the seven wonders
「
「どうされたんですか?」
「いえ、大したことじゃないんですが…… 私の母校の小学校にある七不思議って知ってますか?」
「ああ、知ってますよ。小学生の患者様達に教えていただきました。なかなか怖いですよね。『いじめっ子が夜の8時に体育館倉庫の前に行くと扉が勝手に開いてバスケットボールをたくさんぶつけられる』ですとか、『体罰をする先生はトイレの天井に吸い込まれる』ですとかね」
「そうですそうです! で、私大人になってから結構ホラーとか怖いのが好きになったじゃないですか」
「そうですね」
「七不思議も当時は怖くて仕方なかったんですが、先日ふと思い出しまして。懐かしいなーっと浸ってたんですが、何故かどうしても七つ目の不思議だけが思い出せなかったんです。それで目井さんなら知ってるんじゃないかと思いまして」
「知ってますよー。あれが一番怖いですね。聞いた瞬間思わず『助けてくれええええええ私が悪かったああああああ』と叫んでいました」
「それは冗談でしょ?」
「それは冗談です。怖かったのは本当です」
「ともかく、どんな内容なんですか?」
「――――という内容です」
「え?」
「ですから、――――です」
「……もう一度お願いします」
「――――」
「……」
「私の言ったことが聞こえず、口形も靄のようにぼんやりと見えて読み取れなかったはずです」
「ど、どうして分かるんですか」
「この七不思議の七つ目のお話はそういうものだからです。個人差もありますが、このお話の内容は大体12歳以下のお子さんしか認識できないのです。ちょうど小学6年生くらいまで、ということですね。
それ以上の年齢の方は、このお話を聞こうとしても、先程体験していただいたように聞き取れなくなってしまいます。文章として書かれたものを見ても、まるで知らない外国語のように理解できません。その年齢に達する前に七つ目を知った人も、その年齢になると内容を綺麗さっぱり忘れ去ってしまうのです」
「じゃあ、七つ目は小学生以下くらいの頃までしか享受できないってこと?」
「そうですね。あなたはもうとうに成人されてしまったので、残念ながら再び七つ目のお話に出会うことはできないのです……」
「……目井さん、今日私が来た時、『小学校のことなら自分じゃなくて小学校の関係者に訊けばいいんじゃないか?』って思いませんでした?」
「んー、ちょっと思いました」
「訊いたんですよ。ここ来る前。最初は知り合いの小学校の先生に。その子もそこの学校出身なので。でも『そう言えば私も忘れちゃった』って言われました。
次に、親戚の小学生の子に訊いてみたんです。そうしたら、知ってるからと教えようとしてくれたんですが…… どうしても聞こえないわ、文字で書いてもらっても読めないわで……
自分が変になったのかと思って、それでここに来たんです。でも、それで問題なかったんですね?」
「そうです。もともとがそういうものなので」
「あなたが覚えてるのは、色々なものの影響を受けにくい体質だから? それとも12歳以下だから?」
「ふふっ、どちらだと思います?」
「両方あり得るのが怖いよなあ…… あーあ、なんかね」
「はい?」
「子どもの頃は『早く大人になりたい』って思ってたけど、いざ大人になると『子どもに戻りたい』って思うことって結構あるなって。もっと楽しんでおけば良かったなとか……」
「はは、皆さん結構、ないものねだりなんですよね」
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