第7話 7日目
翌日、いつもと同じく、異世界トンネルを抜けてゆく……。
昨日の事をマリーに正直に言おう。
僕がそう決心して、マリーの家を訪れると……。
「!」
「……」
プゥラスカーが、どこか寂しそうに立っていた。
「ウェイダー……」
「プゥラスカー?マリーは?」
「…………」
プゥラスカーは、言葉を選ぶようにして……。
「ごめんなさい。もう、マリーは貴方に会えないわ」
「え!?」
「……」
あまりにも突然の別れに、僕は、その場に立っていられなかった。
「ど、どうして?」
「マリーは……もう、貴方と遊べないの」
「な、なんで?」
「マリーは、貴方が大好きだから」
「え!?」
僕は、彼女が魔女だから、きっと僕の見えないところで僕のやってしまった事を見ていたのだと、思った。
「マリー!マリー!!!」
「……」
どんなに呼んでも、マリーの家は静まり返ったまま……。
ただ沈黙を保ったままだった。
「ごめんよ!僕が悪かったんだ。あんなこと、しなければ……もう一回、もう一回遊ぼうよ!マリー!!!」
「?」
「…………」
マリーの家の扉の鍵は固くしまったまま、マリーがその日出てくることはなかった。
*
僕は、とぼとぼと家路についた。
こんな日に限って、野球の兄ちゃんや、茶髪の姉ちゃんには出会わず、まっすぐ家についた。
「……」
よりによって、今日は母さんが病院に夜勤の日だった。
父さんはテレビで野球を見ながら、発泡酒をのんでいた。
「お父さん……」
「太郎?どうした?」
「……」
僕は、今日の事をお父さんに話してみた。
父さんは、野球を見るのをやめて、僕に教えてくれた。
「太郎……世の中にある事は、大体は、どうでもいいことなんだ」
「え?」
「でも、他人様からすれば、それはとても重要な事で、ゆずれない物なのかもしれないんだ」
「…………」
「俺の家は、子供を孤児院からもらって育てるしか、子供を授かる方法はなかったんだ。親戚や心無い人達はやめろと言ったが、俺とお母さんは、太郎や、太郎と血がつながらない、お兄ちゃんや、お姉ちゃん達と出会えて、それが大切な事になったんだ」
「!」
「太郎。どこへ行っても、何をしても、これだけは変わらない事なんだよ。マリーちゃんと、二人でミサンガの話を二人でしたのかい?マリーちゃんには、謝った声だって、聞こえなかったんじゃないのかい?プゥラスカーさんの話を聞いたのは、本当に真摯に聞いたのかい?」
「…………」
「太郎。言葉は美しい……。もう一度、マリーちゃんと話してごらん?」
「……うん」
「よし!それじゃぁ飯にしようか!」
「うん!!!」
その時、ミサンガがきらりと光ったような気がした……。
お父さんと僕は野球を見ながらご飯を食べた。
父さんは、漁が明日はお休みなので、たらふく発泡酒を飲んでいるうちに、眠ってしまった。
僕は、父さんにつられるかのように眠気を感じたので、お風呂に入って眠ってしまう事にした…………。
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