第4話 連想ゲームと夕間暮れの花火

 僕は、いつものように、マリーの家に遊びに行った。

 午前中は宿題をして、ごはんをご馳走になった後、三人で連想ゲームをすることにした。

 普通にやっても面白くないので、絵を描いて、声にする!というルールにした。

 特に、勝ち負けはないのだが、日本人と、魔女達の常識の差を知りたくなったのだ。

 「じゃぁ……赤いといったらな~んだ!」

 マリーはそういって微笑む。

 「……」

 「……」

 「……」

 数秒して……。

 「りんご!」

 と、僕は、林檎の絵を描いた!

 「レッドドラゴンの爪!」

 と、マリーは、可愛い火を噴く竜の爪に、赤丸を付けた絵を描いた。

 「人間の血!!!!!!!」

 と、何故か、プゥラスカーは、少女がヴァンパイアに血を舐めさせている(ヴァンパイアが跪いて血をすすっている)絵をかいた。

 ……。

 何故だろうか、なんか、その絵がリアルすぎて、笑えてしまった。

 「プゥラスカーその絵なんだよ~!ドラキュラってもっと、怖くなくちゃだめだよ~」

 「あらそうかしら?こういう吸血鬼もグッドだとおもうのだけれど……」

 「わたし、こういう吸血鬼しかしらないよ?」

 「ヴぇ?」

 なんだか、あまりにも意表をつかれすぎて、今まで発した事ないような『え?』を発音してしまった。

 「ウェイダー、世の中はひろいのよ!さぁて、次は私の番ね!」

 プゥラスカーは笑顔で……。

 「群青色のものなーんだ!!」

 「群青!?」

 「ぐんじょうってなに!?!?」

 「ふっふっふ~さ~て、なにかな~」

 「……マリー、絵の具、僕の絵の具とって!」

 「??」

 マリーは、僕の絵の具セットを取ってくれた。

 「びりじあん、れっど、みどり、あお、あか……」

 「あら?」

 「むらさき、ももいろ、あ、かわいい。さくらいろだぁ」

 「子供の発想と、学習能力はすごいわねぇ……」

 と、感心するプゥラスカーであった。

 「しろ、しるばー……どどめ、ちゃ、くさいろ、あい、こいいろ……恋色!?」

 我ながら……自分の絵の具の色のラインナップに驚く……。

 「あ!あったよ!ぐんじょう!!!」

 「ホント!ナイスだよマリー!!」

 だが、問題は、その群青が、藍色か、青か……なんとも言えない深い深い色…………。

 「……なんだこれ、何の色だよ……」

 どこかで見た事ある気がするが……。

 「あ~!私、わかったよ!!」

 「えぇ!?ほんと!?」

 「ふっふ~ん!絵をかこっと!」

 「……しまった、絵をかかないといけないのか……」

 僕は、数分考えた後……。

 「……!!」

 僕は、会心の微笑みを浮かべ、絵を描いた。

 数秒後……。

 「では、僕から!じゃーん!マリーの瞳の色!」

 と、マリーの似顔絵を描いた。

 「あら、うまいわね!」

 「すごーい!実物よりかわいいかも~」

 マリー……。

 それは、自分でいうと……ま、まぁ、いいか…………。

 「なんでウェイダーはそんなに絵が得意なの?」

 「……マリーが友達になってくれるまで、ずっと一人で絵を描いて遊んでたんだ…………」

 「そっかぁ……」

 「そ、それより、二人は何にしたの?」

 「私はね~夜空!」

 マリーはこの高原の夜を描いた。

 「スライム・ハードネステン!!!!!!!!!」

 プゥラスカーの書いたものは、異世界すぎてなんだかよくわからない丸い魔物(?)だった……。

 「マリー、この高原って、そんなにきれいなんだ!」

 「うん!お星様とお月様がきれいで、いろいろな国で夜をすごしたけれど、ここが一番あかるいの!」

 「へぇ~!!!あ!そうだ、今日花火持ってきたんだ!夜やるときれいだよ」

 「あらぁ……でも、暗くなる前に帰らないとだめよ……」

 「そうなの……」

 「……明るいうちにできないかな?」

 花火を知らないマリーはそう言った。

 「やってみよう!きっと楽しいから!!」

 「うん!」

 「それじゃぁ、僕のターン!!」

 僕はそういうと……。

 「金色のものなんだ~!!!!」

 僕は知っている。

 この国が黄金の国と呼ばれていた事を!!

