第14話本を読まない奴はどうすれば読むのか?
本を読まない男女にどうやって読ませるか。
ぴんと思いついた。
「圭ちゃんと美鳥がベタベタ本に触ったらいいのよ!」
当の二人がびっくりした顔をする。
「はい?」
「へ?」
「あんた達人気があるんだから、校内ポスターにでも出てさ、私または僕はこの本が好きでーすとかやったら、同じ本を借りたがる生徒が出てくると思うんだけど」
「アイドル使った税務署のポスターみたいだな。にっこり笑って、税金払ってね、みたいな」と巧。
「アイドル使った消防署のポスターみたいだね。にっこり笑って、火の元安全、みたいなね」と圭ちゃん。
「・・・あんた達やけに詳しいのね」
「あまりに馬鹿馬鹿しいからな」
「僕は、まあ、それなりに」
「まあ、いいわよ。そんな感じで本をアピールするの!本に全く興味がなかった人達でも、あんた達に憧れてる人は興味を持つかもしれないでしょ」
ふ~む、と巧が腕を組む。
「しかし、写真部に頼んだとしても、すぐにポスターはできないしな」
「真琴ちゃん、私それは嫌よ。ポスターなんて恥ずかしいわ」
「僕は全く問題ないけどね」
「しょうがないわね~。・・じゃあ、図書新聞でアピールしたら?圭ちゃんと美鳥の本紹介コーナーを作るの。もちろん、紹介するのは易しいのにしてね!」
「まあ・・それぐらいなら」と美鳥がしぶしぶ頷く。
「じゃあ、今新聞作っている最中だから、早速入れ替えるか。真琴、ほんとは嫌だが紹介する本を選別してくれ」
「巧、嫌だがは余計でしょ」
そうしてそれから一週間ほどかけ、図書館にある本の配置換えと、図書新聞の記事の差し替えを行った。記事の本は私がほとんどフィーリングで選別し、巧達がその中で内容も良いと推薦する物を選んで、紹介した。圭ちゃんと美鳥の‘リーディング部員お勧めコーナー’には、美鳥には内緒でこっそり彼女の特に可愛い写真を載せておいた。
新聞の配布方法も私の提案で変更した。今まで新聞は各クラスの担任の先生に渡し、生徒全員に配ってもらっていたらしいが、それでは宣伝が弱いと思い、部員自らが新聞を持ってクラスを訪ねる事にした。もちろんアイドル部員を使わない手はなく、男子が多い理系クラスには私と美鳥で、女子が多い文系クラスには巧と圭ちゃんが赴いて配り歩いた。理系クラスでは、男子の痛いまでの視線が美鳥に注がれていた。
そうよね~。あんた達、文系の美鳥とはそうそうあえないもんね~。私が彼女のわき腹をこずくと、美鳥は顔を赤くしながらも、新聞を手にして
「今回はこの本がお勧めです。読んで下さいね」
とにっこり笑った。
何人の男子が思わず笑い返そうとした事か。
私は笑いをこらえながらも、これで読者はちょっと確保したわね、と思った。
これまた美鳥には内緒で、部員募集のポスターと称して、圭ちゃんと美鳥が本を持ったポスターも廊下のあちこちに張り出した。本を持つっていう‘絵’に皆を慣れさせる、という作戦だ。昼休み中、私と巧はこっそり物陰から、ポスターに熱い視線を送る男女が多いのを確かめた。
そうして、地味~な作業だが宣伝が効いたのか、 少しずつだが、興味を持って本を借りる人達も増えてきた。閑古鳥が鳴いていた図書館も、昼休みには生徒がやって来るようになった。
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