第10話 いきなりの問題発覚。
わー、相変わらずすごいねえー、とほのぼのと圭ちゃんと美鳥は拍手している。
た、巧の説教慣れしてる!
こんな凄い演説しょっちゅう聞いているんじゃないでしょうね!?
「ふ、ふ~ん」
巧の迫力に気圧されそうに、いや、あきれていたのかは分からないが、私はやっとの事で声を出した。
「言ってる事は偉いわね。でも、成果出てるの? 」
ぴくり、と拳を振り上げたまま彼は固まった。
圭ちゃんと美鳥も沈黙している。
私は構わず続けた。
「巧がリーディング部立ち上げてから本を読む人が増えたとは思わないけど。図書館だってほとんど利用する人いないでしょ?大体この部が活動しているのか自体皆知らないと思うわよ」
何!? と固まっていた巧が顔を上げる。
「失礼な!毎日真面目に図書館運営しているのに!」
「知らないわよ」
「皆に本に興味を持ってもらう為、図書新聞も発行して名作を紹介しているのに!」
「誰も読んだりしないわよ。大体、何!?あの紹介の本。名作か何だか知らないけど、難しそうだわ地味~な内容だわ、紹介記事読んだだけで読む気失せるわよ」
「へえ、藤堂さん、意外と真面目に記事読んでるんだね」にっこり笑って圭ちゃんが言う。
「だって巧が読めって五月蠅いから。・・・と、とにかくっ、巧は昔っから私にこれいいから読め読めって強引に本薦めるけど、本好きな人にはいいかもしれないけど、私には難しいのばかりで興味の起きようがないし、それに強制されたら誰だって面白くなくなるわよ」
図星を指されたような顔をした巧は、何か言いかけようとしたが、口をつぐんだ。
場が急にしん、とする。
ちょっと言い過ぎたかな。いや、でもいつもはこの5倍巧に言われているんだし。
沈黙を破ったのは美鳥だった。
「やっぱり、そうだったのね・・。薄々感じてはいたんだけど。なんで頑張ってるのに本を読もうっていう人が増えないのかなって。部員も増えないし。でも真面目にやってさえいれば、必ず分かってくれる人は出てくるって、私、信じてたのよ・・・」
がっくりと首をたれ、今にも消え入りそうな声でつぶやく彼女に、私は慌てた。
「だ、大丈夫よ美鳥、そんなに落ち込まなくても!!ちょっとやり方が間違ってただけで!美鳥が悪いわけじゃないんだから!方法をもっと親しみやすいものに変えたら、本を読もうかなって人も出てくるわよ」
圭ちゃんがわーっと拍手をする。
「さすがだね、藤堂さん!もう既にいい案考えてるみたい。いや、藤堂さんならちょっと脅しをかければ皆本を読むと思うよ♪」
「何よそれ。・・・もしかして圭ちゃんって毒舌家?」
「ご名答♪」
そこで静かだった巧が、はっと何かを思い出したように勢い良く立ち上がり、私を指差した。
「そう、そこで、お前!!」
はい?
「本嫌いのお前なら、本を読まない者の気持ちもわかるだろう。そこで、部長として、お前に任務を授ける!栄えあるリーディング部部員として、皆に読書を広める事!そして4月に入学してくる新一年生から部員を確保する事だ!」
え、ええええ!? 何その展開!?入部したばっかりなのに、何か責任重くなってない!?
「藤堂さんなら鬼に金棒だね♪」
「嬉しい、真琴ちゃん、私も頑張るから」
「じゃあ、今日はこのへんでお開きだな」
え、ちょっと待ってよ!?
一人呆気に取られた私を残して、三人はよかったよかったと、席を立ち帰り支度を始める。
図書館に置かれた柱時計が、一度、ボーンと鳴り、18時30分の時を告げた。
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