#22 Atmosphere

 本当の期末試験日程は、二週間ほど先でしたが、取っている授業は、授業内試験での評価が、とても多くて。個人的には、既にテスト期間は始まっているようなものでした。

 文学の授業も、テストを迎えました。

 手ごたえはそれなりでした。一番いい評価か、その一つ下か、どちらかは取れているだろう、と私は思いました。梨紗も私の後ろでテストを受けていて。試験後に聞くと、それなりに出来た、ということでした。

よかった、と私は言いました。よかった、と彼女は返しました。

私たちはそれから微笑み合って、そして何となく寂しい気持ちになりました。もう一年生はこれで終わりで、そして学部の違う私たちは、だから一緒の授業を受けることは、二度とないのです。来年など、キャンパスすら離れてしまうのですから。

「ねえ、ありがとう」、と彼女は少し残念そうに言いました。「来年も、仲良くしてね」

「私こそ。キャンパスが違ってなければ、もっと良かったんだけど」

「ほんとにね。でも、三年生になったら、きっとまた同じになるから」

 私はでも、この時の彼女の声色や、言葉たちが、素直にとても嬉しかったのです。彼女が私を好いていてくれているのだということが、伝わってくるようで。少し残念そうな声なんて、演技では難しいですから。小さい所作の方が、本心を映すのです。

 私たちは、春休みに会おうと約束して、それから別れました。


 テスト前に、私は椎名とも会って話をしました。

 少し気まずいような雰囲気は、ずっとあるままでしたが、でもそれだって彼が一方的に悪いわけではなかったし、それに私も維持しておきたかったのです。彼氏という存在を。嫌いなわけではもちろんありませんでしたから。

 春休みに会わないか、という彼の言葉に、少し考えさせて、と私は返しました。今はテストに集中したいし、それに春休みの予定が、まだ決まっていないから、と。

 彼はそれに頷いてくれました。私は少し罪悪感を抱きながら、それに安心していました。

 でももちろん、恋愛なんていう高度な関係性を抱える主体として、私のその行動は、今ひいき目に見ても、ひどく足りないものだったと思います。

 その日の夜、私は彼からのメールを受信しました。

「ねえ、僕たちってさ、まだ付き合ってるの?」

 私は、そのメールを何度も黙読し、迷って。結局、うん、とだけ返信しました。続きが、浮かばなくて。ベッドの中で、仰向けになって天井を見つめながら。

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