 そして、茶髪の姉ちゃんが言っていた、人類最強の名言を!!

 その名言は……。

 『世の中、愛と友情と健康以外は、金で買える!』だ!!

 そのため、僕は、絵を描くのに困らなかった。

 「……」

 「……」

 「……」

 数秒後……。

 「いくよ!いい?プゥラスカー?マリー?」

 「いいわ」

 「うん!いいよ!!」

 「僕は!ザ・マネー!!!!!!」

 僕は、お金を書いた。

 「私は、ミミックだよ~」

 と、マリーの書いたミミックは、可愛らしいお人形さんが、宝箱を守る騎士役をするモンスターだった。

 「え?私、公共事業なんだけど……」

 と、高速道路と、謎の四角い顔のおっさんが描かれている絵だ……。

 「……公共事業ってなに?」

 「しらない……」

 「あらそう……なら、これならどうかしら?」

 何故か、せつがいほうりつりっぽう、がくれきなどかんけいない。

 というひらがなを書き添えてくれた。

 「どう?」

 「ごめん、分からない。異世界の英雄さんなの?マリーは知ってる?」

 「しらない……」

 「小学生にははやすぎたかしら……」

 と、プゥラスカーは微笑んでいた。

 「プゥラスカーはその人好きなの?」

 「ヤ―パン・ジパングの有名人だから、喜ぶかと思って……」

 「……」

 「……」

 僕は、多分、日本の偉人なんだと思って、マリーに教えてあげられなくてちょっと残念だった。

 こうして、連想ゲームを夕闇が来るまで何度もやったのだが……。

 マリーが連想するものは……。

 マンドラゴラの葉っぱ、セイレーン、白虎の毛皮、等々、異世界のモンスターだった。

 ちなみに、プゥラスカーは……藁人形、呪いをかけた歌姫ののどぼとけ、雪女、等々、おそろしい物ばかりだった。

 プゥラスカーはときどき、ヤ―パン・ジパングの物を描いてくれたのだが、僕にはよくわからない、ラジカセ、黒船、幕府とかだった。

 そうしているうちに、五時になってしまった。

 「ウェイダー……そろそろ帰らないといけないわ」

 「そっか……やっぱり、花火は明るいうちからやろうか」

 「はなび……どういうものなの?」

 「日本文化の3つの極み……その1つらしいよ」

 「あら?興味深いわね。教えてくれる?」

 「花火、歌、こたつ、だって」

 「……」

 「そ、そう……こたつ……ホントかしら……」

 中途半端に日本の知識があるプゥラスカーは首を傾げた。

 「僕のお父さんがよっぱらい名言集!といって、おしえてくれたよ!」

 「ウェイダー、花火やってみたい!」

 マリーはこたつには興味を示さなかった。

 「うん!これだよ!!」

 僕は、お父さんがかってくれた、スパーデラックス・夏花火!〈税込み2980円〉を取り出した。

 「プゥラスカーろうそくにチャッカマンで火をつけてよ!」

 「火なら、ルーンでいいわね」 

 プゥラスカーは、指をならして、火の玉を出した。

 「ほんと、魔法ってべんりだね……」

 「魔女だから、プゥラスカーは別だよ……」

 「さぁさぁ、やってみましょう?」

 僕たちは、明るいうちから花火をした。

 夕闇が迫っているとはいえ、夏の5時なんて……まだ、明るい。

 本当はもっと、暗いと綺麗にみえるけど……。

 プゥラスカーは、花火に驚いていて、マリーはとても楽しそうにしてくれたので、僕は花火を持ってきて良かったと心から思うのだった。

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