第10話 Welcome to ようこそ Marine Corps!
「Today, You are Marine. You are a weapon, You are a minister of death, praying for War. Once a Marine, always a Marine. You are no longer maggot. You're part of a brotherhood. From now on, until the day you die, wherever you are, every marine is your brother. You may go to Battlefield. Or you may not come back. But always remember this; Marines die, that's what we're here for! But the Marine Corps lives forever. And that means you live forever!」
(本日をもって貴様は海兵隊員となる。貴様はひとつの兵器であり、戦争に祈りを捧げる死の司祭だ。ひとたび海兵隊員となれば、常に海兵隊員なのだ。貴様はもはやウジ虫ではない。兄弟の絆に結ばれる。この時より、貴様のくたばるその日まで、どこにいようと海兵隊員は貴様らの兄弟だ。貴様は戦場へ向かうかもしれない。あるいは二度と戻らないかもしれない。だが、肝に銘じておけ。海兵は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが、海兵は永遠である。つまり――――貴様も永遠なのである!)
ブートキャンプを始めた日に聞いた『
訓練で自分の身体の一部となるまで、アリシアと苦楽どころか寝る時間さえも一緒に過ごしたM-14ライフル。
しかも、アベルが手を加えてくれたのか、自分で手入れをしたものよりも数段美しく磨き上げられている。
「
正式に自分のものとして渡されたスプリングフィールドM-14バトルライフルを、感慨深い表情で握り締めるアリシア。
腕にかかる重みも、なぜかいつもよりずっしりと感じられた。
「だから、貴族だろうが、騎士だろうが、平民だろうが、ひとたび
肩に背負った自身の
「本日より、そのライフルが貴様の相棒だ。戦友であり恋人であり兄弟だ。婚約者などといったクソの役にも立たないものでは決してない。貴様の魂と結びついた唯一無二の存在である!」
アベルの言葉を胸に刻みつけながら、アリシアはこの訓練期間の出来事を思い出す。
最初に洗礼として受けた罵声とシゴきの苦痛。
次第に高度な内容に変わっていく訓練。
初めて
そして、“最終訓練”――――。
彼女を知る者が見れば、この二ヵ月近い期間を経て、アリシアはずいぶんと変わったように思えるだろう。
しかし、それはなにも外見に限った話ではない。
たしかに、身体は元々の細身からいい意味でさらに引き締まった。
ほんの少しだけ日に焼けた印象こそあるが、それでも生まれ持った白磁のような肌は健在で、むしろ絶妙に混ざり合い、ある種の精悍さと色香のようなものを新たに加えたようにさえ思える。
美しい金色の髪については激しい訓練と紫外線で幾分か痛んでしまっていたが、これも今後それなりのケアをすればどうにかなる範囲であろう。
「いい顔になったな、縦ロール。立派な
中でも大きく変わったのは、その
全体的に顔の線そのものがシュッと引き締まったのもそうだが、なによりもその瞳に浮かぶ意志の強さがケタ違いのものとなっている。
訓練当初は「屠殺された鶏の目のようだ」と罵声を浴びせかけられたアリシアの双眸には、今では見違えんばかりの生気がみなぎっていた。
それは、幾多の困難を決して諦めることなく乗り越えた者のみが備えることのできる勲章でもある。
「これで貴様はありとあらゆる事態に立ち向かうだけの強靭な肉体と不屈の精神力を得た! この先、どのような困難が待ち構えていようと、それは貴様にとって乗り越えられる障害にしかならん! すべてを薙ぎ払って進め!」
「サー! イエッサー!」
それらの成果を見届けて、アベルはアリシアに海兵隊式の敬礼を行った。
対するアリシアもすかさずそれに倣う。
両者ともに見事な敬礼だった。
「……そして、これにより
ゆっくりとキャンペーンハットを脱いで、アベルは二カ月ぶりに相好を崩す。
それは彼女の従者としてこれまでついて来てくれたアベルの顔だった。
「――――よく頑張りましたね、アリシア様。これであなたも立派な
アベルから放たれたその言葉を受けて、アリシアはとびきりの笑顔を浮かべたまま、次いで涙腺を崩壊させた。
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