第3話 冷やし中華と統計学

 翌日も、マリーと遊ぼうと思い、僕はトンネルを抜けていった。

 毎日毎日、楽しそうに出てゆくので、お母さんに新しい友達ができた事を言うと、お母さんはその友達のおうちで食べるように……と、とある物を持たせてくれた。 

 僕がマリーの家に行くと、その日は、あいにくの雨だった。

 「うわぁ!すっごいふっているし!」

 土砂降りの雨に困っていると、マリーが家からでてきて、傘をさして僕の方へとあるいてきてくれた。

 「マリー!」

 「ウェイダー、傘をもってきたよ!」

 「ありがとう!」

 「うん!」

 僕とマリーは、家に入った。

 家に入ると、プゥラスカーが大釜で何かを煮込みながら、呪文を唱えていた。

 「プゥラスカー!おはよう!」

 「あらウェイダー早いのね!」

 「うん!教頭先生と二人でラジオ体操してきたあと、すぐきたからね!!」

 「ラジオ体操??」

 「あれ?知らない?ラジオ体操?」

 「……知らないわ」

 「私も……」

 「ヤ―パン・ジパングの何かのしきたり?儀式??」

 「ぎ、ぎしき!?」

 彼女等は、あんまりにも日本語をうまくしゃべるものだったので、ある程度常識があると思っていた。

 「さぁ、それよりも、午前中はお勉強よ!」

 「うん!」

 「は~い」

 「マリーは、今日は水のルーンのお勉強。ウェイダーは算数のドリルからね」

 「オッケー!」

 「私、頑張るね!」

 マリーがやる気を滾らせていると……。

 「ふふ、マリーったら、ウェイダーが来てから、やる気満々ね!」

 「そ、そういうことは、言わないでよ~!!!」

 顔を真っ赤にするマリーの横で、僕はうれしくて微笑んだ。

 なんか、友達の家に着ているのに、プゥラスカーは、お母さんみたいな人だった。

  

 *

  

 宿題を終えて、お昼ご飯を食べる事にした。

 僕は、お母さんに持たされた、野菜と冷やし中華をプゥラスカーに手渡した。

 「あら?これは、ヤ―パン・ジパングのお料理ね?」

 「なんで、日本生まれなのに、冷し中華っていうのかな?へんなの!」

 僕は、いまさらながら、素朴な疑問をこぼした。

 「でも、おいしそうだね!!」

 マリーはそういって微笑んでいた。

 「作ってみましょうか?まず、お湯ね……」

 プゥラスカーは、魔女なのに、料理だけは自分でやった。

 「プゥラスカーは、魔法つかわないの?」

 「料理は趣味なの!さぁ、二人とも手伝って!」

 「うん!」

 「はーい」

 マリーと僕は、プゥラスカーの指示に従って料理の用意を進めた。

 「お湯を沸かす……か。マリーは火のルーン。ウェイダーは、お鍋に水!」

 「がってんだい!」

 「は~い!」

 「マリー何事も、練習よ!!」

 マリーは火のルーンを書いて、かまどへ入れた。

 「ひよ!おこれ~!」

 マリーは呪文を唱えた。

 すると、火が燃え上がる!

 「いいわ。ありがとう二人とも」

 その間に、お母さんからもらった野菜をプゥラスカーは細切りにした。

 手際よく料理は進んでいき、水で冷やして、完成した。

 「随分簡単にできるのね」

 「どうかな?」

 「おいしいかな?」

 「さぁ、食べてみましょう?」

 盛り付けをした後は、プゥラスカーの魔法で食器が自在に動いて、机の上に料理が移動した。

 僕たちはそれを追いかけるようにして座った。

 「さぁ、いただきます」

 「いただきます!」

 「いただきます!」

 「!」

 「あら?おいしいわね!」

 「おいしー!!!ちょっとあまくて、すっぱいね!」

 「そ、そう?」

 僕は、甘いんだか、しょっぱいんだか……よくわからない味の……冷やし中華はあんまり好きじゃなかった。

 お母さんは、異常に好きだったけど、茶髪の姉ちゃんはそこそこ好きだって言っていた。

 「女のひとは……すきなのか?」

 僕の、統計によると、女性が大好きな食べ物は冷やし中華という結論に至った…………。

 その日の午後は、冷やし中華のお礼の為に、三人でクッキーを焼くことにした。

 僕は、日ごろの感謝をこめて、両親にクッキーを作る事にした。

 家に帰って、お父さんとお母さんにクッキーを渡すと、すごく二人は喜んでくれた!!!

 僕の夏休みは、マリーが現れてからというもの、本当に充実したものになった。

 僕は、改めて、マリーとプゥラスカーに感謝した。

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