第五十五話 合印決定選、二ノ選! 俺の窮地!

『おめでとうございます! 暗号が解読されました!』

【答え:フォイユさんは、合計、一個解読されました!】


 暗号の答えが上空に表示される。

 どうやら、暗号の答えが、解読された数のカウントになっているらしい。

 フォイユは、暗号を早くも解読している。どうやら、記号一つが一個の暗号らしい。


「どれにするかな……?」


 暗号であふれる庭を俺は歩いていく。顎を触りながら、暗号を物色していた俺だったが、一つに狙いを定める。『?』の暗号だ。


「よーし! やってやる! まず、この『?』の暗号を解読する!」


 気合いっぱいの俺は、手を叩き合わせて開いた。


「解読!」


 暗号の記号が明滅する。『?』の暗号は身をくねっている。


「よーし! 良い感じだ!」


 余裕ぶっていた俺だったが、異変に気付いた。


「な、なんだ!? この腕輪!?」


 おかしなことに、俺の左腕にはめていた腕輪がぼわ~っと光っている。

 しかも、俺の解読の力が削り取られていくような感覚に襲われる。

 俺の力が吸い取られる感覚に襲われるたびに、腕輪がまばゆい光を放っている。


「この腕輪が、俺の解読の力を吸い取っているのか!?」


 俺は、すぐに腕輪を取ろうとした。

 しかし、腕輪は腕に吸い付くようにぴったりとはまっている。


「うぐっ!? この腕輪、取れないぞ!?」


 隣で、パフェットが快調で解読している。

 ぱっぱらっぱっぱぱやー。という効果音が流れた。


『おめでとうございます! 暗号が解読されました!』

【答え:パフェットさんは、合計、十個解読されました!】


 暗号の答えが、上空に表示される。

 横目で見ながら腕輪と格闘している俺に、パフェットはジト目を向けた。


「ガーリックさん、やっちゃったみたいですねっ……」

「ああっ……!」


 俺は、頭を両手で押さえた。

 ぱっぱらっぱっぱぱやー。という効果音が流れた。


『おめでとうございます! 暗号が解読されました!』

【答え:アヒージョさんは、合計、五個解読されました!】


 アヒージョも快勝している。

 アヒージョは、俺ににこにこしている。


「ガーリックさん、その腕輪は罠のようですわね……」

「ああああっ……!」


 もはや俺は、頭を掻きむしるしかない。

 またしても、ぱっぱらっぱっぱぱやー。という効果音が流れた。


『おめでとうございます! 暗号が解読されました!』

【答え:フォイユさんは、合計、十一個解読されました!】


 フォイユもすこぶる良い調子らしい。


「ハーッハハハハハハハハハハ! あたしがあげた腕輪はどうかしらァ!」


 俺は、ハッとなった。


「フォイユが俺にこの罠の腕輪を!?」


 俺は、奥歯をかみしめたが、途端に奥歯が緩む。


「ど、どうしたですかっ? ガーリックさんっ?」


 つきものが取れたような俺に、パフェットが不思議そうに尋ねる。


「そ、そうか! 世界がうらやむほどの超絶美形なガーリックさんというのが、フォイユの本音らしいな……!」

「ですっ!? 何を勘違いしているですかっ!?」


 俺は、納得して頷いた。


「決定人さん!」


 俺は、決定人の一人を呼んだ。決定人は慌てて、こちらにやってくる。


「えーと……。どうしましたか、ガーリックさん?」

「俺の負けです!!」


 俺は、ペコリと九十度の綺麗なお辞儀をした。


「「なっ!?」」


 パフェットとアヒージョが唖然としている。


「な、何言ってるですかっ!? ガーリックさん、どうしちゃったんですかっ!?」

「俺は、俺の完全無敵の美貌に負けた!! 完敗だ!! 悔いはない!!」


 フォイユが、ニヤ~ッと笑っている。


「フォイユさんが悪いんですっ! 失格は待つですっ!」

「いや! 俺の美貌を褒めた奴に悪い奴はいないと、俺は思っている!」

「カァ! ちょっと黙ってろやですっ! ガーリックさんは、変な腕輪を――!」


 パフェットが、決定人に必死で事情を説明している。


「わ、分かりました、まだ失格にはしません。ガーリックさん、こちらへどうぞ!」

「え!?」


 俺は、夢から覚めたようにキョドっていた。


「こちらへどうぞ!! 腕輪を外しますので!!」

「は、はぁ……ありがとうございます……?」

「早く!! トロトロしない!!」

「は、はいっ!」


 それで、俺は急遽腕輪を外すために、合印邸の中に連れて行かれたのだった。

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