手で口元を覆ってしまう。


「うそ……。それって……」


 思わずつぶやくアリシア。


 それは奇しくも彼女がスベエルクに語ったものと同じ言葉であった。


「俺も存外負けず嫌いでしてね。我々はまだに勝ってはいませんから。イヤなんですよ、あなたが負けたままというのは」


 アベルもここはあえて口調を海兵隊風に崩して、先ほどのアリシアと同じように不敵に笑ってみせた。


「ですが、それは“熱狂”と共にあるものであってはいけない。何が正しく、何が必要であるか。それをお互いが理解した上で為し得るものにしたい。そのために、俺と一緒に歩いてくれますか?」


 不敵な意味を微笑みに変え、アベルが恭しく右手をアリシアへ向けて差し伸べる。


「ええ……! よろこんで……!」


 喉から歓喜の声を溢れさせながら、破顔したアリシアはアベルの胸に飛び込んでいく。

 それは以前のものとは違って、一切遠慮のないダイブだった。


 アベルはそれをしっかりと正面から受け止める。


 せめて、今この瞬間だけでもふたりが離れてしまわないように。


「離さないでよ……? これ以上、王子様からの求婚プロポーズなんて欲しくないんだから……!」


 瞳を濡らしながら、アリシアはアベルの胸元で叫ぶ。


 自分でも無茶苦茶なことを言っているとアリシアは理解している。

 しかし、それ以上に心の内に湧き上がる感覚が、自分でもよくわからない言葉を並べさせていた。

 嬉しさだとか不安だとかそういうものが混ざり合ってできた感情だ。


 ――――でも、なんだろう。不思議な心地よさ。


「じゃあ、俺が王子様になるのはナシですね」


「もう、バカ! 要らないわよ、そんなの!」


 冗談めかして言うアベルにアリシアは笑顔で怒ってみせた。


「なんと……。てっきり悪役令嬢らしく、王位を簒奪してみせなさいと言われるかと思いましたが」


「国なんて重いだけよ。それよりも、先にこの領地をなんとかしなくちゃいけないんだから……!」


 しょうもない冗談を言い合いながら、くっついたままで笑うアベルとアリシア。


 このふたりが今回歩み寄れた距離はいったいどれほどのものだろうか。


 しかし、もし今のふたりが笑いあう姿を誰かが見たなら、きっとこう言うことだろう。



 “幸せそうにしているふたりの前で、そんなものは野暮だろう”――――と。










 かくして役者は新たな舞台へと上り、いよいよ“反撃”の章の幕が開けようとしている。

 されど、そこに勇者や英雄はおらず、舞台に立つ人々は自身の手で運命を切り拓いていくしかない。


 物語のような大団円を望むでもなく、ただ少しでも幸せな結末に辿り着けるように祈り、戦いながら――――。



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