第5話 斜め第1階層

女神の化身は気づいた。

「どうして斜め階層はないのだろう?」

望は考え事をしていた。

「第1階層や第1星界、第1異界、第1魔界、地下1階等々。どの作品も同じようなストーリー展開で同じような内容ばかりなんだけど、どうして斜め第1階層はないんだろう。」

元々、他の作品にない斜めに傾いているような内容であるが、オリジナル性を求めるため、もっと斜めを考えてみようと望は思った。



トアル異世界の斜め邪悪階層。

「せっかくナイトメアのスキルを覚えさせてやったのに、女神たちに負けただと!?」

邪悪なるある方は邪念に怒っていた。

「申し訳ございません! どうか! お許し下さい! 」

邪念は頭を下げて許しを請うのだった。

「悪夢を見せるどころか、毒に汚染されて帰ってくるとは!? それでも邪念か!?」

邪悪なるある方のお怒りは冷めなかった。

「もう一度チャンスを下さい! さすれば女神たちを倒してみせます!」

邪念は必死にチャンスを伺う。

「毒に侵されたおまえの命はあとわずかだ! チャンスはない!」

邪悪なるある方は邪念は毒に侵されて死ぬと思っている。

「お取込みの所、失礼いたします。」

その時、男と女が現れる。

「おまえたちは!? サマエル!? ネヴァン!?」

現れたのは神の毒という異名を持つ、死を司る盲目の天使といわれているサマエル。もう1人は毒のある女といわれる女神のネヴァンである。

「その邪念から毒を取り除いてあげましょう。」

サマエルは邪念の毒を取り除けるという。

「本当ですか!? ありがとうございます!」

邪念は大いに喜んだ。

「ただし1度、死んでもらいますがね。デッド・アンド・リバイブ。」

サマエルは悪魔のような天使だった。

「ギャア!?」

邪念はサマエルに1回殺された。

「あれ? 痛くない? そういえば毒も消えている!?」

邪念は何事もなかったかのように、1度死んで甦った。

「さすがサマエルだ。女神の毒を解毒でなく、1度殺して生き返らせて毒を無くすという趣向は面白かったぞ。」

邪悪なるある方はご満悦だった。

「お褒めいただきありがとうございます。」

サマエルは邪悪なるある方に一礼する。

「で、天使と女神のカップルが何の用だ?」

邪悪なるある方にはサマエルとネヴァンはお似合いのカップルに見えたようだ。

「普通は邪念が毒で死のうが生きようが興味はないんでしょうが、斜めに物語を展開させていただきますと、私やサマエルのような王道でもなく、かといってまったく使えないでもなく、本当に斜めを行くために、急遽呼び出されたような感じです。」

