忘れ物対処法
「どうしたの? 通報してほしいの?」
一時間目の数学の授業がもうすぐ始まるという時に、普段忘れ物ばかりしている隣の席の友人がいきなり「おい、これ見て見て!」と言いながらシャツを脱いで上半身を見せつけようとしてきたので、私はスマホ片手に尋ねた。
「ち、違うよやめて… そういうことじゃなくて、こういうことだよ!」
友人はバッとシャツを放り投げた。スマホの緊急通報のボタンを押しかけていた私はハッとした。
ノートや教科書、シャーペンや消しゴム、三角定規や分度器。
一瞬、そういったものが彼の上半身にびっしりと貼りついていたように見えたから。
けど、貼りついていたわけじゃなかった。
それらの物品すべての上に、まるでハリガネムシのような黒くて細長いものが何匹もいるように見えた。
ハリガネムシなら頭とおしりに当たるであろう部分は、すべて彼の皮膚の中に食い込んでいて、その食い込まれた箇所の皮膚はほんのりと赤くなっていた。
黒い糸でぎちぎちに縫い付けられていたんだ。
「ほら、背中側も!」
得意げな声と共に向けられた背中にも、一面に文房具や単語帳やらが同じ色の糸で、微動することすら許されないかのようにきつく縫合されていた。
「どうしたのそれ?」
「いや、僕って忘れ物多いでしょ? だから
なるほど、流石はあの目井さんだ。だけど…
言いにくかったけど、私は言った。
「君さ、それ… どうやって取り外すの?」
「あ…」
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