第2話 妖精パックと聖騎士と箱庭
眩しい光が消えて目を開けると、サトコの生活する屋敷があった。屋敷のまわりには畑があった。
「主様だ~。会いたかったで~す。もう主様がいなくなっていたと思ったけれど、結界が消えるまで待っていました~」
自分になにがあったか信じられずにボ~っと突っ立っていたサトコの前にプカプカ浮かんだ幼児が現れて話しかけた。
耳が尖っていて緑の目と緑の髪の毛のソバカスのある男の子。妖精パックが話しかけた。
「パック?」
「は~い。そうだよ。あれ? 主様、大きくなった?」
サトコは自分の体を見た。先月あった『深海の魔女狩り』の四千位以内に入った時の褒美でもらったセクシーな魔女風ドレスだ。そしてお気に入りの『闇に落とされた聖騎士』で百位以内に入ってもらったホーリーマントを着ている。
『闇に落とされた聖騎士』イベントは、その月の給料の三分の一も課金した。
聖騎士様(レジェント)が王道のイケメンでどうしても彼が欲しかった。本当は闇の落とされた時の黒髪聖騎士様ラブだった。けれどカードに囚われてサトコの愛情と言う名の、Nカードを千枚あげてMAXに強化して、レジェント鏡カード(これはある上限の課金をした者にくれる褒美だ)を使ってハイレジェント(HL)にした後は、キラキラ虹色のエフェクトの背景に金髪の聖騎士様になった。そして彼がパックの横にいた。
もうあまりにもイケメン過ぎて鼻血が出そうだった。
「主様、この身をお救いください、ありがとうございます。幻想世界に生まれ変わった身ですが、まだレノアードに住む人々の役にたてるようになるとは感謝の言葉もありません
レノアード神殿に仕えし聖騎士、今後主様を守る盾になり主様の前に立つ敵を退ける剣になることをここに誓う。
主様、どうぞわたくし、しもべに名を与えてくださいませ」
カードを手に入れた時にイケメンのセクシーボイスで言われてもうドキドキが止まらなかった。名前は「セイ」ほんと自分のネーミングのなさに泣ける。
その時にもらった景品のマントの下には、ありえないメロンが二つあった。別に現実世界でも日本人平均サイズだったから別に胸をこだわってアバーターを作ってないし。
「ちょっと、私って、どんな見た目になっているの?
ステータス オープン! って、ボタンどこ?」
画像のメニューバーはどうやって開けばいいの? 多分、人がいたら頭が狂ったと思われるかもしれないけれど、「開けーゴマー」「オープン ステータス」「であえーヘルプ ボタン」「グーグル博士 降臨」ブツブツ唱えた。
「主様。ステータスを見る時は腕輪に触れてステータス オープンと唱えればいいですよ」
「えっ? キャー、セイ様だー。うわー、三次元万歳。セイって背が高いと知っていたけれど、ほんと背が高いねえ」
「主様。お帰りなさいませ。主様が箱庭に来られないで二百年たちました。
神界からレノアードへ遣わされたカードキャプチャーたちが二百年前に消えたと聞いた時には、もう二度と主様と会えないと思いましたが、私の力が消える日まで主様の愛した箱庭は守ろうと結界を張っておりました。
もうそろそろ私の力がなくなる前にこうして主様が戻ってくださって、あらためてレノアード神に感謝しています」
ヤバい。二次元でもヨダレものだったのに、三次元では鼻血放出ものだ。
慌てながら左手の腕輪に触れてギルドカードを取り出す。
『サトコ レベル176。ギルドランクA
職業・カードキャプチャー
MP・1200
HP・998
所持カード・58枚
出身地・神界』
大まかにこんなことが書かれている。ラックとか面倒で意味が分からないかったから消したからだ。
しょせんゲームをしているけれど、男性と違ってややこしい設定も説明も飛ばしてプレーしていた。
ギルドカードに自分のミニチュア姿形が出た。アバーター製作の時に自分に似せて作ったから体系がセクシーになっていたけれど、親しみのある顔だ。
やっぱりアリサのようにピンクの髪と紫の目とかダメだ。黒髪黒目が一番落ち着く。
「あ、ありがと。セイ。私、ゲームしようとしたらいきなりここにいたの。どうしてか分からないし、今後どうなるか分からないのよ。
セイたちはなにか知らない?」
「ぼく~。主様に言われたように畑とバルルンの木の世話しているだけ~。バルルンの木、大きくなりすぎたから早くカード作って?」
幻想生物を捕らえて囚えるカードは町のショップでも売っているが、箱庭を持つゲームプレイヤーは自分で育てて加工する。幻想生物が囚われていないカードは『無カード』と言われて、カードキャプチャー相手に売られる。
『無カード』にもレベルがあり、Nノーマル<Rレア<SRスペシャルレア<Lレジェント。
無カードと同様に幻想生物も、現物魔獣にも同じようにランクがある。ただ幻想生物カードは同じ種類を合成してHにすることができる。そして意識を持つ生物はMAXされた生物かSR以上の幻想生物だけだ。
カードと同等以上なければ幻想生物は捕まえることができない。N無カードではRランク幻想生物を捕まえられない。
「パック待って。ちょっといま状況整理しているところだから。
それよりパックはしっかり庭の整理をしてくれてありがとう。後でパルルンの木を一緒に見ようね。
その前に他の仲間たちを呼んでもらえる。あっ、カードの中にいる仲間は私が起こすからいいけれど」
「は~い。あっ、でも起きている仲間はほとんどいないよ。みんな、生命ゲージがゼロに近くなる前に眠りについちゃった。
僕はもともと省エネのNランク生物だったし、主様からたっくさんNスライムもらって、SRまで育ててもらったから眠らないでよかったんだ~」
『妖精パック』森に住むいたずら好きな妖精で、ゲームをはじめてスライムの次に出てくる幻想生物だ。普通誰も好んでパックを育てようとは思わない。
簡単に捕まえられるパックは、他の幻想生物たちの肥やしになる。でもサトコはソバカス顔のパックを気に入って、Nカードに何個もキャプチャーした。
レベルをMAXにした三十六枚のNカードの合成して、それぞれの段階でまたスライムNカードをあげて強化して最終的にSRランクまでした。
こんなにN幻想生物に手間暇をかけるプレイヤーはいないだろう。パック自身攻撃や防御の力が弱い。雑魚扱いの幻想生物だ。
でもみんな気づいていないかもしれないけれど、パックのスキルは内政にいい。スキルは「お手伝い」
現代でも逸話に出てくる妖精パックはいたずら好きだ。小さい男の子が誰かに構ってもらいたいからいたずらする。
お手伝いを頼むと喜んでしてくれる。だからSRパックは意思疎通ができて箱庭でサトコのアシスタントをしてくれている。
箱庭で庭の水掛けなどパックがしてくれる。
パックは箱庭のことはほとんど把握している。パタパタとアトリエのある建物の方へ飛んで行った。
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