ネヴァンが経緯を説明する。

「良かったじゃないか。陽が当たって。それとも斜めキャラでなく、世界の地面が斜めに傾いている方がよかったか?」

邪悪なるある方は少し意地悪に言う。

「そんなことを言わないでください。我々も出番がもらえて嬉しいんですから。」

「そうなんです。こんなチャンスは滅多にありませんからね。」

実はサマエルやネヴァンも自分たちの登場を喜んでいた。

「それではおまえたちに命令しよう。現実世界に行き女神たちを捕まえて、ここに連れて来い。」

邪悪なるある方は2人に命令を伝える。

「はあ! 必ずや女神を捕まえてご覧にみせます。」

「それでは失礼いたします。」

そういうとサマエルとネヴァンは去って行った。

「がんばってね。」

邪念は笑顔で手を振って応援する。

「何をやっている? おまえも行くんだよ。」

邪悪なるある方は邪念にも女神捕獲に向かわそうとする。

「ええ!?」

邪念は女神たちが怖いので出来れば行きたくなかった。

「おまえにも新しいスキルをやろう。いでよ! ケロベロス!」

邪悪なるある方は地獄の番犬ケロベロスを呼び出す。

「ギャア!?」

そして邪念にケロベロスを憑かせた。

「これでおまえはナイトメアとケロベロスのスキルが使えるようになったのだ。」

邪念は2匹のパワーを得て進化した。

「今までよりも強い力を感じます! これなら女神に勝てる!」

邪念は自信に満ち溢れていた。

「行け! 邪念よ!」

「かしこまりました!」

キャラ数を増やさずに1体に合成してしまおうという斜めな展開である。



職員会議が職員室で行われていた。

「みなさん! どう思われますか?」

愛美露出手が職員会議の議事進行をする。

「購買部で焼きそばパンは、もう古いと思います!」

宛名が本気で言う。

「そうです! 太陽光BBQを導入すべきです!」

尼寺須も本気で言う。

「ええ!? 今日の職員会議は食べ物についてなの!?」

九兵衛は本気で戸惑う。

「新メニュー! シーフード・ポイズン・カレーはどうですか!?」

手矢的は本気で言う。

「殺意あり過ぎだろ!?」

外野は本気で呆れる。

「なんでもいいんじゃないですか? 斜めな展開にすると決めたんですから。」

背霊寝は先輩教師たちにお手上げである。

「背霊寝、おまえに発言権はない。」

愛美露出手は新人教師には厳しかった。

「そ、そんな!? あんまりです!?」

背霊寝は2ターン目1番乗りで発言に入った。

「ああー。敵対してるのに共同企画を打ち上げたり、コンテスト乱発だし、大人の事情で結果も未来予知できるし、書いている現在でやってられない。」

外野は嘆くしかなかった。

「新メニュー! シーフード・ポイズン・シチューはダメですか!?」

手矢的は毒が有り余って仕方がないらしい。

「解毒の薬を買っておきましょうね。」

九兵衛は意外にも毒料理を食べる気だった。

「九兵衛まで話に乗ったら、斜めに生き過ぎて収拾がつかなくなっちゃうよ。」

尼寺須は九兵衛をたしなめる。

「アホらしい。これが職員会議か? 外壁でも塗ってこようかな。」

宛名は一抜けしようとしていた。

「お黙りなさい!」

愛美露出手は自分勝手な同僚たちに雷を落とした。

「ビク!?」

教師たちは愛美露出手が本気で怒っているのを感じ怯えた。

「みなさん、何を好き勝手なことばかり言っているんですか? それでも女神ですか!? いや・・・それでも教師ですか!?」

愛美露出手の𠮟咤激励が女神たちを襲う。

「すいませんでした。愛美露出手お姉さま。」

女神たちは反省した。

「私は、グダグダ斜め行く女神です(⋈◍>◡<◍)。✧♡がいいと思うのですが。」

愛美露出手も職員会議の重要事項以外のことを考えていた。

「ズコー!?」

他の女神たちはズッコケた。

「それでいいんですか!?」

背霊寝は愛美露出手に意見する。

「あんたは引っ込んでいなさい!」

「ギャア!?」

他の女神たちが背霊寝をボコボコにする。

「素晴らしいと思います! 愛美露出手お姉さま!」

他の女神たちは愛美露出手に絶対服従であった。

「そう。今のお客様層にフィットしたタイトルよね。早速、タイトルを変えてこよう。」

化粧を制する者は、全てを制する。これが愛美露出手の座右の銘である。

