expiration date

 大晦日の夜のこと。


長池ながいけさんに髪を切っていただいたおかげで、さっぱりした気分で新年を迎えられそうですねえ。

 大掃除もしましたし、これで完璧…… おや?」


 目井めいさんはキッチンにあるそれに目をやって、ゾッとした。

「こ、この未開封の一斤食パン…… いつからありましたっけ? ま、まさか……」

 消費期限を確かめる。

 「12月31日」と記載されていた。

 時計を確かめる。

 23:59:30だった。




「あと25秒、モグッ、まだ3分の2以上、モグ、残って……

 あと15秒、モムモム、まだ半分、ンッ。

 急げばっ、ハッ、間に合う…… ウグッ」




「今年もみんなで初詣に行くの。楽しみね。

 あら、こんな時間に電話。

 げ、目井さん。えー、嫌な予感…… 去年は何もなかったから安心してたのに。

 嫌よ? 久しぶりに新年早々電話で変なこと言われる役は嫌よ?

 でもきっと、出ないといけないのよね……


 はい、身代みしろです。

 え? そんなわけで消費期限が切れる前に食パン一斤を大急ぎで丸かじりしてた?

 そしたら、喉に詰まらせちゃった?

 自分で何とかできたから無事だったけど、念のため今日は一日家で休む?

 そう、分かったわ。お大事にね。


 ……はあ」

 

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