第8話 Reading部のメンバー

‘臨時閉館’の札がかかった図書館のスライドドアをカラカラと開ける。

今日は部活の特別ミーティングだとかで、司書の先生から許可をもらって閉館にさせてもらったそうだ。すっかり巧が私物化している。

図書貸し出し窓口の前を通り、部屋の奥に入る。

入るとすぐ左手前に新刊案内の棚、右手奥に雑誌の棚とソファがある。正面には長机が10個ほど置かれていて、さらにその奥には本棚が幾つか並んでいた。

結構広いスペースだ。人がほとんどいないせいか、余計そう思う。広い窓からは日がさんさんとふりそそぎ、窓辺に置かれた青々としたポトスが風に葉を揺らしている。

校舎とは別の時間が流れているみたいだ。

特にあの二人のせいで。


私は、右端の窓辺にある長机に座っている男女に目をやった。

長机に向き合って座り、それぞれ静かに読書している男女。リーディング部の「すごい顔ぶれ」と言われ、何故か二人とも私と同じクラスの同級生だ。


男子は深沢圭一。

通称「圭ちゃん」、別名「窓辺の貴公子」。

薄茶色の髪と瞳、端正な顔立ちに細身の体つきは、確かに窓辺で本を読む絵が様になる。小さい頃にイギリスにいたせいか、レディーファーストを心得ていて女子に親切なのも好印象。情緒も安定していて、いつもニコニコ、不機嫌な所を見た事がない。

ルックス抜群、性格は社交的で紳士的とくれば女子の人気がないわけがない。バレンタインデーには、福袋かと見まごうほど大きな紙袋に満杯のチョコレートをもらっている。巧にも彼の性格の10分の1でも見習って欲しいもんだわ。


一方女子は、松島美鳥。

小柄で華奢な体に白い肌、ぱっちりとした大きく潤んだ瞳が特徴的な美少女。柔らかくカールのかかった長い髪が、窓辺から差し込んだ光があたって茶色にキラキラと輝いている。

誰にでも優しく温厚で、男子は勿論女子にも人気がある。おっとりしていて、見ているだけでこちらも和むと言うか、ほっこりした気持ちにさせてくれるのだ。学校内の男子ランキング、彼女にしたい&運動部のマネージャーに来て欲しい女子ナンバーワン。実は私と仲が良い。



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