「発表します! 新タイトルは・・・グダグダ斜め異世界の女神です(⋈◍>◡<◍)。✧♡に決定しました!」

愛美露出手はしてやったりの満足顔であった。

「さり気なく斜めを異世界に変えてるところがオシャレですね。」

九兵衛は3ターン目の先頭を役得ならぬキャラ得でゲットした。

「本格的にグダグダしてきましたね。」

もう宛名も守り切れないと感じた。

「キレッキレの斜め異世界な存在なんですね、私たち。」

尼寺須も太陽女神としてキレッキレでいこうと決めた。

「新メニュー! シーフード・ポイズン・ハヤシライスでどうですか?」

手矢的は唯我独尊で自分の道を進むのだった。

「強いな・・・手矢的。うらやましい・・・。」

外野は地震を起こす以外は存在感を示せなかった。

「ああー早く下っ端から抜け出したい!」

背霊寝の心の声が口から出ていた。

「おっと!? 忘れていました。新しい先生を紹介します。どうぞ。」

愛美露出手が紹介すると新しい女神教師が職員室に入って来た。

「毒毒女神のネヴァンの値盤です。よろしくお願いいたします。」

値盤は礼儀正しく挨拶をする。

「やったー! これで雑用係から脱出できる! 値盤! こき使ってあげるから覚悟しなさい!」

背霊寝は声を大にして喜んだ。

「ストップ。」

喜ぶ背霊寝を愛美露出手が止める。

「え?」

時間が止まる背霊寝。

「今後、新任教師が来る度に雑用係争奪戦を行うことにします。」

いきなりの愛美露出手の新提案だった。

「そんな話は聞いていませんよ!?」

背霊寝は抵抗する。

「言ってません。今、思いつきました。背霊寝の雑用係は出番が多い花形職。みんなが雑用係の座を狙って、背霊寝に戦いを挑みます。それほど雑用係で出番がアップするのはみんなの憧れなのです。」

愛美露出手の言うことは半分は正解である。

「花形職!? みんなの憧れ!? なんて雑用係は奥が深いんだ!?」

背霊寝は甘い言葉に完全に騙されていた。

「さあ! 戦いなさい! 負けた方は天下の雑用職に任命します! イヒ。」

愛美露出手は完全に面白がっていた。

「おお! 私の雑用係の座は渡さないわよ!」

背霊寝は戦う気満々であった。

「それでは解説の尼寺須さん。この戦いはどうなりますか?」

実況は宛名でお送りします。

「そうですね。背霊寝はアホキャラですが、本来の月の女神のパワーは伊達じゃないですからね。もっとも昼間なので月は残念ながら出ていませんね。」

太陽女神の尼寺須が言う。

「ゲストの九兵衛さんはどうですか?」

実況は宛名でお送りします。

「解毒の薬、解毒の点滴、解毒の注射、手術室の確保も大丈夫です。」

九兵衛は準備万端だった。

「それでは値盤サイドの手矢的さんを呼んでみたいと思います。手矢的さん?」

実況は宛名でお送りします。

「はいはい、手矢的です。私は毒繋がりで値盤選手を応援したいと思います。値盤選手、調子はどうですか?」

手矢的は海と毒の女神である。

「こんな展開でいいのかしら? もっと真面目に物語を書いた方がいいんじゃない? 邪悪なるある方たちの方が女神より、まだ真面目よ。」

値盤は背霊寝など眼中になかった。

「真面目な値盤選手でした。以上です。実況の宛名さんにお返しします。」

手矢的はセリフが2回あってラッキーと思った。

「ありがとうございました。今度は背霊寝選手サイドの外野さんにお話を聞いてみたいと思います。外野さん?」

実況は宛名でお送りします。

「は~い。こちら外野です。雑用係の王者、背霊寝選手は勝つべきか負けるべきかを悩んでいて瞑想しているようです。」

外野は背霊寝サイドのリポーターで貧乏クジを引いた気分だった。

「zzz。」

ただ背霊寝は昼寝をしていただけだった。

「それでは試合開始です。カーン!」

愛美露出手がゴングを鳴らした。

「んん? ・・・もう朝?」

背霊寝はあたふたと目を覚ました。

「もう、いったいなんなのよ!? この世界は!? いいわ! さっさと終わらせてあげる。毒毒ビーム!」

毒を持つ女こと毒毒女神の値盤が毒の光線で背霊寝を襲う。

「そうはさせるか! 雑用係の座は私のものよ! 月よ! 古より銀色のうさぴょんの住む銀色の星よ! 月の女神セレーネーの私に力を与え給え! ムーン・ライト・ビーム!」

