第12話問題、はっけーん

正面にある本棚に置かれている本を左右、上下と見渡す。

 やっぱりこんな感じか。

 次の本棚に向かうと、巧が数冊本を手に取り物色していた。よお、と言う彼をあっさり無視して、置かれている本をざっと見た。試しに一冊手に取り、ぱらぱら、と中を見る。

やっぱり。

「図書館にある本って苦手なんだよね~」

「なんだよ、いきなり」巧が、先程無視したせいもあってか、憮然とした様子で聞き返す。

 私は手に取っていた本を彼の前に突きつけた。

「時代錯誤な重々しいカバーに難しそうな題名が書いていて、中を開くと細かい文字ばっかりで、挿絵も何にもないし。やけに大きいし重いし、持って帰るのも大変だけど、そもそも読んでて肩凝るって言うの!」

「ふん! そんなの気合がたるんどる」

「あんたはどこの親父よ。思ったんだけど、偉い作品を読んで欲しいったって、本を読まなきゃ意味ないじゃない。本を読もうって思っても、あらすじを見て読むものなの? 普通見た目が大事でしょ。私、初めての漫画を買うときだってそうだもん。 あらすじなんて後ろにちょこっとしか書いてないんだから。表紙を見て、絵が好みだったら買う」

「お前、かなり博打打ってるんだな」

「だってカバーかかってるし。内容わからないじゃない。あ、でも本はカバーかかってないか。でも、中身読んだら楽しみなくなるでしょ?で、もし、漫画みたいな、又はファッション雑誌みたいなおしゃれな表紙で、軽くって薄くって持ち運び便利な本だったら読もうかなって思うんじゃない?他に、ライトノベルとか、漫画感覚で読めそうだし」

「お前の考えなんか100年古い!」

「巧、100年は行き過ぎだよ」隣の本棚から、ひょいと圭ちゃんが顔を出す。

「それぐらい古いって事だ。世の中の偉い人はとっくにそんな事を考えていて今は洒落た文庫本もたくさん出ている! 」

「なんだ。そうなの。それならそうと言ってよ。だったらそういう本をもっと図書館に置いたらいいのに」

「お前の言う手の本も少しはあるがな。大体、本屋で簡単に買える本が図書館にあったらここの利用価値がないだろう?内容は高尚、値段は高くて学生には手の届かない、そんな本があるのが学校図書館なのだ」

「だからあんたは親父かっ・・・て何回言わせんのよ!だから何でもきっかけって必要じゃない。本だって最初からつまんないって思ってて一冊も読まなかったら何にもならないよね。まずは何か本を一冊手にとってもらわなきゃいけないんじゃない?」

 どうしたのかしら、と長い髪を揺らして、ひょっこり美鳥も顔を出す。私は構わず続けて、

「ま、そーゆう事で、第一目標は本を読ませる事なんじゃない?文学作品なんて、いきなりそんな難しいもの、本好きでない限り読まないわよ。読書に馴れてもらう、本を借りてもらう、最初はこれでいいわね?」

 巧は、少し考えていたが、結局折れた。

「・・・ま、それでいいだろう」

「へえ。藤堂さんって結構戦略タイプなんだね。もっと専制君主タイプかと思ったけど。手当たり次第に人をつかまえて、強制的に本を渡し、読まねば殺してしまおう、ホトトギス、みたいな」

「圭ちゃん、駄目よ、真琴ちゃんにだって人情ってものがあるのよ」

「なんかずれてるわよ、美鳥!!」


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