第8話 群青の夜

 その夜。

 「……ん?ん?」

 僕は、左手がまぶしくて目を覚ました。

 「!!」

 ミサンガは、本当に光っていた。

 「マリー……」

 僕は光るミサンガを見て、少しばかり考えた……。

 プゥラスカーは、ただ、マリーが僕を好きで、でも、会えないという事を言うだけだった。

 マリーは何もしゃべらなかった。

 「……」

 友達が、僕を呼んでいる気がした。

 夏の空は、まるで星が降ってきそうなくらいに、明るくて、澄み切っていた。

 僕は、三日月が照らす夏の夜へ駆け出してた。

 つきあかりで昼のように明るいのだが、影は真っ暗で、それが夜だって感じさせた。

 本当に、星が降ってきそうなくらいに輝いていて、まるで、マリーが連想ゲームの時に描いた絵のようだった。

 僕はとにかく走った。

 まるで、時間が迫っているかのように、ミサンガが輝きを徐々に失っていくからだ……。

 「!」

 僕は、トンネルまで走ってきた時に、何やら獣の声がしたように思った。

 初めて、そのトンネルが恐ろしいと思ったが、僕はマリーにあいたいという気持ちの方が勝っていた。

 「っ!こ、こわくなんかないさ!!!!!!」

 僕は、にかくダッシュでトンネルの中を走る!

 今思うと、ライトもなにもつけずに、抜けた先の光を頼って歩いた異世界トンネル……。

 一目明かりがつくと、トンネルの傷や、模様が不気味に見えた。

 そうして、トンネルの中だから、反射した光が徐々に輝きを失っていく事を、より強く感じて、僕はさらに、早く、早く、とにかく走るだけだった。

 マリーが思いと魔法を込めてくれた……魔法のミサンガ。

 多分、魔法が切れてしまう……。僕とマリーの絆が、本当になくなってしまうように思えた。

 「そ、そんなのだめだ~!!!!」

 僕は、トンネルを抜けた。

 「う、うわ!!!」

 トンネルを抜けると、その先には、お月様に照らされるマリーがいた。

 その高原の夜空は、群青の夜空に星々の輝きが美しく、本物の……群青色の夜だった。

 「あれ?なんで夜空……?」

 視界から、マリーが消えている事に気が付いた。

 僕は格好悪く、転んでしまったらしい。

 「っててて……」

 「!ウェイダー」

 「マリー!久しぶり!といっても、一日ぶりだけど……」

 体をおこして、マリーを見ようとした。

 「だめ、だめ。きちゃだめだよ!」

 「……え?」

 「待ちなさい!」

 僕が、マリー見ると……マリーの後ろで、大きな鎌を構えたプゥラスカーが立っていた。

 プゥラスカーは僕を見た途端、見たこともないような色をした液体をマリーにかけた。

 「!」

 それ以上に、僕は驚いた。

 僕がさっき転んだ理由は、右の足がカチカチに凍ってしまったのだ。

 「なに……これ?」

 「ウェイダー……ここへきてしまったのね」

 「……」

 マリーは、まるで気絶したかのように動かない。

 「マリーに何をしたの!?」

 「一時的な封印よ」

 「……封印?」

 「マリーは魔女じゃないの。それは知っているかしら?」

 「う、うん……なんとなくだけど」

 「マリーはもともと、人だったの。だけど……」

 「?」

 「今は、一応、現代社会でいうと、雪女の部類に属する生物ね」

 「…………あぁ……だから、こんなにきれいだったのか」

 「え?」

 「僕は、映像の中でしか、雪を見たことないけど……雪がきっと、人の形をしたら、マリーみたいだなって、おもったよ」

 「!!ウェルダー、貴方まさか、眠いの!?」

 「うん?あれ……なんでだろう。なんか、涼しくて、心地よいや」

 「…………」

 プゥラスカーは、マリーにかけた液体を僕にもかけた。

 「……」

 「ウェルダー、口を開けて!」

 「?」

 「はやく!!!」

 僕は、強引に液体を飲まされた。

 「!く、くは!あぁ」

 苦くて、とてつもなく体が温まる何かを飲んだ僕は、四つん這いになってせき込んだ。

 「な、なにするんだよ!プゥラスカー!」

 「ごめんなさい。もう、魔具では抑えれないのね……」

 「!」

 「一回だけ、魔法を使うから」

 「え?」

 プゥラスカーは鎌を捨て、杖を持つ。

 どこから杖を出したのか?あんなに大きかった鎌はどこへやったのか?

 僕はそれがなんだか手品のように見えたが……。

 「!」

 杖で大地をたたくと、プゥラスカーの足元に魔方陣が現れた!!

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