マサオジャンプ
「駄菓子屋で100円をいかに有効に使うか」それは子供にとって死活問題であった。
ビックカツは食べたいし、三色アイスは食べたいし、ガチャガチャはやりたいし、フーセンガムは噛みたいし…
俺が必ず買うのが冷凍の「あんずボー」と「よっちゃんいか」だった。今考えると妊婦並みに酸っぱいものが好きなガキだったな。
そして余った金でゲームをするのだ。
ゲームコーナーには小さな筐体が並んでいた。ゲームは一回20円。メンテナンスはしてなくて「ボタンがきかないよー」とのり子に言うと「アンタ壊したね!」と濡衣を着せられる。ボタンの付き方もデタラメで、筐体の壁にレバーとボタンが付いていたりした。
正直ゲームをやるような環境ではなかったが「20円だから良いか。本当にゲームをやろうと思ったら100円かかるんだし」という客の寛容さにゲームコーナーは支えられていた。
デタラメなのは筐体だけではなく、「マリオブラザーズ」をよく見ると「マサオジャンプ」になっていたし、ドンキーコングは黄緑と黄色を基調としたドギツい色であった。
「アレは一体何だったの?」と仲良くなったゲーセン経営をしていたオヤジに後で聞くと「基盤をいじって偽者を作れた時代があったんだ。偽物は本物の値段の1/8、自分でやれればタダだった。偽物ってわかるのは良心的な方だぞ?」との事。のり子もあくどく儲けようとしたんだなぁ、と。でも「マサオジャンプ」も「偽物ドンキーコング」もやってる人を見た事ないし、撤去されなかった。
結局偽物をやる人がいなかったから、あくどく儲けようとしたのり子は導入費を回収できず、撤去も出来なかったんじゃないかな。
今、あの頃に心残りがあるとするなら、「マサオの弟の名前を何で調べなかったんだろう?」という事だ。
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