背霊寝は目には目を歯には歯の考え方で、ビームにはビームで対抗しようとした。

「あれ?」

しかし昼間なので月の光はチョロチョロで弱かった。

「ギャア!?」

やっぱり背霊寝は毒塗れになった。

「勝者! 値盤先生!」

「うおおおお! ・・・んん!? なんで私が雄叫びをあげなくっちゃいけないのよ!?」

値盤は手を高々と上げて勝利の雄叫びをあげる。

「敗者の背霊寝は今まで通りの雑用係に決定!」

背霊寝には雑用係がよくに会う。

「や、やった・・・これで出番は・・・私のもの・・・バタ。」

背霊寝は雑用係をすることは満更でもなかったが毒に侵されピクピクしている。

「よかった。背霊寝から雑用係が変わると用事を頼みにくくて仕方がない。」

外野の本音が出た。

「そんなことを言ってる場合じゃないでしょう!? 背霊寝を毒から救わないと!?」

九兵衛は本当の女神のように優しかった。

「仕方がない。毒を毒で中和してやろう。ポイズン・ポイズン!」

手矢的が背霊寝の体の毒を体内に毒を流し込み中和する。

「でも、それって毒が体内に溜まるんじゃ!?」

尼寺須は良いことに気がついた。

「さらば! 背霊寝! 背霊寝選手は月に帰ります!」

実況は宛名でお送りします。

「めでたし、めでたし。これにて職員会議を終わります。」

愛美露出手は職員会議を終えた。結局、職員会議の議題は、新しい先生女神がやって来た。毒を扱える危険な女神ですが、雑用係に任命しますか? それとも雑用係は背霊寝のままでいいですか? というものだった。

