第6話

 西のシティ。そこは日本に残った数少ない都市!

 他国の新兵器を受けかつて首都があった場所はなにも残ってはいない。いや、その部分を中心に、日本の形は大きく変わっていた。


 西のシティは奇跡的に無事だったが、年が過ぎ行くうち、かつての地名は意味を無くし、人々は西のシティと呼ぶようになった。


 電気があり、水道が整備されており、人々は田畑を耕し復興を目指していた。


 だがこの街には違和感が蔓延している。熱心に宗教に勤しみ、師を崇めていた。いやこの時代、何かにすがらなければやっていけないのかもしれない。


 その宗教を『月法会』といった。

 月連を始祖とし、東南アジア起因の宗教から枝分かれした末端宗派だ。戦前、日本はそういった宗派が多数存在した。

 新興宗教と呼ばれ大半がビジネスの延長としていた、人の信仰心を利用した汚い大人の宗教なのだ。

 だが、当時の日本政府、国民はそれを危惧しなかった。日本には宗教自由のルールがあり、騙される方が悪かった。

 それは今も昔も変わらない。


 彼らは困難を修行とし、それを乗り越え魂の浄化を目指すのだ。

 聞くに聞けば立派だが、蓋を開ければ上層部が儲かる仕組みになっている。それを言えば、人の集まりに金は必要だと口を揃えて言う。不安を煽り、金で安心を買う。

 本当に心から神を仏を信じる事は、1人でも出来るのだ。

 我々は違う、必ずそう言うだろう。しかし目に見えぬものを信じれる綺麗な心は、悪しき者に騙されてしまうのだ。


 このシティも例外ではない。

 まして新興宗教に支配されている。彼らは支配されている自覚はない。それは決してこの『月法会』が良い宗派だからではない。長い年月を経て、洗脳が完成されたのだ。


 街の中心にある山。そこが総本山、人々は定期的に参拝に上がる。

 その建物の中、事務所の奥。そこに次なる悪党いた。

 ハガ兄とよばれる男。年の程は40を、こえたあたり。背はたかく、髪はすっきりしており、胡散臭いメガネをしている。

「今日も、がっぽがっぽ儲かったでぇ」

 お供え物と称し人々から物資食料を巻き上げ、贅沢な暮らしをしているのだ。

「ハガ兄!東の方から一台トラックがこっちに向かってるらしい」

「お?珍しいやん。ここ数年誰も寄り付かんかったのに」

「どうします?」

「ただの旅人かなんかやったらほっといたらええ、通行証なかったら入らんしな。そこそこ荷物積んでるんやったら、勧誘して会員にさせたらえんちゃうか?」

「わかりました」

「ナリムラちゃん行ってってや」

「わかりました」

 ナリムラと呼ばれた男もメガネの中年男性。ハガ共々胡散臭い顔つきである。

「あ、せやせや。用心棒をな、1人雇てん。連れて行き」

「スミに座ってるマントの人ですか?」

「そうや、ゼロはん言うてな。めっちゃ強いから、変な奴でも安心やで。ほなゼロはん、頼みますわ」

 ゼロと呼ばれた男は立ち上がり部屋を出て行った。


 悪党やならず者が多い中、腕の立つ者の中には用心棒として食べていく者が少なからず存在した。このゼロもまたその1人。

 少なからずこの月法会にいい気はしていないが、そこら辺の村集落より報酬が良い分特に気にかけていなかった。


「ゼロさん、待ってください」

 ナリムラは小走りでゼロの後ろに着く。シティの入り口へ向かっていく。

「ゼロさんはなんで用心棒なんかやってはるんですか?」

「俺は女を抱くのがこれ以上ない喜びの男。ハガは俺に女を提供してくれる。それ以上の理由がない」

「なるほどです。たしかに、ウチの会員は可愛い娘多いですもんね」

「しかしあてがわれるのは割と年の行ったハズレばかり。それにはこの俺も不満を隠せない」

 イキのいい娘は大抵ハガがかこってしまうためゼロにはオコボレしか当たらない。

 それでも、女をもとめ彷徨うより手っ取り早いのである。

「ゼロさんてどんなプレイが好きなんすか?」

「俺は嫌がる女が従順になって行く瞬間が好きな男。特にプレイ終了後に掃除させるのが1番興奮する」

「あ、少しわかります」

 2人は会話を弾ませ入り口までやってきた。


 そこにマッスル達の乗ったトラックが止められている。

 ココナは長時間のドライブに疲れ助手席で眠っている。

 入り口見張りがマッスルに何か問いかけていた。

「貴様通行証はないのか?」

 マッスルは哀しい顔で頷いた。

「ではシティへ入るのは許可出来ないな、ここは選ばれた会員にのみ許される地、聖地なのだ」

 マッスルは困った顔で見張りを見る。

「シュウちゃんお疲れ様。後は俺が話をするよ」

「ナリムラさん、お疲れ様です。では後はお願いします」

 見ると荷台に結構荷物を積んでる。これはいいカモだ。

「君、降りて話をしないか?」

 ナリムラがそういうと、マッスルは大人しくトラックから降りる。

「この街に用事があるのか?」

 マッスルは首を振る。

「君さえ良ければ我々は君たちを歓迎する準備がある」

 マッスルは首を傾ける。

「君、神さまを信じているかい?」

 マッスルは首を縦に振る。

 マッスルが崇める神は筋肉の神。孤高の筋肉神。

 しかし彼らの神は違う、仏と呼びその生まれ変わりが彼らの始祖、月連なる人と信じていた。その月連も終末戦争以前に没しており、今はハガが彼らを束ねている。ハガには口寄の能力があり、時折月連の言葉を皆に伝えることができる。最もそれはハガの演技だが、人は皆一心に信じて疑わなかった。

「待て、この男は貴様等の神を信じはしない、俺はそれがわかる男」

 ゼロはマッスルの筋肉を見て気がついた。鍛え抜かれたデカすぎる筋肉。それを維持するには強靭な精神が必要だ。そしてそのツヤ、日々手入れをしてオイルを塗りこまなければここまで美しくテカったりはしない。ゼロは自分の本能が反応している事に気がつく。

 そしてマントを取り自身の体を披露した。

 細マッチョ。それを表現するのに最も相応しい言葉。

 ゼロもまたマッスルと同じく筋肉を鍛えてきた男。


「ん?あれはーー!!」

 ゼロは助手席で眠る少女を見つけた。細い腕、白い肌、綺麗な髪、発達しきっていない女の身体。どストライク。ゼロのある筋肉が膨張し硬くなって行く。

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