第六十五話 三ノ選、決着! 勝利の余韻に浸りたい!?

『それでは、アヒージョさんを最終的な適格者とします』


 決定人は、トリオン様の一声でアヒージョが最終的な勝利者となった。戻ってきた観客が、拍手喝采をアヒージョに送った。アヒージョをはやし立てる口笛もアヒージョを祝福する声も飛び交った。第三区域の合印はアヒージョだ。それは、揺らぐことがないほど、誰もが納得する勝利だった。


「やりましたわ! ガーリック様、私、やりましたわ!」


 アヒージョは高鳴る胸を押さえきれないようだ。手を振りながら、あちらこちらからの声援を一身に受けている。


「すげぇな、アヒージョ」

「そう、ですね……っ」


 ガーリックも、パフェットさえも、文句も出ないほどの勝利だった。

 ガーリックは、あっけらかんと「おめでとう」と言った。

 パフェットは、辛そうだったが「おめでとうですっ」と言った。

 彼らは拍手まで送った。


「アヒージョ、任命式があるから、後で」

「はい、トリオン様!」


 トリオン様は、やけにアヒージョに優し気だ。アヒージョの顔は、合印の座を手に入れた喜びで上気している。


「アヒージョ! あんた、なにかやらかしたでしょ!」


 フォイユは、アヒージョがトリオン様と仲が良い事を知り、ひどく憤慨して怒声を浴びせていた。


「なんのことですの?」


 しかし、アヒージョは、あくまでも笑顔だった。


「二ノ選のあんたの実力じゃ、三ノ選であんな力出せるわけがない! なにかやらかしたに違いないわ! そうよ、トリオン様があんたに――!」


それでも、フォイユが罵詈雑言を浴びせたので、アヒージョは笑顔で彼女の耳にささやいた。


「あなたも同じ穴の狢ですわ?」


 フォイユの顔が一気に青ざめた。そして、フォイユは恐怖して震えた。


「うわああああああああああああああああ!」


 すると、フォイユは泣きわめいて走り去った。アヒージョの口元には冷笑が浮かんでいた。しかし、アヒージョは、もう少し勝利の余韻に浸りたいようだ。


「ガーリック様!」


 アヒージョが振り返ると、ガーリックの姿はなかった。


「あれ? ガーリック様はどこですの?」


 アヒージョは、慌てた様子でガーリックの姿を探している。


「パフェット、元気出せよ! 美味いもんおごってやるよ!」

「本当ですかっ! 美味しいお菓子が食べたいですっ!」

「よし、行こう!」

「はい、ですっ!」


 遠くにいた、パフェットとガーリックは負けたのに幸せそうだ。

 アヒージョはそれを見たまま、微動だにしない。

 どんどん遠くに行くのに、パフェットとガーリックは幸せそうだ。


「なんで! いつも――!」


 アヒージョは、奥歯を噛み締めている。

 アヒージョは、両手をぎゅっと握りしめている。

 空模様が怪しくなり、ついに雨が降り出した。

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