「た・・・たしけて・・・だれか・・・バタ。」

背霊寝一人だけは災難だった。



学校の中庭。

「望、平和っていいな。」

巧と望は中庭の芝生で寝転がって気持ち良さそうである。

「本当だね、巧くん。出番が無い方が幸せってあるんだね。」

望は1話の半分過ぎのグダグダ登場していることに幸せを感じていた。

「ああ~このまま何事にも巻き込まれずに昼寝を満喫した。」

「そうだね。巧くんとゆっくりとした時間の流れを感じていたいよ。」

二人はそよ風が頬に当たり前髪が揺れる感じが好きだった。

「ネヴァン、首尾はどうだ?」

「サマエル、私を誰だと思っているの? 毒を持つ女と言われている私に不可能はないわ。」

その時、平和を壊す男女の声が聞こえてくる。

「巧くん、何か聞こえた?」

「僕は何も聞いてないよ。」

巧と望は嫌な予感に顔をしかめながら聞こえないふりをしていた。

「はい。女神を一人毒で固めて捕えたわ。」

「さすがはネヴァン。仕事が早いな。」

「あら? 盲目のあなたに見えるのかしら?」

「私の目が見えなくても毒の目を通じて見ることができるのだ。」

サマエルは目は盲目で見えないが、体から毒でできた目が触手のように出てくる。

「あちゃ!? 背霊寝先生が捕まってる!?」

「こうなると助けない訳にはいかないのね・・・。」

巧と望は不幸に巻き込まれた。

「でも望。あいつらは邪念と違って、かなりヤバそうだ。」

巧にもサマエルとネヴァンの死の神といわれる堕天使と毒毒女神は強そうに見えた。

「そうだね。一気に勝負を着けよう!」

「いでよ! 化粧箱! コスメティックボックス!」

望は煌びやかな化粧箱を呼び出す。

「ヴィーナス・ゴールド・メイクアップ!」

望は巧に口紅やファンデーションにアイシャドウなど手際よく化粧を施していく。

「金色の女神の化身オーラをまとった巧くんの完成です!」

巧は望の手によって黄金の戦士に生まれ変わった。

「くらえ! 邪念! 金色のバスターランチャー!」

巧は金色の女神の化身オーラを集約させバスターランチャーを描き実態化させる。

「当たれ!」

巧はバスターランチャーの引き金を引こうとした。

「そうわさせるか!」

「そうわさせるか!」

「そうわさせるか!」

その時、三つの声が不気味に響くと巧と望を目掛けて火の玉が三つ飛んで来る。

「ギャア!?」

「なんだ!?」

巧と望は吹きとばされて、黄金のバスターランチャーを撃つことができずに消滅してしまった。

「待たせたな! 俺だよ、俺。邪念だよ!」

遂に毎回登場の邪念が俺キャラの座を手に入れた。

「邪念だと!? 邪念は黒い馬だったはず!? なんだ!? その三つの残念な顔は!?」

ケロベロスの顔は三つとも残念な顔らしい・・・。

「ま、まさか!? 地獄の番犬・・・。」

望は邪念の正体を知っている様だった。

「そうだ! 俺は邪悪なるある方にナイトメアだけでなく、地獄の番犬ケロベロスの力も与えられ、更にパワーアップしたのだ! ワッハッハー!」

邪念は自意識過剰にも進化している。

「それにしても三つとも残念な顔。プップップ。」

「本当。可哀そう。イヒヒ。」

巧と望は笑いを堪えることに必死だった。

「邪念じゃないの?」

「おまえドジッたな。」

そこにネヴァンとサマエルがやって来た。

「俺じゃないぞ!? おまえたちの会話がこいつらに盗み聞きされていたんだぞ!?」

邪念は自分に罪はないと身の潔白を主張する。

「ウソつき!」

「他人の性にするつもりか!」

「そ、そんな・・・。」

二人対一人なので邪念は多数決で負けた。

「は!? 俺は頭が三つあるから三票で勝利のはずだ!」

邪念は良い所に気がついた。

「認めない!」

「いい加減に諦めろ! おまえに勝ちは無い!」

ネヴァンとサマエルのコンビ愛はとても強かった。

「そ、そんな・・・。」

今度こそ邪念は諦めて落胆した。

「邪念を見ていると、背霊寝先生みたいな可哀そうな扱いだな・・・。」

「あ!? 背霊寝先生を忘れてた。」

背霊寝は毒で固められて捕まって置いたまま放置されている。

「背霊寝先生を返せ・・・返してもらわなくていいのかな?」

「もしかしたら、ここでこき使われるより、邪悪なるある方の元に行った方が幸せかも。う~ん。」

巧と望は考え込んでします。

「ということで私たちは邪悪なるある方の元に月の女神セレーネーの毒コンクリート漬けを届けに戻る。」

「後はよろしくね、邪念。」

サマエルとネヴァンは、この場を邪念に任せて去ろうとする。

「おお! 任せとけ!」

邪念は自信満々である。

「さようなら! 背霊寝先生!」

「お達者で!」

巧と望は手を振って笑顔で見送る!

「さあ、昼寝の続きでもするか。」

「巧くんと一緒に昼寝、嬉しいな。」

何事もなかったかのように巧と望は昼寝の続きを始める。

「こら!? 勝手に寝るな!?」

邪念は存在を無視された。

「おい。 私のおもちゃをどこに持っていくつもりだ?」

その時、邪念の声をかき消すように女の声が聞こえる。

「おまえは!?」

「愛と美の女神アプロディーテー!?」

現れたのは愛美露出手だった。

「困るな。背霊寝には私がメイクしてきれいな顔にメイクアップしてマーキングしてあるのに、勝手に連れていかれては。私が退屈してしまうではないか。」

いつも愉快犯な愛美露出手は少し怒っていた。

「いつまで寝てるつもりだ。狸寝入りはバレてるぞ。」

巧と望は怖くてブルブル震えながら寝たふりをしていた。

「すいませんでした!? 愛美露出手先生!?」

「アプロディーテー様!? お許し下さい!?」

巧と望は飛び起きて手を合わせたり頭を地面に打ち付けて謝罪した。

「罰として、今度二人で絡んだヌードモデルにでもやってもらおうか。」

恐るべし! 美術教師の特権!

