6

==一話を短くして表示する。ただし、話の前後を無視しているので、もし、負荷なく見たい方は、通常版をご覧ください==


 木村は何かを言い捨てようとしたが、そのまま鼻息荒く部屋出て行った。途中、いろんな人とぶつかりそうになっては、無粋に喧嘩を売っていた。

「まったく、粋とかそういうものを知らぬ男は嫌ね」



 詩乃は内儀に連れられて梅若の部屋に行った。内儀が声をかけるが音がしない。障子を上げれば、向こう向きに頭を押さえまるまって寝ている女郎がいた。


「梅若?」

 詩乃がそれを制して中に入り、梅若のそばに座る。

 顔をしかめたままでいる。首筋に手をやれば冷たさと、無言が伝わってくる。手首をつかめば、腕はすでに固い。


「梅若さんと最後に話したのは?」

「昨夜でしたね、頭が痛すぎてと、」

 詩乃が梅若の頭を触る。左こめかみの上あたりに少しだけこぶを感じる。


「内儀さん、梅若さん、転んだか、何かで頭を打ったりしました?」

「え? ……、えぇ、四、五日前でしたか、廊下でお客さんと出合い頭にぶつかりそうになって、よろけた瞬間柱に頭を打ったとか、」

「……そんなことよくあるんですか?」


「そんなこと? 出会い頭で? いいえぇ、今まで一度も、ただ、あんたも会ったでしょ、あの方が、何が気に入らないって、その日最初の藤若の相手は自分でないと気が済まないと言って、でもね、もうその時にはいい時間で、藤若が今晩の相手をもう入れたところだったんですよ。それに怒って、部屋まで行ったけれど、相手が、ご自分より上だと判ると、怒って、まぁそれは粗野な方でね、……それが原因てことではないでしょ?」


「……身内は、居ました?」

「……いいえ……そう、送りの準備をしますね」

 詩乃は手を合わせた。



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