第8話 魔王襲来

 僕はヘイジ。異世界の勇者にして高校生。なんだけど…


 広間に戻った僕らが目にしたのは、禍々しいオーラを纏い、不吉な仮面を被った黒ずくめの男だった。

「我は魔王ファントム。この世界の理を超えしもの。」不吉な男はそう名乗った。


 見れば分かるレベルで典型的な魔王です本当にありがとうございました。

 と、いうわけで魔王城に行く前に魔王が現れた。多分ゲームに例えるなら始まりから3つ目~4つ目くらいのダンジョンで現れたくらいだろうか。所謂死亡確定イベント的なものかもしれない。


「我の世界樹の支配を解くとは、人間の癖になかなかやりよる。貴様ら、我の部下にならぬか。」魔王は僕らに和解の道を示したけど、

「いやならないから」

「なる訳ないじゃないですか」

「なってたまるか!!」

「貴様が先代勇者を殺したくせに何を言っておる。寝言は寝ていえ。」

 僕ら4人の意思は一つだった。「ほう…。やはり我に歯向かうというのか。小癪な奴らだ。ならば倒せるうちにその芽をつぶさせてもらおうか。」そういった魔王は杖を構え、皆臨戦態勢になった。魔王は杖の先から青白い光弾を放つ。プレタが盾でその光弾を受けると、盾は凍り付いた。魔王は光弾をいくつも放ち続ける。僕は避けつつ魔王に接近する機会を窺う。だが好機はなかなか訪れない。圧倒的なその球数に、「魔法攻撃無効な癖に自分は使い放題か」と思わず呟く。ソノットも避けつつ弓を放つが、これも

 魔王が放つ光弾に弾かれ魔王には届かない。

「フハハハ…いつまでも防戦一方では我を倒せんぞ。さて、いつまで貴様らが持つかな…」魔王は嘲う。だがソノットが弓の連射を放ち、魔王もそれを弾こうと複数光弾を同時に放ったことで、隙ができた。背後を取り、僕は魔王に斬撃を叩き込む。が、それは空を切った。「遅い」その声に振り向こうとしたときには魔王は至近距離で光弾を放っていた。避ける間もなく被弾し、僕は吹き飛ばされる。背中が凍り付いていた。体の熱と体力が徐々に奪われていく感覚がする。ノアが僕に駆け寄り、治癒魔法をかけようとするが…

「回復とは小賢しい。そんなことはさせん。」魔王は杖から青白い光線を放つ。最後の力を振り絞り、剣を杖代わりにして立ち上がり、ノアを庇う。そして僕は意識を失った。




 目覚めた僕はベッドの上にいた。いつもの時間で、いつもの部屋だ。だけど夢のように思える。それでも僕は今までの僕のように、朝食を食べ、身支度をして学校へ向かった。

 クラスに入ると、拓斗がいた。「おはよう平次」と声をかけられ、「おはよう拓斗」といつも通りの挨拶を交わす。だけど、そのいつも通りが、ものすごく感慨深く愛おしい。そしていつも通り退屈な授業を受け、放課後、僕は拓斗に事の顛末を話した。

「開始早々魔王登場とかきつすぎるだろ。ゲームだったらゲーム機ぶん投げてる。」拓斗はそう苦笑した。

「ゲームだったらよかったんだけどね…。結局、まだどっちが現実で、どっちが夢か分かったもんじゃ無いからなぁ…。」そう言葉を続けた。

「まだ悩んでるのかそれ。」拓斗は再び苦笑した。

「まあ、あの世界がきっと、作られた世界であることはわかっているんだけど、この世界だって僕らの与り知らぬ誰かが作った世界に過ぎないこと可能性を、否定できたわけじゃない。」僕は言葉を続ける。

「昔の偉い人は『世界は5分前に始まったのかもしれない』なんて言ってるしな。ともかく、結局、自分が信じたいものを信じればいいんじゃねーの?神のみぞ知る領域だし」拓斗は彼らしくない台詞を言った。でも意外とそんな気もする。


「そういえばさあ、その夢?とやらにこの世界の物を持ち込めないのか?」拓斗に訊かれ、

「うーん、多分無理なんじゃないかな、確か、異世界に魂だけ転送されるって最初に女神様とやらから説明されたし。」と答えた。

「やっぱ無理か~。いい方法思いついたんだけどよ~。」拓斗は残念そうに言った。

「…そのいい方法とやら、教えてくれない?できるかどうかは分からんけど。」そう僕は言うと、拓斗はその妙案を話してくれた。




 拓斗の妙案を聞き出した後、拓斗と別れ、僕は寄り道しようと思ったが真っ直ぐ家に帰った。気のせいか誰かに追われている気がした。自分の部屋に戻った時、「ヘイジ様…」と呼びかけられ、気づけば最初に女神と会った場所にいた。

「ヘイジ様、申し訳ございません。至急イマジニアに向かってください。」女神クロノは真剣な面持ちでそう告げた。

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