第3話 やれば出来るのは真実だ

 ラブラブな生活に突入して2ヶ月が過ぎた。


 そして検査で。

『妊娠1ヶ月』

 とまああっさり診断された。


 ちなみに妊娠1ヶ月とは種付けの日から1ヶ月ではない。

 最終月経からの計算だ。

 つまり計算すると、結婚即種付け成功くらいのペースだ。

 早すぎるだろう私。


 折角の愛と肉欲の日々は、僅か1月で終わってしまった。

 まあ妊娠中でも行為は出来るけどさ、無理がきかないだろうしね。

 それでもまーくんは喜んでくれる。


「おめでとう、これからは大事にしなきゃな」

 いつも大事にしてくれているくせに。


 まーくんはまだまだ成長期だ。

 結婚してまだ2月なのに、少し身長が高くなった気がするし腕や胸の筋肉も少しついたような気がする。

 それでも相変わらず私好みなのだが。


 さて、妊娠と言うか生殖は義務なので当然の行為なのだが、これは少々悪い面もある。

 私とまーくんの繁殖指定人数は3人。

 健康で遺伝子に異常がない子供を3人産んだ翌日が私達の寿命の終わる日になる。

 なので寿命を最大限延ばすなら、1年11ヶ月で妊娠してその後出産してを3回繰り返すのが理想だ。


 現にそう努力している連中もいるらしい。

 表立ってそう公言するとセンター送りになるけれど。


 それにこの街区には避妊具は存在しない。

 街区の方針からして当たり前の話だが。

 確実な避妊方法は、致さない事しか無い。


 噂によると過去何人もの先人が、怪しい避妊方法を試して失敗した。

 詳しくは言わないがコーラとかジャンプとか最後は外とか色々だ。

 中にはそれで妊娠不可能になりセンター送りになったカップルもいたという。

 それじゃ本末転倒だろう。


 かと言って妊娠中に無理してわざと流産するのも問題だ。

 万が一それで子供が出来ない状態になると、やっぱり私とまーくんはセンター送り。


 それに出来てしまうとそれなりに対象には愛情を感じてしまうのだ。

 人によって感じ方は違うだろうからあえて本能だとは言わないけれど。


 まあいずれにせよ、私はまーくんの寿命を早くも2年近く縮めてしまった訳だ。

 まーくんに大変申し訳ない。


「ごめんね、まーくん」

「何で」


 まーくんは軽くそう言ってくれる。


「大好きなカナ姉との子供が出来たんだ。本当にありがとう」


 またカナ姉に戻っている。

 でも本音を言うとその呼び方もなかなか感じるのだよ。

 だから今は文句を言わない。


「でもこれでまーくんの寿命も短くなったでしょ。申し訳なくて」

「それなら僕がカナ姉に謝るべきだろう。カナ姉が大好きだから我慢できないし」


 そう言ってまーくんはまた赤くなる。

 結婚済みでする事はしているのに。

 そんな処はまだまだお子様だ。

 なにせ古代ならまだ彼は最初の義務教育学校中。

 事実お子様なのだ。


 一方私は古代だと義務教育後の高等教育中。

 それでも私はまーくんが大好きだし頼ってもいる。

 時々つい姉貴風を吹かせてしまうけれど。


 でも一応言っておこう。


「カナ姉じゃなくてカナって呼んで」

 そう言った言葉と裏腹に思い切り彼を抱きしめる。


 まだ私より華奢で身長も小さい身体。

 大人に成長するには寿命が足りない。

 でもだからこそより愛しい、私のまーくん。


 こんな少年に気を使わせるなんて、大人の女としてまだまだだな、私。

 よし、気を取り直していこう。


 私達の選択肢なんてほとんど無い。

 けれどその中で出来るだけ楽しもう。

 そう決心して抱いた腕を緩める。


「じゃあ今日は美味しいもの食べに行こ。いい」

 まーくんは頷いてくれた。


◇◇◇


 その日の夜、まーくんとひとしきり愛し合って眠った後。

 私は不思議な夢を見た。


 古代、最初の義務境域学校に半ズボンで通うまーくん。

 そして高等教育の学校に通う紺色の制服姿の私。


 2人は近所に住む幼馴染。

 そしてある日私は勉強を教えるという名目でまーくんを自宅に誘う。


 勿論勉強はあくまで名目だ。

 でも最初はあくまで名目通り。


 そして何回目かの私の自室で。

 ついにまーくんを押し倒してしまう私。

 そのままあれしてこれしてあれ取って。

 やる事を全てやりまくって。


 最後に泣き崩れるまーくんとセンター送りになる私。


 うん、私に限っては今の時代に生まれて正解だったのかもしれない。

 そしてまーくんはきっとどの時代でも不憫なんだろう。

 その分可愛がってあげないとな。

 精一杯の愛情と感謝を込めて。

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