名医の目井さん
PURIN
かゆい
頭がかゆい。
かゆい。
かゆい。
あーかゆい。
かゆいよー。急にかゆくなったよー。
壁にこすりつけてもかゆいし氷当てて冷やしてもかゆいし机の角に打ちつけてもかゆいし頭だけで逆立ちしてみてもかゆいよー。
なんとかしてー。
耐えられないよ、この皮膚の奥の方から上がってくるようなかゆみ。
かくと悪化するからかいちゃいけないともいうけどじゃあどうすりゃいいんだよー。
おー、かゆいことかゆいこと。
かゆいかゆい言い過ぎて「かゆい」って何なのか分かんなくなってきた。
かゆいってどういう意味だっけ。どんな字書くんだっけ。
でもそんなこと考えてる間でさえかゆいから結局忘れられない。
かゆいかゆい。かゆいよー。
だから
目井さんは、町で有名なお医者さんだ。
そしたら目井さんはいつもの笑顔で、「かゆい原因を取り除いちゃえばいいんですよ」と言って、やり方を教えてくれた。
なるほど、あったまいいー!
家に帰って、すぐに机からナイフを取り出して、こめかみに刺した。
ぷすっ、
ああああああ! 痛い痛い痛いよおおおおお!
でも我慢する。頑張る。
ナイフを刺したまま顔の方へと引っ張っていく。
ナイフがおでこを横切るのと同時に、噴水のように吹き出す血が目の上に見えた。
ううう。こういうのが見えるとますます痛くなる! でももう、止められないんだよ!
顔を通り過ぎて反対側のこめかみ、後ろ頭、そして出発点のこめかみへとぐるりと戻っていく。
やっぱり痛い。中から出て来た液体で頭が濡れて、べとべとになっていく。でももうすぐ終わる!
こうして、なんとか頭皮に切り込みを入れ終えた。
頭はまだかゆみを訴えている。
でも、それももう終わりだ。だって…
脳天の髪を掴んで、頭皮をヘルメットのようにぱかっとはずす。
かゆみは、嘘のように消えた。
かゆかった頭皮をとっぱらったから、もうかゆくない。
目井さんの教えてくれたとおりだ! やったー!
ところが、今度は別の問題が起こった。
頭が痛い。
痛い。
痛い。
あー痛い。
痛いよ痛いよ痛い痛い。
今度は急に何なんだ。
ああそうか、体の一部だった頭皮を剥がしちゃったから痛いのか。
じゃあまた被せよう。
もう一度頭皮をもとあったように被り直したら、痛みは嘘のようになくなった。
良かった。これで今度こそ大丈夫。
ではなかった。
再び頭に戻った頭皮は、またもやかゆくなりだした。
慌てて外したら、また痛い。
慌てて被ると、またかゆい。
かゆい、痛い、かゆい、痛い、かゆい、痛い、かゆい、痛い…
結局、他に解決策も見つからないまま、今でも一日中頭皮を外したり被ったり外したり被ったりしている。
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