「そ、そんな!?」

「巧くんと一緒なら・・・いいかな。イヒ。」

巧と望の反応はまちまちだった。

「あの俺の出番は・・・ナイトメアに、ケロベロスのスキルも身に着けたんですが・・・?」

邪念の切実なお願いであった。

「待たせたな。堕天使と毒毒女神。」

愛美露出手には邪念の姿は見えていなかった。

「どうしても、私たちの邪魔をする気ですか?」

「第3次異世界大戦を終わらせたという愛と美の女神を倒せば、我々の名前も世間に知れ渡るというものです。」

サマエルとネヴァンは愛美露出手と戦うつもりだった。

「やるというなら二人同時にかかってこい。一人では相手にならない。」

愛美露出手は余裕があるのか、不敵な笑みを浮かべる。

「ほざくな! ポイズン・ミサイル!」

サマエルの毒がミサイルのように愛美露出手を目掛けて飛んで行く。

「おまえを倒して、私が女神で最強の座に着いてやる! ポイズン・ロケット!」

ネヴァンは毒のロケットを愛美露出手に向けて放つ。

「所詮は堕ち者と不細工か・・・甘いな。」

愛美露出手は一瞬でサマエルとネヴァンの攻撃を見切った。

「いでよ! 愛と美のコスメティックボックス!」

望の化粧箱よりも高価で優美な化粧箱が出現した。

「おまえたちの攻撃などマスカラ一本で十分だ。」

愛美露出手はマスカラを取り出す。

「チョン。」

サマエルの毒ミサイルにマスカラを軽く触れる。

「チョン。」

ネヴァンの毒ロケットにマスカラを軽く触れる。

「これでミサイルとロケットは私のモノだ。」

愛美露出手は毒にマスカラで化粧をし、化粧をした毒を自分の意のままに操ることができる。

「なんだと!? 毒に化粧をしたというのか!?」

「し、信じられない!? 毒が私以外の言うことを聞くなんて!?」

サマエルとネヴァンは愛美露出手の愛と美の化粧スキルに驚愕した。

「どうした? 不思議か? 私にとってはこれぐらい普通なんだがな。これぐらいできなければ戦争など終わらせることができないと思わないか?」

愛美露出手は愛と美の女神アプロディーテーの姿になるまでもなく、人間の教師姿で余裕で対応している。

「クッ!? ここまで差があるものなのか!?」

「同じ女神なのにどうして!?」

サマエルとネヴァンは目の前の愛美露出手の強大なる存在感に恐怖した。

「おまえたちの毒だ。それ、返してやるぞ。ビューティフル・ポイズン!」

黒く毒々しい毒が愛美露出手の掛け声と共に、きれいなお花畑を描きながらサマエルとネヴァンに向けて飛んで行く。

「ギャア!?」

サマエルとネヴァンは自分の放った毒をきれいな毒にされて返され、美しい毒を受けてしまった。

「はあ!? ここはどこだ!? 私は何をやっていたんだ!?」

「アプロディーテー様に手を出すなど許されぬ暴挙! この罪は、この命で償います!」

サマエルとネヴァンは愛と美の女神アプロディーテー派に寝返った。

「よい。これから私に忠誠を誓うのなら許してやろう。」

愛と美の女神は優しさに満ち溢れていた。

「なんと寛大なお言葉! サマエル、アプロディーテー様に忠誠を誓います。」

「この御恩はお忘れしません! 命ある限りアプロディーテー様にお仕え致します。」

サマエルは片膝を着き、ネヴァンは頭を下げ愛と美の女神アプロディーテーに忠誠を誓う。

「キーンコーンカーンコーン!」

その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「さあ、みなさん。午後の授業ですよ。教室に戻りましょう。」

