第13話図書のイメチェン作戦

「じゃ、そんなわけで、本を借りてもらうために、図書館のイメチェンするわよ」

私は振り返って皆を見た。

「ライトノベルって学校の図書館にはほとんどない、と。ま、いいわ。ないならしょうがない。でも次の予算会議の時にはたくさんぶんどってきてよ。本買わなきゃいけないんだから。

・・で、ライトノベルはあるだけ全部出して、あと、現代小説で、おしゃれなカバーの文庫版があればそれを出す。あとは内容ね。皆が読みたいって思う本を前面に置く事。それで、まず・・・」

ぐるりと本棚を見渡す。

「はい、まず伝記は候補から消えます」

「消えるの!?」巧、圭ちゃん、美鳥が一斉に悲鳴のような声を出す。

「消えるの。自分だけで手一杯だし、自分の事に一番興味があるのに、何で他人の人生なんか知らなきゃいけないのよ」

 圭ちゃんが唖然とした顔でぽつりと言う。

「そう来るんだ・・・」

「どう来るのよ。それに、私トラウマになってて。小学生の時に、希望者で本を買う、チラシみたいな物が配られたでしょ。その本って難しそうな文学作品と偉人伝しかなくって。ほら、キュリー夫人とかエジソンとか。偉い人なんだろうけど、学校が薦めるのがそれだったら、余計読みたくなくなっちゃったのよね」

「天邪鬼・・・」

「それはないわね。ま、そういうわけで、他のジャンルね!女子は恋愛小説だったら読むんじゃない?」

そこで美鳥が本当に残念そうにため息をついた。

「残念ながらないのよ、ほとんど」

「そうなの?・・・先生のチョイスって悪すぎよね。じゃあ、男女ともどういうのがいいと思う?」

「これはどうだ?時代小説や歴史小説」

巧が近くの本棚から数冊出してきた。

「はあ~!?時代小説?江戸時代とかが舞台の?嫌よ、何でそんな古いの読まなきゃいけないの?TVで時代劇好きな人は読むかもしれないけど、同年代にそんな人ほとんどいないんじゃないの?」

「まあ、そうかもねえ。読んだら面白いんだけど、読もうって気にはならないかもね」と圭ちゃん。

「大体、歴史小説ってなによ?」

と私は渡された外国の本とやらをぱらぱらめくってみる。最初のページで既に引っかかった。

「何、これ!?何でこんなに登場人物がいるの!?しかも何、この名前の長さ!覚えられないわよ!はい、却下」

「それ、藤堂さんの好みじゃ・・」

「ないわね。理由は時代小説と一緒よ。読む人いるの?難しい内容だわキャラクター多すぎるわだと、大変そうって感じがして、最初から読む気なくすわよ」

まあ・・・そうかもねえ・・、と圭ちゃんはがっかりした感じで本を戻す。

「全く、嘆かわしいな。じゃあこれはどうだ。SFと推理小説。冒険、ファンタジー。ここらへんなら男女関係なく読めるだろう」

 巧が、やれやれといった態度で、本棚からさらに10冊ほど持ってきた。私はぱらぱらと中身を見る。

「ま、ここらへんなら皆読もうって思うでしょ。じゃ、いいわ、本のビジュアルはさっき言った通り、おしゃれで薄い物を選ぶ。ジャンルは今言ったSF,推理小説、冒険小説、ファンタジーを推す事。図書館を模様替えして今いった本を前面に置いて皆の興味を引く。図書新聞にも今までの本はなくして、その手の本を紹介する。いいわね?」

 しぶしぶな巧、興味津々な圭ちゃんと美鳥と、態度は分かれたが、三人ともとりあえず賛成したようだ。

 図書館のイメージはこれで良し。あとは、そういった本を手にとってもらわなきゃいけないんだよね・・・。

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