最終話:これで終わりじゃないんかい! 

そうしてクラブ紹介は大成功を収め、なんと新入生部員を確保した。 

「見て!15名も入ったのよ!」

 私は長机に広げた入部希望の用紙の束を、高々と巧達に見せる。

 圭ちゃんと美鳥は嬉しそうに拍手した。

「作戦大成功だね!」

「これも皆真琴ちゃんのおかげよ、ねえ、須藤君?」


 巧は、ふん、と眼鏡のつるを片手で上げた。

「まあ、そうと言えない事もない。ただ、まだ問題が残っている」

「こ、今度は一体何よ」

「真琴、お前だ、お前!リーディング部員だと言うのにちっとも本を読んでないだろう!今度は簡単で読みやすい本を薦めたのに。どうせ漫画しか読んでなかったんだろう!?」

「出た。マンガ差別。本を読む奴ほどマンガはくだらないとかのたまうのよね」

「馬鹿者、差別はお前の方だ!僕は漫画も結構読んでいる。日本の漫画は高いストーリー性と画力を誇る日本の素晴らしい文化だ!それが分かるのも本をたくさん読んでその良さも知っているからこそ比較できるのだ!漫画、本のどちらの良さも分かるのは双方熟知してこそ!中途半端に漫画を読んできただけで本をロクに読んでこなかったお前に読書の批判はおろか漫画を語るのもおこがましい!お前みたいな中途半端な奴は本と漫画、どちらにとっても迷惑だ!!」

「言ったわねー!!なんであんたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」

「悔しかったら本を読んでみろ!」

「読んでやろうじゃないの!本ぐらい小学生だって読めるんだから!」

 美鳥と圭ちゃんは傍らでのんびりと図書新聞の編集をしている。

「須藤君、本当に人を乗せるのが上手いわねえ」

「藤堂さん、本当に乗せられるのが上手いよねえ~」


「ふん。たかが一冊二冊読んだだけで満足されてはかなわん。しかもお前は栄えあるリーディング部の部員、一般と同じじゃ意味がない。お前に目標をくれてやろう。年間百冊読破!最終目標はトルストイ作;戦争と平和だ!!」

 そう言って巧はどん!とぶ厚い本を数冊目の前に置いた。

「ひゃ、百冊!? そんなの無理に決まってるでしょ、しかも何このぶ厚い本! 文字だって小さいじゃない、最低!! 」


私と巧の怒声、なだめる圭ちゃんと美鳥の声、そうして柱時計の柔らかな鐘の音が、図書館内に響いていた__。


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