何事もなかったかのように愛美露出手は笑顔で言う。

「はは。アプロディーテー様。」

サマエルとネヴァンはアプロディーテーの言う通り行動しようとする。

「ここでは愛美露出手と呼んでね。今は人間を楽しんでいるの。」

「かしこまりました。愛美露出手様。」

サマエルとネヴァンは愛美露出手のことを愛美露出手と呼ぶことにした。

「あなたたちも固まってないでサッサと教室に戻りなさい。」

愛美露出手は巧と望にも教室に戻ることを促した。

「はい! 失礼します!」

「失礼します! 待ってよ! 巧くん!」

巧と望は愛美露出手から逃げるように去って行った。

「やっぱり美しい私が主役よね。イヒ。」

愛美露出手は強さも美貌も最強だった。


「あの・・・俺の立場は・・・。」

邪念ナイトメア&ケロベロスは忘れ去られ、一人で立ち尽くしていた。

「・・・。」

もっと可哀そうなのは背霊寝であった。毒コンクリート漬けにされて、中庭に放置されたままだった。



本来なら次につながる展開とか、午後の授業を書くのであろうが「グダグダ斜め異世界の女神です(⋈◍>◡<◍)。✧♡」なので好きに書こう! 1話1万字で、あと900字なので適当にショートストーリーを書いてもOKにしよう。



10月のある日の夜の学校のグラウンド。

「花火を打ち上げるわよ!」

愛美露出手は急に花火が見たくなった。

「良いイベントですね! 愛美露出手お姉さま!」

宛名は愛美露出手のイエスマンウーマン女神である。

「花火がきれいに見えるように、そこら辺の送電を遮断しますね!」

恐るべし! 太陽女神天照大神の尼寺須。

「停電したら、みんなが困るわよ!?」

優しい常識人、九兵衛。

「こいつの毒を落とすのが、どうして私の役目なんだ!?」

海と毒の女神ティアマトの手矢的は背霊寝の毒の治癒を任された。

「そんなことを言わないで何とかしてよ!? 背霊寝がいないと私が雑用係をしないといけないのよ・・・。」

現在の雑用係は外野。

「私の毒は自分では取り除けないの。」

迷惑な値盤だった。

「それでは花火を打ち上げます!」

愛美露出手は、とにかく花火が見たかった。

「大変です!? 愛美露出手お姉さま! 季節外れ過ぎて、花火が用意できません!?」

宛名が花火の玉がないと言う。

「あるじゃない。そこに。」

愛美露出手は毒コンクリート漬けの背霊寝を指さす。

「ええ!? これは背霊寝ですよ!?」

尼寺須は背霊寝を可哀そうに思う。

「それが何か? 私が花火が見たいの! 私のためなら背霊寝も喜んで夜空に打ち上げられるでしょう!」

愛美露出手の言うことは絶対である。

「私には分かります! 愛美露出手お姉さまの真意が! 毒コンクリート漬けにされた背霊寝を助けようという広いお心なんですね! 私、感動しました!」

多少の誤解があっても優しい九兵衛。

「その通り! 私は手矢的の負担を減らしてやりたいのだ!」

愛美露出手は自分の寛大さを付け加える。

「ありがとうございます! 手矢的は愛美露出手お姉さまに一生ついて行きます!」

手矢的は愛美露出手に感動する。

「早く背霊寝を毒から出さないと気楽に頼みごとができないわ。外野には申し訳なくて・・・。」

愛美露出手は背霊寝の方が気を使わなくて楽だった。

「私なんぞに気を使ってくれるなんて、愛美露出手お姉さまは、なんて素晴らしい人格をお持ちなんだ!」

外野は目から涙をこぼして感涙している。

「値盤、背霊寝を砲台に詰めてちょうだい。」

愛美露出手は背霊寝を花火の筒に入れるように指示する。

「はい! かしこまりました! 愛美露出手お姉さま!」

値盤もグダグダ女神になったので、愛美露出手に人生を捧げることにした。

「発射!!!」

愛美露出手の号令と共に筒に火がつけられた。



巧の家。

「あ、花火だ!?」

巧は部屋の窓から花火を見つけた。

「本当だ!? こんな寒い時期に花火なんて打ち上げる人がいるんだね。」

望は初冬の花火に疑問を感じた。

「愛美露出手先生だったりして・・・。」

巧、正解。

「まさか・・・さすがの愛美露出手様でも花火を打ち上げるようなバカなことはしないでしょう。イヒ。」

望、不正解。

「そうだね。愛美露出手先生でも花火はしないよね。アッハッハッハ!」

「アッハッハッハ!」

巧と望は仲良しだった。


つづく。

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