希望した学科に行けるかどうかは成績次第

 けっこう有名な話だけど、東大には“進学振分ふりわけ制度”というものがある。

 略して“進振しんふり”。


 前述の通り、前期課程はみんな教養学部で、後期課程からそれぞれの学部に分かれる。

 でも、その進学先の決め方がシビアで、志望する学科を選ぶのは2年生前半までの成績順。点数が高い人から順に選べるから、成績が悪ければ悪いほど進学先の選択肢が減っていくわけ。これが進振。


 ただし例外があって、特定の類から特定の学部へは進学しやすくなっている。

 理科三類から医学部、文科一類から法学部、文科二類から経済学部。この3つは、単位さえ取れば、その学部に進学できる。

 特に文科二類は、理科三類や文科一類と比べて講義が楽らしくて、“猫文二ねこぶんに”なんて呼ばれたりもする。いつも寝てるって意味かな。まあ、きっと殺伐とした理科一類か理科二類の人が羨ましがって付けたんだろうけど。


 話を戻そうか。

 進振は点数順に希望の学部が埋まっていくから、まさにサバイバル。

 行きたい学科がもし人気のあるところなら、もう大変。入試のとき以上に勉強しなきゃいけない。


 でも、一人で全部の授業を完璧にこなすのは、かなり大変。

 授業のスピードは早いし、内容も難しいしで、予習復習しないとすぐ置いていかれる。


 そこで、さすが東大と言うべきか、試験対策にも伝統がある。

 クラスで分担してノートを作るっていう習慣が代々受け継がれていて、その名も“試験対策プリント”、通称シケプリ。

 科目毎に担当を決めて、自分の担当科目についてはきっちりノートを作って、みんなに配布する。で、自分がちゃんと提供すれば、他の人が作ったノートを受け取ることができる。そんな仕組み。

 人によっては、教官の講義よりよっぽどわかりやすくて、もうお前が授業やってよって感じにもなる。


 点数を競うライバルでありながら、協力し合うという奇妙な関係性だね。


 ちなみに僕はあんまり協調性が無くて、担当分だけ最低限のノートを取って、あんまり他の人のシケプリにも頼らなかった。

 なんか、妙に意地になってたんだよね。なんかズルしてるみたいじゃんって。

 僕が希望していた数学科は、そんなに点数が高くなくても行けたから(つまり、あんまり人気がなかった)、そこまで必死に点数を稼がなくてもよかったってのもあるけど。


 あ、もしこれから東大に行く受験生が見ていたら、先輩から一つアドバイス。

 入学前にクラス毎のオリエンテーションで行く合宿は参加した方がいいよ。

 そこでシケプリの担当科目を決めるらしいんだけど、合宿に行かないと面倒くさい科目の担当にされちゃうから。(体験談)



 ええと、いろいろ書いたけど、個人的には進振制度は悪くないと思う。

 高校生が将来○○を勉強したい、なんて思っても、大学で勉強しているうちにいくらでも変わるからね。

 ある程度、自分の向き不向きや興味の方向性が把握できてから、細かな学科を選ぶっていうのは、理に適っているんじゃないかな、と思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る