ワンスアポンアタイムインゲーセン

@yokuwakaran

駄菓子屋

母親がパチンコに行く時、後ろめたさがあったんだろうか、普段はくれなかったが小遣いをくれた。

小遣いと言っても100円くらいなので、今考えると大した金額じゃない。パチンコであれば一分ともたず消えた金なのだ。

その金を握りしめて駄菓子屋に行ったのがゲームとの出会いだった。


駄菓子屋の化粧の濃い女主人は子供達に「のり子」、店の名前は「のり子屋」と呼ばれていた。理由は本人を見れば「淡谷のり子みたいだから」とわかる。

のり子は子供が嫌いだった。何を買おうか考えていると「突っ立ってるんじゃないよ!」と子供に怒鳴っていた。そのくせ、親子連れが来ると「ぼうや、何が欲しいの~」と猫なで声でしゃべる。

他の駄菓子屋がなかった訳ではない。

駄菓子屋はあと3件あったが、

1件はペット屋の中に駄菓子屋があり、今考えると信じられないが、鳥やハツカネズミと一緒に駄菓子が売られていた。

子供ながらに「ちょっと汚い」と思っていたが大人になってから考えると言語道断だ。

もう2件は駅前にあり品数も豊富。しかし最大の問題は「学区が交わる所にあった」という事だ。

今は「何で他の小学校の生徒とあんなに仲が悪かったんだろう?どうして縄張り意識があんなに強かったんだろう?」と思うが、その頃はそれが当たり前だったし、他校の生徒に喧嘩で負けるという事は「自分の小学校が他の小学校に負ける」という大事件だったのだ。喧嘩に自信がない俺は「その駄菓子屋に行く自信がない」と言う事だった。


俺はのり子が嫌いであった。大嫌いだった。嫌いではあったが「これだけ子供が嫌いな人間でも駄菓子屋で働かなくちゃいけないんだ、自分がつきたい職業って大人になっても、つけないんだな」「あんだけ偉そうなのり子が親を連れてきた子供にはペコペコとしながら愛想をふりまく。世の中には強者と弱者がいるんだな」と駄菓子屋で社会の厳しさと仕組みを学んでいた。


最初にゲームコーナーに行ったのは「のり子と関わりたくなかったから」だった。



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