第5話「先は見えない」
「右半分だけなら……。」
とおれは、アフロの右半分の毛を引き抜き始めた。
って何を言って、何をやってるんだ俺は。
こんなに痛いのに、体が勝手に動いてとまらない…。
「いでぇよぉ、いでっぇよぉ…」
きれいに右半分だけ、はげになりながら。
少女にアフロを渡した。
すこし、戸惑いながら少女はそれを受け取った。
「…あ、あのありがとうございました…。」
いうが早いか、彼女は踵を返してそのまま走って行ってしまった。
どうやら涙を流しながら、右半分のアフロを引きちぎる俺にすっかり引いてしまったようだ。
名前すら聞けなかった、もしかすると彼女とはお礼のイベントが発生したかもしれなかったのに…。
『おかあさん、あの人変ーー。』
『しっ、見るんじゃありません。』
親子連れを皮切りに何か良く無い物を見るようにして
町の人間、遠巻きに周囲を囲みだした。
『何よ…あれ。』
『よくわからないけど、振られたんじゃないかしら…。』
『そりゃ、そうよ、髪の毛がなんか爆発実験で失敗したみたいになってるし』
ひそひそ…。
どうやらスタートから、おれは惨めなことになった。
さて、どうしよう。
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