第七十三話 ②最後の暗号と俺の全力!

 パフェットの目は虚ろだ。しかし、確かに目を開いて俺の方を見ていた。しかも、パフェットは、アスタリスクと一体になっているためか苦しそうだ。


「パフェット! どうすれば良いんだ! パフェット!」

「ガーリックさんの看病だけは結構ですからっ、くれぐれもっ……!」

「……!」


 全くもって、けしからん奴だ。俺の親切な真心を無にするとは。


「……」


 腹が立ったので、俺はパフェットの開いた目を、サッと手で閉じた。


「開眼、ですっ! 目を見張ってますっ! ガーリックさんには、絶対に負けませんっ!」

「な、なんだと……!?」


 俺は、衝撃を受けて固まった。


 もしかすると、パフェットは意外とアスタリスクが平気なんじゃないか? 放っておけば、元気になるのでは?


「がくっ……!」

「……!?」


 しかし、俺の甘い考えをよそに、パフェットは再び目を閉じてしまった。


「嗚呼ァ! 俺は、どうすれば良いんだァ!」


 俺は、もどかしくて頭を掻きむしった。しかし、肝心の策が出てこない。


「アスタリスクをパフェットから取り出すにはどうすれば良いんだ!」


 俺は、うーんと、頭をひねって考える。


「クエッション……じゃなくて、クエッション様! クエッション様はその方法を知っているんですか!」


 低姿勢で頼む俺に、クエッションは気持ちよさそうに大笑いした。


「ああ、知っているとも! その低姿勢、素晴らしい! 良いだろう、教えてやろう!」


 クエッションは、暗号を一つ作り出して俺に寄越した。

 何の変哲もない、読点だ。


「この暗号だ」

「クエッション、この暗号をどうすれば良いんだ?」

「この暗号を解けば、パフェットは助かる。そういう暗号にした」

「じゃあ、早速!」


 俺は、手を打ち鳴らして、開いた。


「解読!」


 呪文を唱えると、暗号は震える。しかし、俺の体に衝撃が走る。


「うああああああああああああああ!?」

「……でも、ガーリックは耐えられるかな?」

「あああああああああああああああ!」


 でも、この暗号さえ解読できれば、パフェットは助かるはずだ。閉じようとする自分の瞼を、無理やり押し開ける。


「あああああああああああああああ……!」


 俺は、暗号を解読させる力を注ぎ続ける。暗号は、俺にずっと衝撃が送られてくる。俺の意識が遠退いてくる。


「あああああああああああ……! ……――」


 俺は、地面に崩れ落ちる。衝撃は全く感じず、地面はケーキのスポンジのように、ふわふわしていた。


 ぱっぱらっぱっぱぱーと、どこからともなく効果音が鳴った。


『暗号が解読されました! おめでとうございます!』


 アナウンスと一緒に、空に文字が並んだ。


【答え:パフェットさんからアスタリスクを取り出します!】


「やった……!」


 暗号の答えがにじんで、視界がぼんやりしてくる。

 近寄ってきたクエッションの顔が、はっきりとしない。


「よく頑張ったな、ガーリック」


 全力を尽くしたせいか、全身から力が抜けていく。


「でも、ガーリックは終わった。残念だったな」


 俺は、クエッションの笑い声を聞きながら目を閉じた。

 そのまま、俺の意識は暗転した。

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