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==一話を短くして表示する。ただし、話の前後を無視しているので、もし、負荷なく見たい方は、通常版をご覧ください==


 布団が敷かれ、藤若が腰巻をまいた状態で俯せになっていた。確かに、鉄の匂いがする。


 詩乃は道行を脱ぎ、持ってきていた箱を開けて灸を出し、手際よくそれに火をつけて藤若の腰に置いていく。


「な、何をしている、」

「サワリがひどいのは、血のめぐりが悪いからなんですよ。それの緩和として、腰と足に灸を据えるんです。あとは、足の血のめぐりをよくする按摩あんまを施す。すると、だいぶ良くなる」

 詩乃は灸を腰と足に据えた後、窓際に香を焚いた。


「それは何の香どす?」

 女郎の鈴和香すずわかがお邪魔します。と申し訳なく聞いてきた。

「鈴和香、香が気に入ったと言ってたけど、あちきはわかりんすというて、」


「これは西洋菊の仲間でカミツレと言ってね、精神安定になるんだよ……鈴和香さん? あんたあんまり眠れてないようだから、これをあげるよ。三日分。いい? 急須にこれを入れて飲むの、最初はその独特な味がイヤかもしれないけど、安定剤、薬だと思って、ぬるくなってから飲みな、この藤若のバカみたいに熱いうちに飲んで舌を火傷しちゃ、意味ないからね。濃さは好みだけど、ちょっとずつ味見をしながら、ほどいいころ合いを見つけな、一応、三袋渡すけど、液が出るのは、各二回ぐらいかな、まぁ、もったいないからって何度も飲む人もいるけど、味がしなくなったら袋を破って、陰干しして、乾いたら、火鉢に少しくべれば香りが立つはず。それだけでも効果はあると思う」


「これを飲んだら眠れますか?」

「血色の悪さは冷えだろうからね、それはショウガも入っている特製だから、体も温まるよ。それから、今から藤若にするやつは、自分でも何とかできるだろうから、覚えておくといい、いい?」


 詩乃は藤若の腰巻をふくらはぎまでまくり、「ふくらはぎのこの辺り、承間しょうかんというところだけどね、老廃物の蓄積を防止するんだ。老廃物がたまっていると、かなり痛い」


「いった―い」

 藤若が手を伸ばし床を叩く。

「動くな、お灸が落ちる。火事になったら死罪だぞ」

 詩乃が言うと、藤若がうなりを上げて布団の縁を握る。

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