閑話休題

 世間は再び『吸血鬼事件』の再来により騒がしさを取り戻していた。血だけが抜かれた女子高生の死体の出現頻度はひたすらに高まっていた。それは数年前の出来事をそっくりそのまま真似ているようで、人々は不思議な気味の悪さに興奮しているようだった。「吸血鬼を見たの!」という嘘の目撃証言で情報は交錯し、噂が噂を呼び、嘘が嘘を招き、大人達は困惑するしかなかった。罪深い少女達は奈落の底へ堕ちていく。裁かれるかの如く死体は増えていく一方。恐怖と共に増幅する興味関心。


「吸血鬼は本当にいるのだろうか?」


 誰もそんな真相など本当は欲してなどいないというのに。


 紅い月が満ちるまで、あと――?

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