第五十六話 明かされる俺の真実!? 謎は全て解けた……のか!?
決定人に連れられて、第三区域の合印邸の中に再び入って行った。一つの大きな部屋に通されて、椅子に座らされる。しかし、決定人は慌ただしく部屋を出て行ってしまった。
「やっぱり、もう失格だろうな」
俺は、開いた窓を見ながら考え事をしている。
外の合印決定選の賑やかな雑音が他人事のように聞こえる。このまま、誰かが二ノ選適格になるのを待つしかないのか。
「嗚呼、俺は椅子の硬さに耐えている……!」
すると、ドアが開いた。ハッと我に返って、ドアの方を振り向く。
「あの~! もう良いで――……えっ!?」
そこには見た事のある男が居た。
その男が、無表情でこちらに歩いて来る。
「確か、ルーウェルって言ったっけ? 何で、あんたがこんな所に居るんだ?」
すると、ルーウェルがフッと笑った。少し斜に構えて俺を見ている。
「……相変わらずですね、ガーリック。相変わらず、まんまと罠にかかっていますね」
俺はムッとして、ルーウェルを半眼で見る。
「何だよ。文句を言いに来たのか?」
「私は、ガーリックを助けて差し上げようと思っているのです。腕輪が取れなくなったら、乳液をつけて滑らせて外せば良いのですよ」
本当に、俺を助けてくれるらしい。ルーウェルは乳液の入った瓶を開けて、手に付ける。ビンをキャビネットの上に置き、俺の左腕に付けた。そして、俺の腕輪を外そうとしている。俺は、顔をしかめた。
「……相変わらずって何だよ? 前もそう言ってたな? 俺のことを知ってるのか?」
「やはり、ガーリックはこの世界に転移して来たせいで、以前の記憶がなくなったのでしょうね」
「俺が転移……!? えっ、どういうことだ? 転移? 転生したの間違いじゃないのか? 一体、ルーウェルは俺の何を知っているんだ?」
「ガーリック。お前はこの世界の住人です。そして、異世界転移させられました。異世界転移させたのは、第三区域の前合印のクエッションです」
「クエッションが、俺を異世界転移させたのか!? えっ、でもクエッションは亡くなったんじゃなかったか? だから、合印決定選が開催されたんじゃ?」
「そうです。その、クエッションはもう亡くなりました。だから合印決定選が行われたのです」
「だよなぁ……!」
クエッションが亡くなった原因は分からない。俺たちは、確かに遁走していくクエッションを目撃していた。俺たちが手を下したわけじゃない。
「生前のクエッションは、七年事に行われる合印決定選で、ずっと合印の座を守ってきました。しかし、ガーリック、あなたが現れたのです」
「えっ、俺?」
「記憶の無くなる前のガーリックです」
そうか。異世界転移する前の俺か。この世界から異世界転移した後、また転移してこの世界に戻ってきたのか、俺は。記憶をどこかに置いて、戻ってきたのか、俺は。
「一体、俺が何をしたんだ? 恨みを買うようなことをしたのか?」
「ガーリックは、超人的な解読使いでした。それが、クエッションの合印の座を危うくしたようです。それで、ガーリックは異世界転移させられたらしいですね」
俺は、唖然となった。
「クエッションの合印の座が、俺のせいで危うくなったから……? えっ!?」
俺は、目を激しく瞬きする。
「そ、それだけ!? それだけで、俺は異世界転移させられたのか!?」
「ええ。そうらしいですね? 取れましたよ、腕輪が」
「えっ! あっ! ありがとうございます!」
俺は、ルーウェルに頭を下げる。
「では、ガーリック。また、そのうちに」
誰かがやってきて、乳液のビンを仕舞っている。そして、ルーウェル様の後を追って行く。彼は、振り返ってフッと笑った。それは、トリオン様だった。
「えっ? なんで、トリオン様はルーウェルに付き添っているんだ?」
どういうわけか知らないが、トリオン様が助けてくれた……?
「なんでトリオン様が……? えっ? あっ!」
再び俺は、我に返る。
「考えている場合じゃない! ヤバいぞ! 二ノ選が終わってしまう!」
俺は、急いで二ノ選の会場に走って行った。
しかし、何故か、気分は爽快だった。
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