第六十六話 アヒージョとアスタリスク!

 翌日は、アヒージョの任命式だった。しかし、天候は最悪で、雨が降り雷が鳴っていた。第三区域の合印邸で着飾ったアヒージョは窓の外を睨み付けている。


「空の天気すら私を祝福していないんですの?」


 アヒージョは、溜息を付いている。

 しかし、アヒージョは気を取り直したようだ。


「でも、私の勝利は揺るぎませんわ! 誰が何と言おうとも!」


 アヒージョは大笑いして、両手の人差し指と親指で枠を作っている。確かに、アスタリスクが枠の中で光っていた。


 しかし、アヒージョに異変が起きた。


「かはっ!? げほっ!? ごふっ……!」


 口元を押さえたアヒージョの両手に、何かがしたたり落ちている。

 アヒージョは震える両手を見ていた。


「なんで、血が……!?」

「あはははは」


 笑い声がして、アヒージョは、反射的に振り返っていた。

 いつの間にかドアが開いて、トリオン様がそこで笑っていた。

 トリオン様が、明けたドアをノックしている。


「と、トリオン様……? どういうことですの……?」


 アヒージョは、てっきりトリオン様が味方だと思っていたに違いない。

 アヒージョは、見開いた眼を揺らしている。


「アスタリスクは三ノ選に勝利してから任命式で受け取るものだ。アスタリスクに選ばれない器だったから、苦しむことになったのかもしれないな?」


 アヒージョは、悲鳴を上げた。


「そんな、そんなことって……!」


 アヒージョは、ふらりと一回転したかと思うとその場に倒れた。

 トリオン様の靴音がその場から去って行く。

 その翌日、アヒージョが任命式の前に倒れたことが、新聞の一面にでかでかと載ったのだった。

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