第5話 魔法のミサンガ

 今日も僕はマリー達に会いに、異世界トンネルをぬけていく!

 トンネルに名前を付けるほどに、マリーと遊ぶのは楽しかった。

 明るいうちは、マリーと遊び、夜八時半には力尽きて寝てしまう毎日だった……。

 「マリー!あそぼー」

 すると、マリーは何やら本を読んでいた。

 「ウェイダー?」

 マリーは、異国の訛りのせいか、依然として、僕の苗字をうまくいえなかった。

 この数日間、マリーも僕も、本名で呼び合いたいと思い、練習をしたが、うまくはならなかった。

 だけれども、それがどことなく、ニックネームみたいに思えてうれしかったので、僕はマリーと、プゥラスカーに、これからもそう呼んでくれと頼んだ。

 「おはよう。これ、あげるよ。おさがりだけど……」

 ビーズがたくさん入った小瓶を渡した。

 「わぁ~!!きれい!」

 マリーは微笑んで……。

 「ローズヒップの魔法石みたいだね~」

 「??そ、そう??そうなんだね~」

 ちょっとよくわからない事を言われたが、僕は彼女がうれしそうなので、話を合わせておいた。

 「なにしてたの?」

 「プゥラスカーがお勉強しなさいって。魔女の文字の勉強」

 「へ~。そっかぁ。毎日大変だね~。よっと!」

 僕は、彼女の向かい側の椅子に座った。

 「なら僕も一緒に勉強するよ!」

 午前中はお互い勉強の時間だった。これも、もう僕とマリーにとっては、レギュラーな事だった。

 「何の勉強するの?マンドラゴラの調合?火のルーンの書き方??」

 「い、いや、絵日記と、作文」

 「日記?」

 「そうだよ。ここんとこ、マリーの話ばっかり書いてたからさ、茶髪の姉ちゃんが冷やかしてくるんだよ!僕に彼女ができたとかいうんだよ?」

 「……」

 「僕、最初の友達だって言ったのに、信じてくれなくてさ。あ、でも、そのビーズ、彼女にくれてやれって言われたから、黙ってもらってきちゃった!」

 「そうなんだ。ありがと。はい。お礼」

 それは、茶髪の姉ちゃんが付けている、切れると願いが叶う紐のようなものをくれた。

 「うわぁ!いいの?」

 「魔法のミサンガ。プゥラスカーに教えてもらって作ったんだ」

 「ありがとう!今すぐ装備するよ!」

 僕は彼女の作ってくれたミサンガを手にして、少しだけ大人の階段を上った!!……気がした。

 「なんというか、まりょくが255になった気がする」

 「な、何の数字なの?」

 「野球の兄ちゃんのおさがりでやったゲームだと、これが一番つよい数値らしいんだ。まぁ、ボスクリアできなくて、よくわかんないんだけど、そうらしいよ」

 「ふふ。そっかぁ。頼もしいね」

 「うん!なんでも言ってよ!友達の為なら、たとえ火の中、水の中!」

 「私だって、ウェイダーの為なら……なんだってできるもん!」

 「そっか!なら、僕ら二人がいれば、どんな敵だってやっつけられるね!」

 「うん!」

 

 *

 

 その日の帰り道……。

 「いや~!今日は良いものもらっちゃったな!」

 と、家に帰る所で……。

 「あ~太郎!」

 「茶髪の姉ちゃん!」

 ビーズをくれた茶髪の姉ちゃんが現れた!

 「あんた、こんなに遅くまで……五時のサイレンなったでしょ!おうちにかえりなさーい!!」

 「は、はーい!」

 と、僕が走り出そうとしたが……。

 「遅い遅い!」

 姉ちゃんは僕の左手をと掴んだ。

 「!」

 「ありゃ?ミサンガじゃん!」

 「!!」

 「はは~ん。彼女からもらったんだ~」

 「ち、違う!彼女じゃない!!友達だ!!」

 「はぁ~?だいぶラブラブじゃ~ん」

 「…………」

 僕は、冷やかされている気がして、どこか、苛立った。

 「こ、こんなのいらないし。かってにマリーがつけたんだ」

 「へ~なら、お姉ちゃんがもらっちゃお~かね~」

 「……別にいいよ」

 「じゃーん。ここにハサミがあるんだな~」

 「!!」

 「ちょきっとやっちゃおっか?屍はアタシが引き受けよう!」

 茶髪の姉ちゃんは、眉毛を整えるハサミをとりだした。

 「…………」

 僕は、思わず、言葉を失った。

 「ほらほら、本当はほし~んだろ~?いっちまいなよ~ユー!!彼女お手製のミサンガがよ~。大切だろ~??」

 「……………」

 「おい!あんまり太郎をいじめるなっての!」

 と、野球の兄ちゃんが現れて、茶髪の姉ちゃんに凸ピンした。

 「いったぁい!彼女を何だと思ってんのよ~!」

 「ったく。太郎、もう飯時だ。帰れ。馬鹿はほっとけ」

 兄ちゃんは、野球部で、体格が良くて、いつも優しかった。

 「今回の事は、全面的にお前が悪い」

 「へ~へ~そうでっか!ちょっとからかっただけじゃん!!」

 茶髪の姉ちゃんの……態度が気に食わなくて……。 

 「か、かせよ!」

 「え!?太郎!?」

 「な!おまえ!?」

 「いらない!」

 僕はミサンガを切り落としてしまった……。

 「!お前、友達が一生懸命作ってくれたんじゃないのかよ!!!!!!!!!」

 「!」

 僕は、その一言で血の気が引いた。

 「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

 僕は、泣きながらその場に全て持ち物をおとして、走り去ってしまった。

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