オシャレは勉強よりも難しい

 黒髪、眼鏡、チェックシャツをズボンにイン。

 東大生にそんなイメージを持ってない?


 ……うん、あながち間違ってないかも。

 ただし、それは1年生の頃だけね。


 たしかに1年生の黒髪率・眼鏡率は非常に高い。

 興味があるなら、Googleで「東大 入学式」と画像検索してみるといい。真っ黒だから。

 数少ない茶髪の人が、山の中にある一本の紅葉みたいに目立つ。


 でもね、時間が経つにつれ、多くの学生が少しずつオシャレすることを覚えていく。


 なぜかって?

 そりゃオシャレをする動機って、色恋沙汰が一番でしょう。

 もちろん全員がそうとは言わないけれど。


 もしかしたら、受験勉強に全力を尽くしつつ華やかな青春を謳歌してきた人も、いるかもしれない。

 でも、ほとんどの東大生は高校時代にそんなあでやかな体験をしていない(※)。断言してもいい。(※オブラートに包んでおります。察して。)


 まあ、前述の通り自分の興味があることにのめり込むタイプが多いからね。そこに受験勉強まで加わると、それ以上のことに割くリソースが無いのも仕方ないよね。

 さらに言うなら、男子校や女子校の出身者がけっこう多い。(筆者の友人達だけで考えても半分以上は男子校/女子校の出身者だった。)


 そんな人達が、受験のかせから解かれて、いきなり“大学生”っていう自由の象徴みたいな肩書きを与えられたら……。

 そりゃまあ色恋沙汰で盛り上がるのは仕方ないってもんだよね。


 ということで、黒髪眼鏡くん(ちゃん)は、少しずつオシャレを覚えていく。

 近所の床屋で切っていた髪を、ちょっと遠い美容院で切ったり。

 レンズの大きな眼鏡を、オシャレな眼鏡に変えたり、いっそコンタクトにしたり。

 駒場から渋谷まで歩いて、マルイあたりでちょっと高い服を買ったり。

 機能性しか考えてないようなリュックサックから、機能美を備えたリュックサックに変えたり。(基本的に機能性は捨てない。)


 そうやって、秋頃になると、ちょっとずつキャンパスの風景が変わっていく。


 ということで、駒場にいる1〜2年生は「あ、こいつ東大生だ」と一目でわかるけれど、本郷の3年生以上はなかなか見分けがつかなくなる。

 社会に適応するっていうのは、こういうことなのかもしれないなあ。

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