神光国の大使館の大使様(仮)
@blackpearl
序章
私は、遠い東洋の小さな島国、大和国の花の都の出身である。
花の都は、大和国の都市であり、東西南北の方角に四君子の名を付け、その住処に自身の花を植えて、誰の何処の者と分かりやすくしていた為に言われたのだ。
北倉家に使える家臣、北夢城咲敬と同じく、北の桜君の女房、藤乃の双子の妹として、生を受け、双子の兄と共に家族の愛を受けながら、すくすくと育った。
だが、父の北夢城咲敬が突然死し、寡婦となった母の藤乃に、母方の祖母の兄の息子から求婚がやって来る。
父が大好きだった母は、その求婚を丁寧にお断りを入れたが、相手は執拗に求婚の返事を求め続けた。
やがて、母は私達を無理して乳母にも任せないで、一人で育てていたのがたたり、床に伏せてしまった。
最後になる前の母の一言は、今でも忘れていない。
大好きな母の言葉を忘れてはいけないから、復唱をして、忘れずに覚えている。
そして、翌日の明朝に母の室へ入ると、母は冷たくなり、涙の跡が一筋を流していた。
色々とお忙しい中、母の葬儀が終わると、無神経な男からの妹を妾にしたいとの旨を綴った求婚の文が私達の元に届く。
矢継ぎ早に届く、求婚の文がどん、どんと酷い事柄になり、最後には、必ず、兄を消してしまえば、お前は俺の元に来るしかない、となった。
此処まで来てしまい、兄の周囲に毒が調合された物が増え、私達の為に残ってくださった使用人たちが私達のせいで被害に遭い、床に伏せてしまった。
その大変な時期にやって来た求婚の文の事柄に、私達は息を飲んだ。
大切な使用人を助けて欲しいのなら、俺の元に。
今、毒に侵され苦しんでいる家族と同じ以上に大切な彼らを見捨てるわけにはいかない。
そう、決心した兄は、兄と私の立場を逆転させ、それぞれの人生を歩む事を考えた。
兄は妹の私として、女性の姿に成りすまし、憎き男の妾として、輿を上げる。
私は兄として、男性の姿に似せるように成りすまし、大切な家族の思い出のある大和国を離れ、1人旅に出た。
1人の王太子に出会うまでは・・・。
神光国の大使館の大使様(仮) @blackpearl
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