第3話 召喚とドリアードとカードキャプチャー
「セイ、知っていることでいいのこの世界は一体どうなったの? それより私はこの世界へ飛ばされて元の世界へ戻れるの?」
セイは聖騎士だから神殿情報や神について詳しくて情報収集の伝手がある。
「主様たち神界から遣わされたカードキャプチャーたちは、二百年前に神によってレノアードに出入りを禁止されました。
レノアードの人々は神界出身のカードキャプチャーたちに頼り切って生活をしていて、神界出身のカードキャプチャーがいなくなった途端荒れました。
魔獣が増えて、浄化できない幻想生物たちが与える自然災害が増えました。
レノアードの人々はカードキャプチャーたちを育てるようにしましたが、なかなか優秀なカードキャプチャーが増えません。
レノアード神殿の聖女様が『忘れ去られた召喚士サモナー』を捕まえました。サモナーが神界におられる主様たちを呼ばれたのです」
ゲームだと思っていたのに、異世界だったと言うオチ。使命はレノアードの魔獣を減らして幻想生物たちをキャプチャーして正常意志を持たせることなのだろうか。
幻想生物は現世に無念のある生き物たちが浄化せずにこの世に留まった結果だと言う。または人々の気持ちが幻想生物を作ったと言う。
ほとんどの意志のない幻想生物たちは月日がたてば自然生滅をするが、SR幻想生物たちは怨念を晴らすか、気持ちを満たすまで消えない。
幻想生物は人に害を与えないが、力の強い幻想生物は獣に乗り移り魔獣になったり、自然に憑依して力を爆発させることもある。
山の噴火や津波や台風は幻想生物のせいだと言われている。
カードに囚われた幻想生物たちは名前をつけられて邪から聖になる。カードの中で力を使い切ると浄化する。
または他のカードの肥やしとなって浄化する。
「そのサモナーはSR以上の高幻想生物なのね。聖女様はよっぽど腕のいいカードキャプチャーなのね」
「ええ。でも主様は聖女様以上の力をお持ちです。
あのアイスドラゴンを従えていますので」
アイスドラゴンの『ドラちゃん』は水色でマルマルしたチビドラゴンだ。ゲームをはじめた最初のビギナーチケットで当てたレジェントだった。
きっとこのドラちゃんを当てたことが、ゲームにのめり込んでしまった理由だろう。確率1%を当てたのだ。それでいっきに無敵ではじまりの村を出発して道すがら出る魔獣を無双して妖精の森で、最初に支給されたSR無カードにSR「魅惑のドリアード」を捕らえた。
いやー、真っ白な肌で上半身裸で蔦のできわどい位置で胸をを隠している姿は、女のサトコが見てもウハウハだ。黄緑色の長い髪の毛に、銀水色のカサブランカの髪飾りをしている。
『幻想世界幻想世界レノアード~カードキャプチャー~』にハマったのは一重にビジュアルの美しい幻想生物たちのカードだった。
もちろんオークとかドアーフとか残念な幻想生物もいるけれど。
もうドリちゃん、美人なのに性格が素晴らしい!
ネーミングが相変わらず残念だけれど、「魅惑のドリアード」のドリーちゃん。かねては庭の植物たちの世話をしてくれる。サトコが冒険に行く時は、立派な戦闘員だ。
ドリーちゃんの戦いはかなりグロい。美しい顔と姿で、カサブランカから出す媚薬で相手を興奮状態にして蔦の触手で相手をクチュクチュの系で搦め手持て余し、相手の生命力を吸いつくしながら絞め殺す。
もちろんカードにキャプチャーしたい幻想生物がいる時は、絞め殺し禁止にしているけれど。
ほんと、幻想生物って不思議だ。性的興奮しちゃうし。
「私の他に神界から来たプレイヤーが他にもいるんだね」
「はい。町のギルドへ行かれるといいと思います。ただプレイヤーによっては箱庭に強い結界を張っていなかった者たちの箱庭は、魔物に侵略されたり人に取られて所有権を失っている者もいるそうです。
その者たちがどれだけインベントリーにお金とアイテムを保管していたかによって、今度の活躍が代わります」
確かに箱庭はゲームプレイヤーが無料でもらえる報酬だった。でも結界を定期的に張らないと魔物やまたは他の現地人たちに土地を略奪される。
結界を張った箱庭は国に税を払わないでいいが、結界を張っていない土地は一年間国に税金を払わないでいると権利を失う。これはゲームを去った人の対策だったんだろう。結界を張るには聖の幻想生物のカードを持っていないといけない。
最初にRクリスタリア水晶精霊のカードが支給される。このRカードをMAXした後も定期的にN幻想生物を与えて生命力を維持しないといけない。
サトコにはセイがいたから二百年の間、結界を維持することができたようだ。
「町には近いうちに行くわ。それよりセイの生命力は大丈夫? メニューバー オン セイ、ステータスオープン」
腕輪に触れたら空中にメニューバーを開いた。所持カードのセイを探して空中に浮かんだセイのカードに触れるとプロフィールが出た。
「!! セイ、生命線が10%切っているじゃないの! どうしてそれを早く言わなかったの。ちょっと待っていて、確かレインボースラムカードを二個持っていたわ」
レインボースラムはHSRでレジェントだったら100%生命力が回復する。
「主様、10%でも私は大丈夫です。それよりパックにカードをあげてください」
サトコはパックのカードのステータスを開いた。パックの生命力はWARNINGサインが出ていた。あんなに無邪気にサトコを出迎えてくれたのに。最後の力が尽きようとしていたんだ。
「我に束縛されし、共に共鳴しようと名で縛られた我が幻想生物、パック、我の元に現れよ」
空中が歪んですぐにパックの姿が現れた。もともと幻想生物は幽霊のように透明だが、カードに囚われた物たちは物理的な存在を持つ。
「主様~、どうしたの?」
「合成、他者の命を糧に生きよ、合成 ライフコンポーシア」
パックの体が光に包まれた。
「主様……ありがと」
泣くはずのない幻想生物のパックの目から涙が流れた気がした。ゲームをしていて表情の変化がなかったけれど、毎日見ていたカードたちには愛情があった。でもいまは生きて目の前にいる幻想生物たちがいとおしかった。
「うん。パック、次はちゃんと私に伝えてね」
「うん、そうする~。次はセイを治して~」
セイにもHSRレインボースラムを与えた。HSRレインボースラムはもともと食材用(他のカードの糧)にするために名前をあげていないから意志がない。
他のカードの生命力を調べた。ほとんどの幻想生物はカードの中で冬眠していて生命力をそれほど失っていなかった。
ドリちゃんの生命力が半分に減っていたからNスライムは三十個あげた。ドリちゃんは庭の世話を定期的にしていたらしい。
Nスライムがなくなったから狩りに行かないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。